第78話  染谷龍一視点。染谷家集合 2

エピソード文字数 3,371文字

 全員がマグマグを食べ終わっても、染谷家は帰らず、暫くダベっていた。


 俺もそろそろ頭が痛いが、久しぶりで四人で出かけたのもあり、ファーストフード店でやたら盛り上がってしまう。

おい。そういえば……お前の彼女はどんな顔なんだ? 見せろよ
あっ私も見たい

 翔兄のニヤけ顔が止まらん。

 これには桜さんも興味津々だった。

これっす。マジ女神です

 俺は誇らしげに写メを二人に見せていた。


 ん? いつゲットしたのかって? 

 何気に龍子で情報収集をだな……


 おっと。これはあくまで今後の参考の為だ。

やべぇなおい! マジでとんでもない女神じゃねぇか。

横にいるお前と比べると、月とゾウリムシだな。

どんな例えなんだよ。

などと突っ込むと鉄拳が飛んでくるからな。何も言わないが吉

あら……すごい綺麗じゃない! こんな可愛い子なら一目惚れも納得するわね
だろ? 翔兄ぃ 桜さん。だから楓蓮さんは女神だっつーの! ヴァルハラから態々この世界に舞い降りたんだって!
うんうん。虎の言う通りだ。彼女はマジ女神である。
しかも! 彼女はメイド姿だけにあらず。魅力更に倍! ドン!

 俺はもう一枚の写メを見せていた。 そう! 千年に一度見れるか見れないか。

 それほど貴重な一枚。奇跡が呼んだこの美しさ。

 それも……楓蓮さんチャイナバージョンだ!
うぉっ! マジかよお前……

 兄貴も目ん玉飛び出してやがる。

 そりゃそうさ。俺も見た瞬間、目玉が十センチほど飛び出してたからな。



 どうやってゲットしたのかというと、

 あの姿を撮った白竹さんに、土下座して頂いたに決まってるだろ?


 ふははっ。その辺は抜かりなく。

 色々とお宝は回収させてもらってます。

ってかお前。こんな子落とすつもりかよ。

遥か高みの存在すぎるだろ。

分かってますよ。

だから俺も、もっと彼女に相応しい人間にならねーと

 そんな事を話しているうちに、桜さんが俺のスマホの写真を見まくってる。
龍ちゃん。これなに? オムライス?
で? 何だよこれ? ふはははっ。きったねー

龍一。これ何だよ?

お前が書いたオムライスか? 下手糞すぎんだろ! どっかのアラビア文字かよっ!

 その瞬間、俺の身体に修羅が乗り移り、翔兄や虎に殴りかかっていた。
それは楓蓮さんの愛情オムライス一号だっつーの!

 楓蓮さんのオムライス一号。 俺はそれを見るたびに……

 あなたへの思いは高まってゆくのだ。


 あぁ可愛い。


 俺はな、この「好」を必死に書いたであろう、楓蓮さんのテンパった顔を想像するだけで、頭がおかしくなっちまう。

てめぇ……やんのかおい!
これを笑うヤツは、いくら翔兄ぃでも許せねぇな!

 こればかりはいくら兄貴でも許せねぇ!


 愛する者への侮辱は、例えラスボスでも口に出してはいけない。

 持てる力の全てを解放しようとしたその時――

やめましょうね。二人とも

 そう淡々と告げるのは笑顔の桜さんだった。

 と、同時に俺と翔兄ぃの動きがピタっと止まる。

こんな場所で暴れっちょったら、どーなるか分かっとるでしょ?

 桜さんの口調が変化すると、俺達に天罰が落ちる。


 それはもう翔兄ぃと桜さんが付き合う前からの伝説であり、染谷家の常識であった。

す、すまん
すみませんでしたぁ!

 うんうんと頷く桜さんは笑顔のまま立ち上がると「そろそろ帰りましょう」と翔兄ぃの手を取った。



 普段は大人しくて、とてもお嬢様なのだが……キレると俺達でも手の付けられない武力を有しており……染谷家三兄弟以上の破壊力があるのだ。


 

 うん。染谷家のラスボスは翔兄ぃではなく、ぶっちゃけ桜さんだというのは、家族だけの秘密である。


 ※


 その後は翔兄ぃが桜さんのご機嫌を取りながら帰宅。その間はずっと桜さんが喋りまくり、翔兄ぃが聞き手に回る始末。


 普通に喋っている桜さんだったが、依然として臨戦モードなのは俺も虎も分かっているので、何も喋らない。というか怖くて喋れない。

私もあんな子が欲しい。翔一さん。私達も頑張りましょう
そ、そうですね

 何を頑張るのか。そんな質問は愚問だ。

 一応は新婚生活なので、そんな話を俺達の前でされても困る。

後は翔子ちゃんにも、もっと女らしくなって貰わないとね。今日も勉強しようね
うごっ!

