訳のわからない歌を好きになった理由を考える

文字数 1,338文字

お肉ばっか食べてる お肉好きの人
お肉ばっか食べてて 野菜足りてない
野菜ばっか食べてる 野菜好きの人
野菜ばっか食べてて お肉足りてない
バランス バランス バランスが大切
人生は長いよ 長いはフランスパン

心にささる歌や本は、それに触れるタイミングで異なる。
先月までは大好きだったはずの本が、読み返すと急にそうでもなくなったり、13歳では訳わからなかった詩に、大人になって触れたときに、ふと目頭が熱くなってしまったり。

先日聴いていたラジオ番組「たまむすび」から流れてきた楽曲
「長いはフランスパン」(歌:D.W.ニコルズ、作詞:わたなべだいすけ、作曲:わたなべだいすけ)に耳と心を奪われた20代・都内勤務女性。それは私だ。なぜ、こんなわけのわからない不思議な歌に、しかもちょっと前のCMソングか何かに、今こんなにも揺さぶられてしまったのか、考えた。

 いたるに、このところの世の中、YouTuberやインスタ、知らない世界のすごい人、という、何か一つへ特化した方々が活躍なさっているし企業体としても「専門職」を積極採用、「総合職」からの見直し、みたいなことまで起きている。いわゆる「総合職」側の味方に感じられたのだ。
 
 学歴や出自といった枠組みだけで評価せず、オンリーワンな才能を評価する。それは素晴らしいことに違いない。しかし最近は度が過ぎて、「好き」や「個」を極めていることが至高(いちばん幸せ、優秀、成功?)、になっている空気すらあって、何一つを極めていない「平凡」な身であるワタクシは、その平凡度に負い目を感じるようになっていた。だから、「バランスが大切」、という歌詞を、勝手に「一つに秀でるばかりが良いわけではないよ」と読み替え、さらには「いろいろつまみ食い出来てるあなただって素敵だよ」という過大解釈をし、勝手に救われたのだった。

好きなことばかりやっているわけではなく、嫌いなことばかりをやらされているわけでもないのだけど、不安定な残業時間やコロナ禍でも出勤せざるを得ない押印のための出社、夜遅く帰ってからの夕飯づくりが必要な日、たまった洗濯場を見ると、いつまで続くのだこのサラリーマン生活は・・・(いいえ「生活は続く」のよ)、と心にジェーンスーを出すしかなくなるのだけど、やっぱり将来の安心とか社会保障のこととか、ここまで学校に行かせてくれた親のこととか、いろいろ考えて、そのバランスの上にこの生活がある。

親にも心配をかけているわけではないつもり。
ただの企業、総合職として、誰かの生活のうちの1ミリくらいも支えているはずだ。
「それなりの」人生とかいうと夢がないが「私なりのバランス感覚」ととらえると少し前向きになる。
淡々とした総合職生活、それは週5日のお仕事と、週2日の好きなことをして好きなものを食べられるお休みがあること。
これから衝撃的なモノコトヒトに、出会うかもしれないので、一生これをするかはわからない。わからないが、いまはこれはこれで、自分としては健康で、日々問題なく暮らせていて、幸せとか納得度とかのバランスが取れているんだろう。崩れてきたら、変わっていけばいい。これからも目指していくのはこの「調和」なのだ。



と、限界OLは、今日もこうして自分を納得させている。
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