最終話

文字数 641文字

 クンツァイトはサーベルを振り上げた。
 「ドアのところにたどり着いたもの一人は、全ての罪をなかったこととし、自由になる。では、早速走り出してくれたまえ!」
 トラックで運ばれてきた百人を出入り口のところへ運び、檻を開けさせる。
 その途端、人が溢れだし、一斉に狭い廊下を走り出した。僅かに溜まっている水を跳ねさせながら、まっすぐに走っている。
 クンツァイトは、その様子をカメラ越しに眺めた。甘ったるいジュースを喉に通しつつ。
 百人が一気に狭い廊下を走るのだから、当然、おしくらまんじゅうのようになった結果、ほとんどの人間は転倒、その人間の上に後ろから来た人間が転倒し、踏みつぶすという現象が発生する。
 それを笑って傍観する楽しさと言ったら。
 まぁ、そんな状況でも生き残るものはいるのだ。彼らは一斉にドアに群がる。
 「来た来た来た!」
 クンツァイトは手元にあった真っ赤なボタンを押した。
 すると、ドアに触れていた人間から、悲鳴もないうちに煙が上がる。
 単純に、ドアに超高圧電流を流しておいただけなのだが、これは効果覿面であった。人間は電気を通すからである。一人の身体に電気が流れれば、その体に触れていたもの全てに電流が流れるのだ。
 「クンツァイト様、流石ですね。あっという間にゴミどもを一掃できました」
 メイドたちの拍手でクンツァイトも鼻歌交じりになる。
 「私は仕事が得意なのであるからして」
 鼻高々になって胸を張った。
 明日からも良い仕事が出来そうだ。
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登場人物紹介

クンツァイト。

父の代から有名な悪党一家に生まれ、その父を始末し、自分がトップに立つ。

自身を「キュートな王子」と呼ぶ。

ただ、見た目はどう見ても「長靴を履いたねこ」である。特にサビ猫にそっくりなようだ。

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