 嗚呼、こりゃご愁傷様としか言えない。


 桜さんは染谷家の正体を知った時から、入れ替わり体質な俺達をもっと女らしくする事に目覚めちまって――


 翔兄ぃはずっと桜さんの調教……

 もとい、教育を受けており、化粧やらメイクなど、好き放題やられているのである。



 桜さん曰く、染谷家の女の子も可愛いんだから、もっと女らしくもありなさいと。

 そうじゃなきゃぶっ殺すぞ? と、ありがたい言葉を頂いていた。




 ちらっと横目でアイコンタクトする翔兄ぃ。


 後は俺に任せろと言わんばかりな態度に、俺は虎と共に自分の家に入るのだった。


 後はもう翔兄ぃに任せよう。俺達雑魚が何をやっても無駄だからな。



 

 ※


 自分の部屋に戻ると、ベッドにダイブするのはいつものパターンだ。

 そして天井を見上げるのまでワンセットである。




 さて、完全に桜さんに尻を敷かれてる翔兄ぃだが、とても仲良くやっている。

 

 俺達が入れ替わり体質だと知って一年も経過していないが、知る前の頃よりもずっと楽しくやっていると思う。


 そりゃ翔兄ぃも正体をバラす前までも仲良くやってたが、知った後の二人の関係は、そこから更に昇華したからな。



 結果的に結ばれ、大団円の二人であったが…… 



 楓蓮さんも、俺が入れ替わり体質だと知った時、果たして上手くやってくれるのだろうか?


 実は龍子でもある。そう聞いて彼女はどんな気持ちになるのだろうか?




 正直……怖い。

 楓蓮さんに何て思われるのか。考えるだけで気が滅入ってしまう。



 ああ、この気持ちはずっと……彼女に告白するまで続くと思うと、途端に憂鬱になっちまう。



 実際そんな人間を見てきただけに……翔兄ぃが「つらい道」なのだと言った。

 その気持ちが今。嫌と言うほど分かる。



 できれば楓蓮さんも桜さんのような……

 そんな心の持ち主であって欲しい。そう願うしかない。


 

 こんな身体でも俺を受け入れてくれるのなら、その後は翔兄ぃみたいに好き勝手弄ってもらって構わないのだから。

しかし……

 先程の桜さんのデレっぷりに少々照れてしまったのは内緒だ。

 これを楓蓮さんに当てはめると……その瞬間、凄まじい妄想が噴出してしまった。

後は龍子さんにも、もっと女らしくなって貰わないとね。今日も勉強しようね

 そして愛の巣に戻ってから、楓蓮さんの好きなように 弄られる龍子。二人の間に笑顔は絶えないのであった。


 おうふ。ちょっと想像しただけで死ぬなこれ。

私もあんな子が欲しい。龍一くん。私達も頑張りましょう
ひゃ、ひゃい! ぎゃ、ぎゃんばりましゅ……ぐはっ!

 そんな破廉恥な妄想が脳内で再現されると、俺は0,1秒で鮮血を撒き散らしていた。



 いかんっ! 


 女神であらせられる楓蓮さんに対し……こんな妄想をするなど……たるんでる証拠だ!

 俺は立ち上がり、叫びまわる。


 邪念を取り払おうと、今度は壁に頭を打ち付けると、次に無我夢中でスクワットを始めるのだった。



 ただのオムライサーのクセして、彼女のムーディな妄想をするなど……

 俺はそんな助平ではない! 


 

 雑念を捨てろ! 破廉恥~~~~撲滅っ!


 臨兵闘者皆陣列在前!  破ぁっ~~!

 


 必死に妄想をかき消そうと、一心不乱に身体を動かしていたが……


 「今日も頑張りましょう」というフレーズがやたらと脳内に残っており、リピートされる度に赤い液体が噴出しやがる。

ちょ! おい龍兄ぃ。何してんだ? だ、大丈夫か?

うるせぇ虎ぁ! てめーも最近たるんでるぞ! 

今から染谷流。地獄の鍛錬はじめっぞ!

 いつの間にか俺の部屋に来ていた虎にヘッドバッドをかますと、こいつも一緒にスクワットをやらせるのだった。
なんつー集中力! 顔が血みどろだぞ!
 そんな空気の読めない虎をぶん殴ると、簡単に床ペロしやがった。情けない奴め。
いつ何時も隙を見せてはならぬ! 翔兄ぃも言ってただろうが!

 俺もこのままではダメだ。彼女に相応しい男にならねば。 

 一緒に歩いててもゾウリムシだと言われないように精進せねば!


 こうして、俺の自己満足による自己鍛錬は深夜まで続くのであった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色