第1話

文字数 631文字

にんげんの足はくさいの。他の動物は足なんかくさくならないのに、にんげんだけが、なぜかくさいの。


お姉ちゃんが子供のころ、お兄ちゃんと、おじちゃん、ばばちゃんと一緒に温泉に家族旅行に行ったの。

お姉ちゃんはお兄ちゃんと一緒の部屋で寝たの。

そこで、お兄ちゃんはベッドに寝ながら、お姉ちゃんに背中を向けて、自分の足のにおいをかいでいたの。

お兄ちゃんは

「足のにおいって、くさいけどおもしろいなあ」

と思っていたけど、その時はまだ、お兄ちゃんにも恥じらいというのがあって、お姉ちゃんにばれないように、こっそり嗅いでいたの。

でも、お姉ちゃんはすぐにわかって、

「おまえ、なにやってんのよ~」

ってからかったら、お兄ちゃんは

「いいべや」

って言って、ごまかしながら笑っていたの。

実はお姉ちゃんは、ずっと前からお兄ちゃんが足のにおいをかいでいることを知っていたけど、だまっていたの。

それは、お姉ちゃんも自分の足のにおいをかいでいたからなの。


お前だって人のこと言えねえんじゃねえか?

だいたいよ、お前、お兄ちゃんが寝てるとき足のにおいかぎに行ってたべや。

あれ、なんなのよ?

いや、それは、その、確認をしに。
それは、本当はお兄ちゃんの足のにおいに興味があるってことじゃねえのか?

大体、お前、お兄ちゃんの靴下が脱ぎ捨ててあったら、近づいて行ってくんくんしてるべや。

おまえ、本当はお兄ちゃんのこと好きなんじゃねえのか?

今度の温泉旅行は、おまえとお兄ちゃんの二人きりだからな。

男同士、積もる話もあっだろ?

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登場人物紹介

アケミお姉さんが30年間かわいがっているぬいぐるみのネコ。泣き虫で人の顔色をうかがう臆病者のくせに、下手に知恵があり、簡単な言葉を喋ったり日記を書くことができる。人間を子馬鹿にしつつも、かまってほしい時には甘えて布団に入ってくる。泣きのチカラで周囲を振動させ、場合によっては果てしない破壊力を持つ。

不用意なことをペラペラしゃべるため、お姉ちゃんとお兄ちゃんに締めあげられ、他のぬいぐるみにもいじられる毎日。

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