第1話 『始祖』の苦悩

文字数 506文字

 鈍い。鈍すぎる。
 こちらは最初から逢った時から恋情を抱いているのに傍にいる男は鈍くて話にならない。奇跡について熱心で政治についても熱心で色恋沙汰はさっぱりとはどういう男なのだろう?
 クラックはいつもそうだ。
 エカチェリーナに相談した時も「残念な男よね」と同情された。
 はあ、自分が表情に出さないのも悪いのだけど、少しは察したらどうなのかしら?
 幽閉されている間も悩んだ。あの朴念仁、大丈夫なのかしら、と。
 戦いが終わった後、自分は眠りについた。
 クラックは結婚の話を意図的に隠しているのが判った。
 何考えているの? あれ、私が誘ったから結婚した様なもので、あなた何もしてないじゃない。それなのに責任感じているとか馬鹿なの?
 お互いに奇跡を行使して百年が過ぎた。
 そして、ようやくクラックは言ったのだ。

「愛している」

 この一言を、本音を訊き出すのに百年もかかるの?
 これ、ギネス記録じゃないかしら?
 だから言ってやった。

「ほんっとうに鈍いわよね。クラック。その科白言うのに百年もかかる?」

 本当に絶食系との恋愛は大変だ。本人が悟っているつもりでも全然心読めてない。

 百年、長かったなあ。

 私の感想はそれに尽きる。
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