防衛機密情報漏洩

文字数 927文字

以前に診療した患者の話。
歯科医師は、刑法134条にて、正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密及び情報を漏らしてはいけないのだが、それは、例え僕が歯科衛生士であったとしても、歯科衛生士法13条において、同じように守秘義務が課されているが、僕は歯科医師だ。
また、歯科医師、歯科衛生士ではなくなった後においても、秘密は守り続けなければならない。

初診担当の日、あれ、どう考えても、僕に回される患者が多くないか??と疑問に思っていた日だったが、その人は来た。
30代ぐらい、共済組合の保険で来た人は、ブレスレットやアクセサリー、飾り気が無く、個人的に好印象だった。

患者という立場は弱い人間だと思って、自分は健康的で、本来こんな場所には来ねーんだぞと虚飾的な意味で、装飾品を付けてくる人が多い気がするが、診療室・病院では、アクセサリーは、非常に場違いなのだ。女性専用車両に阿部寛が居るくらい、場違いだ。

彼は、親知らずの抜歯で来た。
炎症や腫れ、臨床的な所見はなく、パノラマX線写真を撮ってもらい、口腔状況を確認した。

まあ、普通の下顎左側の水平埋没智歯だった。
さて、水平埋没智歯が何なのか、歯が横向きに生えて、下顎骨の中に埋まっている状態の親知らずのことだ。

一般の歯科医院でしている、抜歯鉗子を使って、引っこ抜く感じではなく、水平埋没智歯の術式は、メスとエレバトで周辺歯肉を全総弁剥離してから、エアタービンを用いて、歯冠部分を除去、その後、残根鉗子にて歯根の除去、縫合と少し時間がかかるが、造作もない、大学病院では、毎日やっているものだ。

基本的に初診で、抜歯をすることは少ないので、レントゲンの写真説明と抜歯に関する同意書の記入と患者への説明で診療は終わりだった。

最後に、次回の予約を取っている時、歯を抜いてから一週間ぐらい、痛みますけど、大丈夫そうですか?と聞くと、彼は、7月8日に尖閣諸島に行くので、その辺は避けて欲しいと答えた。

彼は、自衛隊共済組合に所属し、仕事は、海上自衛隊であることは、診療録によってわかっていたが、まったく、どうやら、日本の防衛機密情報は、12番チェアで漏洩しているようだ。
帰ったら、地元の病院で親知らずを抜くんだ。死亡フラグとしては、弱ぇな。
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