第1話

文字数 603文字

 いくらなんでも、2時間前は、早すぎたなあ。とはいえ、私の顔は、ニマニマしっぱなしだ。

 ド田舎の地方都市出身の私は、これが初デートで、初喫茶店。市とはいっても、私が生まれたころは郡だったし。近所に喫茶店なんてものは、皆無だ。中学校時代は、憧れのケンチョーショザイチにある高校に入るため、そこそこベンキョーしてたから、彼氏を作る気なかったし。
 よし、高校デビューだ!!と張り切ってみたものの、なかなかうまくコトは運ばなかった。
 しかし、ついに!!
「じゃあ、明日、駅前のカフェでまちあわせで。」と言ってもらえた。

 うふふ。観葉植物の隙間から、煙草を吸う彼の横顔が…。
 えっ。いつの時代だ、それ。今時、喫茶店で煙草吸えるわけないでしょ。第一、自分のほうが先来てるのに。

 『そんな時は、「ツレが来たら注文しますね。」って、座って待つのよ。お父さんたら、私が来るまでそうやって待っててね。「今来たばかりだよ」って言いながら、灰皿が吸い殻でいっぱいでね。』なんて、家で母さんのおのろけ聞いていたせいだな。

 えへへ。明日友達に自慢したら、2時間待つなんて馬鹿か、あんたは!!って言われるかなあ。こうやって、いろいろ考えながら待つ時間、すっごく楽しいのに。

 はじめは、こっちをチラチラ見ていた、喫茶店のおねえさん、かわいそうな人を見る目でいるけど、ちょっと私が早すぎただけだから。

あ、彼だ。私の青春、はじまり、はじまり!!
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