第十四話 スーパー自転車操業

エピソード文字数 1,067文字

あぁ1000万G……!
今まで見たこともない金貨の山……じゅるり……。
金貨の山を抱きしめるのやめろって……。
神に仕えているはずの聖職者が、本音丸出ししすぎだろ。人には見せられんね、この姿。
なんで金貨で持ってきたんだ? そのまま銀行口座に預け入れておいたほうが……。
このお金は仕入代金としてどんどん投入しなくてはなりませんし、魔境銀行の口座にそのままにしておくのはなんだか不安だったんです。いったん預かって、仕入に使った以外のお金は、他の銀行の口座に入れておくことにしませんか。
なるほど、了解した。とにかくまずは仕入だな。
神さまありがとう、愛してるわ。
子どものころから無理やり強制されてきた私のお祈り行為が、ようやく通じたということね。これだけのお金が私だけのものだったら、教皇庁なんかから足を洗って、一生遊んで暮らす選択肢だってあるのに……。
そんなんで教皇庁やめてたら、神にちっとも感謝してないじゃねーかよ。
僧侶さん、これはいずれ5000万Gにして返さなくちゃならないんです。これから魔王さんとの決戦に出向くための、貴重な原資になってくれるんですよ。散財はできません。
1000万Gを、たった1年後には5000万Gにして返済……。
なんという自転車操業、なんという奴隷、なんという地獄……! 
ここはもう、俺が暮らしていたまともな常識の世界じゃない。
戦士は妙に詳しいよな。法律も知ってるし、金に関しても素養があるんじゃねーか?
俺の実家は、田舎でしがない宿屋を経営しててな。ガキの時分から、独り立ちして食っていくように言われてた。商売のことは、ちったあわかる。
マジかよ。ボランティア活動に勤しむ博愛主義者が商売を語れるのか。もう戦士しか頼れる気がしねーな。
いやいや、こんな賭博的商売で頼られても……。よほどの覚悟と、次々と事業分野を広げていくスピード感が必要だぞ……。どうしていくべきか俺にもな。
いずれにせよ、これで当面の支払いをしのげます。それに、懸案だった武器防具の仕入代金が出来たということです。お店を本格的に開店できますよ。どうしようもない手詰まりな状況は抜け出せたと思います。
ひとまず今は、魔王から1000万Gもの資金を引っ張ってきたことを褒めておくべきか? ドジっ子にしては頑張ったんだろうな、うん。
俺には、危機を先送りして、余計に巨大な火だるまになったとしか思えないんだが……。
この光沢、この重み、この煌めき……これこそまさに至福のときよ。私は今晩、この山の上に寝ることにするわ。
こらこら……金貨にキスするのマジでやめろって……。
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登場人物紹介

勇者

剣技・魔力ともに秀でた有数の戦闘技術の持ち主。幼いころからその力は有名で、王国政府から懇願されて魔王討伐の旅に出た。
心優しく、単純な性格。誰に対しても丁寧で、魔王にすら謙虚な姿勢で臨む。

魔法使い

まだ年若いにもかかわらず、王国魔法協会で最高の魔力の持ち主。勇者を護衛するメンバーとして王国魔法協会から派遣され、最も早くからパーティーに参加した。ギャンブル好きで、大都市にくるとカジノに入り浸る。

僧侶

教皇庁の特殊工作員。教皇庁の思惑から勇者パーティーに派遣され、魔王軍攻略に参加している。
ゾンビ30体を同時召還し使役することができるほどの驚くべき魔法力を秘め、その実力は魔法使いを上回る。タイマン勝負でも、愛用の聖鉄製大型ジャッジガベルを振り回し、戦士を圧倒する実力をみせる。表向きは清楚な女性に見えるが、パーティー内での戦闘力は、実のところ僧侶が最も高い。

戦士

ツワモノ揃いのパーティーメンバーのなかで、唯一の庶民的能力。
苦学生で、生活費を稼ぐために、冒険者ギルドに所属して時々バイト活動をしていた。あるときダンジョンに挑む勇者パーティーにポーター(鞄持ち)として雇われる。最後に加わったメンバー。
正式には今でも冒険者バイトだが、数字や法律に強く、パーティーの知能を担っている。すでに古株になってしまっており、最後まで同行しそうな雰囲気である。

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