第3話

文字数 559文字

「ケツの穴って、そんなにいいのかい?」新しく仲間に入った若い男が、背を丸めて歩く俺に、ネオンが途切れたところで追いつき、纏まらない髪をかきあげながら、声をかけてきやがった。
「ムショ帰りに聞くな」
「アンタ、ムショ帰りなのかい? 何して入ったんだい?」
「おいおい、兄ちゃん」溜息混じりに言った。
「なんだい、聞いたっていいだろ? これから一緒に仕事する仲なんだし」
「個人的な事には立ち入るな。俺も、お前の事は聞かない。名前さえな。だから、さっき決めた通り、お前の事はUと呼ぶ。お前はUで、それで全てだ」
 Uが肩をすくめ、分かりました、と仕草で示した。
 ド素人のガキめ。
決行日は明後日、金曜日。あと二日の辛抱だ。仰せつかったお守も穏便に済まさなくては、俺に未来はないのだ。

Cが三日分、前金で取っておいてくれた安ホテルに潜り込む。
決行日までは怠惰で過ごした。ムショから出てする事は、食うか寝るか、だ。食いたい物をたらふく食い、ビールで流し込む。
すぐに頭がクラクラする。七年ぶりのアルコール摂取が、そうさせるのだ。
そして柔らかいベッドに倒れこむ。横に胸の大きな女がいれば完璧だ。まともに勃ちは、しなかったが。
同房だった者が、アレは歳と共に弱くなる、と言っていたが、俺は決してそうではない。自分に言い聞かせた。俺は男だ、現役だ、と。

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