episode 20 epilogue [終]

文字数 948文字

 私が宇宙人の話を誰かにしたのは、二年と半分の泣いたり笑ったりが過ぎて大学生になったときだった。開学以来我が町の発展に寄り添ってきた総合大学、私は入学して一週間であの人を発見していた。
 二年生の福原禎士は背がずいぶん高くなっており、声も落ち着き、逆にそれなりの女っぽさは手にできた私に目を丸くするのだった。
「里奈……、心のどこかでは入ってきたりしてって思ってたけど、本当になるなんて!」
 迷惑な〝いたずら電話〟以降一度も忘れられなかった彼との再会、私も喜びが爆発したのはいうまでもない。
 ただしかたなかったとはいえ、私は高校生の禎士くんにひどいことを言った。最悪なのが「おまえがろくな育ちしてねえから彼女が女たぶらかす趣味の男に行っちまうんだろう」で、当時は知らなかったけど彼は母子家庭だったのだ。けしてそこをやゆしてはいないし、母子家庭だからろくな育ちをしないわけでもない。そもそもあの〝いたずら電話〟が自分だなんて隠しておけばいいこと。しかしうそが苦手な障碍の影響か、私はどうしても彼に知らないふりはできなかった。
「禎士くんごめん、うち、前にとてもひどいことした」
 私の打ち明け話に禎士くんは最初不安げな表情を見せたけど、来海里奈を覚えていてくれた彼はあの雪町も忘れなかったし、普通ならまず信じない気体宇宙人についても蒼空を見上げて理解してくれた。
「他の町にも夏の雪が増えて変だとは思ったけど、俺もしょっちゅう別にいいじゃんって気持ちになったんだよな。それでも疑念は消えなくて、原因がそんなことだとは……」
 もちろん〝いたずら電話〟のこともしっかり覚えており、
「あの電話は友達と笑うネタにしてさ、楽しませてもらったよ。俺が疑った奴とも何もなかったし全然気にしないでいいよ。でも里奈、正直に話してくれてありがとうな」
 禎士くんの優しい笑顔に私は改めて恋をして、過去から救われた──といったらおおげさだよね。
 最後に二人で眺める蒼空のこと。
 私の素養の調節により本来の水準に落ち着いて居座り続けた真っ白な星のかけらは、この早春にやんで消えてしまった。映画のDVDもあの日に雪の精と同時に消失してそのまま。だから私と禎士くんがどんなふうに接してももう大丈夫、なのである!

          Fin.
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登場人物紹介

来海 里奈 きまち りな


主人公。高校1年生の少女。自分の旅行の経験を勝手に映画に使われる。

福原 禎士 ふくはら ただし


高校2年生の少年。里奈が雪町で出会った。

桜井 花 さくらい はな


高校1年生の少女。里奈の同級生で友達。

雪の精 ゆきのせい


里奈が雪町で出会った。何者?

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