#10「排泄物収集」前編

文字数 1,942文字

 僕は今、防子と共にカテラスが現れた現場に車で急行中だ。仕方のない事なのだけれど、こちらの時間も都合も関係なく毎度毎度突然だ。
 しかも屋敷で暮らしている(手伝いもしているけど)現状の僕とは違って防子は屋敷の使用人としての業務をこなしながらカテラスと戦わなきゃいけないのだから。
 防子は人のため、そして僕の負担が減るならこれぐらいの事は厭わないと言うがその言葉を聞くと罪悪感が出てくるな。
 考え事をしている内に現場である住宅街に着いた。道沿いに住宅が並び立っている道路にカメムシの怪人が悪臭を町に撒き散らして人々を苦しめていた。

「さあ溢れ出なさい!僕の香りよ!」

「臭〜い!」
「鼻がおかしくなる〜!」

 確かに町中がカメムシの悪臭が充満したら、鼻が捻じ曲がってしまいそうだ...!僕は防子と共に人気のいない所に行って武着装を行う事にした。
 アリツチップをアリツフォンに挿し込む。

[Weapon In]
[Defence In]

電子音声の後に待機音が鳴る。

「「武着装!」」

掛け声を言って、CERTIFICATIONの文字をタップした。

[CERTIFICATION. In Charge of Weapons.]
[CERTIFICATION. In Charge of Defence.]

再び電子音声が聞こえた瞬間、僕達の周りに光が纏い、「アリツウェッパー」「アリツシーリア」に武着装した。
 僕達はカテラスの前に姿を現す。

「おや?君達がアリツと言われる超戦士だね?」

「お前は...カメムシカテラスと言ったところか?」

「いかにも。僕の名はカメムシカテラスさ。」

「悪臭で町の人達を苦しめるのは止めなさい!」

「何を言っているんだい?人々は僕の香りに魅了されているじゃないか。」

 そうは言うが僕の目にはどう見ても人々は手やハンカチで鼻を抑えていて、蹲って苦しんでいるようにしか見えない。

「いやどう見ても立てない位に苦しんでいるじゃないか。」

「嫌だな〜。これは僕の香りに立てない位に魅了されているんだよ。もっとよく見てほしいな。」

 何という勘違い野郎なカテラスだ。自分が迷惑な事をしているという自覚がないのか。厄介だな...。

「そんな訳ないでしょ!今すぐにこの匂いを出すのを止めて!」

 武着装しているから、僕達は今は悪臭を感じないけどカメムシの匂いが町中に充満していると考えると、まぁ声も荒げちゃうか...。

「全く僕の魅力が分からないなんて、浅はかな人達ですね。」

「止めないなら実力行使で止めさせてもらうぞ!」

「僕の邪魔をする気ですか?ならこっちも抵抗させてもらいますよ!行きなさい!僕の可愛いゴリーク達!」

 しかしゴリークは現れなかった。

「どうしたんですか!?...あっ!何故倒れているのです!?」

「お前の匂いのせいじゃないの?気づかなかったのか?」

「しまった!僕とした事が倒れるほど魅了してしまうなんて!誤算だった!」

 ...どこまで勘違い野郎なんだ。このカテラスは。
 その隙にシーリアはアリツフォンを取り出しある物を大量に出現させていた。アリツノーズガード、いわゆる鼻栓だ。
 これを人々のいる方向に投げ付けた。そして自動的に人々の鼻に向かって行って悪臭を防いだ。そして周囲に逃げるように呼びかけて、人々は遠くに避難した。

「ああ!よくも僕のお客様を!」

「何がお客様よ!人々を苦しめておいて!私がやっつけるわ!」

 今日のシーリアはものすごく怒りを露わにしているな。
 そんなに臭い匂いを撒き散らす事がそんなに気に入らなかったのか、僕にアリツガンを貸すように要求してきたのでそれに答える事にした。
 シーリアはアリツガンを右手で構えてカメムシカテラスを黙々と撃ち続けた。ホーミング弾になっているので、弾が全て命中したカメムシカテラスは膝から崩れ落ちた。そして自前のアリツソードを出現させた。

「ウエッちゃん!一緒に決めるからアリツソードを出して!」

「ああ!」

 今なんか聞き慣れない呼ばれ方されたような気がしたけど、今はそれは置いておいて僕はアリツソードを出現させた。
 僕達はアリツソードにアリツブレイクチップを挿し込む。

[[Break Standby]]

アリツソードから待機音が鳴り始め、トリガーを引いた。

[Weapon Break]
[Defence Break]

 僕達はアリツソードのそれぞれのブレイクを発動して、それぞれでカメムシカテラスに向かって走り出しアリツソードを振り上げて交差になるように斬った。

「「アリツクロス斬り!」」

「僕は輝く存在になるはずだったのにー!」

「最後まで勘違いしたままだったよ...」

 カメムシカテラスは倒れて人間に戻った。いつものように警察等に通報して、僕達は屋敷に戻るのだった。
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