あつい

腹が立つとじんましんに襲われます
興奮するとじんましんに襲われます
咳き込むとじんましんに襲われます
耳を塞ぐとじんましんに襲われます
涙を流すとじんましんに襲われます
快く歌うとじんましんに襲われます
よく笑うとじんましんに襲われます
高温を飲むとじんましんに襲われます
風邪を引くとじんましんに襲われます
大音を聴くとじんましんに襲われます
帽子を被るとじんましんに襲われます
日を浴びるとじんましんに襲われます
力を込めるとじんましんに襲われます
掻きむしるとじんましんに襲われます
料理をするとじんましんに襲われます
入浴をするとじんましんに襲われます
運動をするとじんましんに襲われます
厚着をするとじんましんに襲われます
演奏をするとじんましんに襲われます
自傷をするとじんましんに襲われます
人混みに酔うとじんましんに襲われます
首をよく振るとじんましんに襲われます
イライラするとじんましんに襲われます
洗い物をするとじんましんに襲われます
温風に当たるとじんましんに襲われます
いい気になるとじんましんに襲われます
苦痛を感じるとじんましんに襲われます
体温が上がるとじんましんに襲われます

汗をかけない
その代わりとしてこの病
ここぞとばかりにやってきて
ところ構わず
じわりじわりと乗り出して
むず痒さからたちまち
何十本もの熱した針を
しきりに突き立てられるような痛みへと変わり
広がる
一度始まれば
身が冷えるまで終わることはない
頭ではよく分かっていても
掻きむしらずにはいられない
そうしてかえって事態の悪化を促す
毎日毎日その繰り返し
皮膚はボロボロ
胸元は赤く爛れてしまった
蝕まれるものは
精神
見てくれと
この身だけではけして留まらない
冷暖房を使う権利もなく
夏場は何も手につかない
寒冷へ重ね着で対抗するように
温熱を凌ぐ手段などここには備わっていない
おかげで必要以上の外出はもちろん
欠かせないそれすらできない
いつまで経っても消えてくれない
薬もない
せめて母国へ帰らせろ

冷ややかな目で見られたって
人の体温は下がらない
味わえとは言わない
どうか知って
理解して