5.気が付いたら·····二人きり?
文字数 1,165文字
私は十分に補充された売り場を見て
「よし!ばっちり!!」
と独り言を言って空元気を出した。
広い売り場で一人だと気付いたら急に心細くなった。
潰した段ボールをまとめた箱をズルズルとストック置き場へと移動させる。
一人だと思うと、段ボールがやけに重く感じる。すると
「やっと終わったか?」
引き摺ってた段ボールが軽くなり、森野さんが段ボールを片付けてくれている。
「え?森野さん?何でいるんですか?」
驚いて尋ねると
「『女の子を一人にしたら危ないでしょう!』って杉野チーフに言われたからな」
杉野チーフの口調をまねて、森野さんが答えた。
「すみません…」
待たせてたんだ…って落ち込んで謝ると
「何で謝るんだよ。俺も明日メーカーに流す発注書を書いてたから、別にお前を待ってた訳じゃないし」
そう言って小さく微笑んだ。
本館には既に人は居なく、森野さんはセコムを作動して鍵を掛けている。
「じゃあ、柊は着替えて来て」
鍵を閉めている状態で言われ、私は「分かりました」と返事をして着替えに更衣室へと向かう。
事務所の電気も消えており、更衣室で着替えながらまさに二人きりな事に気付いてしまった。
着替えを終えて下に降りると、森野さんは外の喫煙所の椅子に座って空を見上げていた。
「すみません」と声を掛けようと口を開きかけた瞬間、微かな声が聞こえて来る。
それが声では無く、歌だと気付くのに時間はそんなにかからなかった。
呟くような…囁くような…本当に小さな小さな声。
それは懐かしくもあり、私の心を捉えた歌声だった。
ただ違うのは、今聞こえる歌声はまるで悲鳴を上げているかのような悲痛な歌声だった。
誰に歌う訳でもなく、ただ空くうへと消えていく歌声。
月夜に照らされた森野さんの後ろ姿を、私は黙って見つめる事しか出来ずに居た。
どの位、森野さんの後姿を見つめて居たのだろうか?
森野さんの唄はすぐに消え、夜空を黙って見上げている。声を掛けるタイミングを失って困っていると
「あれ?いつの間に居たんだ?」
森野さんが私に気付いて驚いた顔をした。
「い…今です」
きっと歌を聴かれたと知られたくないだろうと思い、とっさに嘘を吐く。
「じゃあ、帰るか」
森野さんはそう呟くと、ポケットからセコムのカードキーを出して事務所を施錠した。
私は心の中で、少し前を歩く森野さんの背中に
(やっぱり…カケルさんなんですか?それとも…似てるだけなんですか?)
そう問いかけていた。
バクバクと鳴り始めた心臓。
やけに遠く感じる森野さんとの距離。
もし…森野さんがカケルさんだったら……
私の気持ちは変わるのだろうか?
失望する?それとも「やっぱり!」って納得する?
それとも、他人のそら似?
何も聞けないまま、私は森野さんの背中をただ黙って見つめて居た。
「よし!ばっちり!!」
と独り言を言って空元気を出した。
広い売り場で一人だと気付いたら急に心細くなった。
潰した段ボールをまとめた箱をズルズルとストック置き場へと移動させる。
一人だと思うと、段ボールがやけに重く感じる。すると
「やっと終わったか?」
引き摺ってた段ボールが軽くなり、森野さんが段ボールを片付けてくれている。
「え?森野さん?何でいるんですか?」
驚いて尋ねると
「『女の子を一人にしたら危ないでしょう!』って杉野チーフに言われたからな」
杉野チーフの口調をまねて、森野さんが答えた。
「すみません…」
待たせてたんだ…って落ち込んで謝ると
「何で謝るんだよ。俺も明日メーカーに流す発注書を書いてたから、別にお前を待ってた訳じゃないし」
そう言って小さく微笑んだ。
本館には既に人は居なく、森野さんはセコムを作動して鍵を掛けている。
「じゃあ、柊は着替えて来て」
鍵を閉めている状態で言われ、私は「分かりました」と返事をして着替えに更衣室へと向かう。
事務所の電気も消えており、更衣室で着替えながらまさに二人きりな事に気付いてしまった。
着替えを終えて下に降りると、森野さんは外の喫煙所の椅子に座って空を見上げていた。
「すみません」と声を掛けようと口を開きかけた瞬間、微かな声が聞こえて来る。
それが声では無く、歌だと気付くのに時間はそんなにかからなかった。
呟くような…囁くような…本当に小さな小さな声。
それは懐かしくもあり、私の心を捉えた歌声だった。
ただ違うのは、今聞こえる歌声はまるで悲鳴を上げているかのような悲痛な歌声だった。
誰に歌う訳でもなく、ただ空くうへと消えていく歌声。
月夜に照らされた森野さんの後ろ姿を、私は黙って見つめる事しか出来ずに居た。
どの位、森野さんの後姿を見つめて居たのだろうか?
森野さんの唄はすぐに消え、夜空を黙って見上げている。声を掛けるタイミングを失って困っていると
「あれ?いつの間に居たんだ?」
森野さんが私に気付いて驚いた顔をした。
「い…今です」
きっと歌を聴かれたと知られたくないだろうと思い、とっさに嘘を吐く。
「じゃあ、帰るか」
森野さんはそう呟くと、ポケットからセコムのカードキーを出して事務所を施錠した。
私は心の中で、少し前を歩く森野さんの背中に
(やっぱり…カケルさんなんですか?それとも…似てるだけなんですか?)
そう問いかけていた。
バクバクと鳴り始めた心臓。
やけに遠く感じる森野さんとの距離。
もし…森野さんがカケルさんだったら……
私の気持ちは変わるのだろうか?
失望する?それとも「やっぱり!」って納得する?
それとも、他人のそら似?
何も聞けないまま、私は森野さんの背中をただ黙って見つめて居た。