秘密基地、陥落

文字数 710文字

 地上の人間共はなんとマヌケな奴らよ。

 村の中に魔物がいるというのに、全く気付く気配がない。外のゴブリン共やオーク共にばかり注意を払い、いたずらに人員を損耗しておる。

 ワシはギルマン。愚かな人間共の村にある井戸に潜伏している。潜入までの手口は簡単じゃった。顔が見えぬように外套を着こみ、魔術師を騙って入り込んだ。

 夜遅くになったら人間共を食いに外へ出る、それ以外の時間は常に井戸の中で過ごしている。

 村に来てからもう五日……奴らは今頃いるはずのない仲間殺しの犯人を捜しているころじゃろう。外の魔物に滅ぼされるまでは遠くない。そろそろ次の村を探さねばならんな。

 それにしても井戸の中は良い立地じゃ。狩るタイミングさえ選べば楽に食い物が手に入る。海で暮らすよりも危険は少ないしのお。

 それにしても人間共は愚かと言ったが、それ以上に愚かなのは地上の魔物共じゃ。武力一辺倒のやり方しかできない奴らはバカバカしいくらい躍起に正面から人間共に挑んでおるからの。他者から奪うならもう少し賢くやらんと生き残れんぞ。

「――さて、今日も狩りの時間じゃな」

 ワシは壁を登って井戸の外にでた。

 外に出た時、最初に見えたのは人間の女。

「な、なに……?」

 もうほとんどの者が寝静まっている頃だというのに、夜に徘徊している者がいたのか。しかもこの女はまるでワシが出てくるのを待っていたかのように持っている杖を構えた。

 ま、まさか気取られていたのか? なぜじゃ、なぜ? 深夜だけに痕跡を残さぬよう慎重に狩りをしておったのに。この方法で三か所は食いつぶした完璧な闇討ちじゃったのに。

 放たれた青白い稲妻の弾丸――それはワシの頭を正確に一撃で撃ちぬいた……

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