第94話  白竹美優視点 真実 2

エピソード文字数 2,610文字

本当にごめんなさい……魔樹。ママ……
 一通り話し終えると、ママは何も言いませんでしたが、魔樹は深く溜息を吐くと「わかった」と言ってくれた。
私がどうにかする。だから泣かないで

 真実を喋ったつもりが、結果的に蓮くんに嘘を付く形になってしまう。

 それがつらくて、悔しく思えてしまう。

蓮くんに……嫌われたくない。それなのに……

 思わずぽつりと呟いていました。


 私が一番気にしていることを。

お母さん。元はといえば……お母さんが急に学校に来たからこうなったんじゃない。

来なくていいって何度も言ったでしょう?


嫌だって言ってるのに、それなのに何で来るのよっ!

魔樹……
…………

美優! これはあなたのせいじゃない。悪いのはお母さんだわっ

まったく……いつまでも私達を子ども扱いしないで!


もう私達は高校生なのよっ! ほっといてよ!

魔樹っ! も、もうやめて。怒らないで!

 怒鳴る魔樹を必死に止めようとしますが、止まりません。

 次第に日頃の鬱憤を晴らすように、魔樹は大きな声で怒鳴り続けました。

お母さんは一切出てこなくていい! 美優は私が見るんだから!


そうじゃないと……

そうじゃないと私が男になった理由がなくなるでしょう!

魔樹……ごめんなさい。ごめん……ごめんなさい!

 この一部始終をママは何も言わず見守るだけ。


 いつもなら逆に怒ったりするのに、じっと座ったままでした。



 魔樹は制服を脱ぎ出すと、立ったまま入れ替わっていきます。


 魔優になってもママを睨んだままでしたが、ママが何も言わないでいると、こちらを向きます。

大丈夫。私が何とか黒澤を説得してあげる。だからもう泣かないで
 抱きしめてくれる魔優にしがみつくと、再び涙が溢れてきました。


 こうやって魔優はいつも私を助けてくれる。  

   

ほら。バイトの準備しないと。じいじがまた一人で頑張ってそうだから。早く行ってあげよう?

 魔優はとっても微笑を見せてくれました。

 そして自分の部屋に戻ってゆくと、私とママが部屋に取り残されました。

ママ……
今回ばかりは私が悪かったわ。ごめんね……

 こんなに素直に謝るママは初めてでした。

 いつもなら話し合いにならないくらい暴れて、どうしようもなくなるのに……


 だからこそ。

 私がやった事はとても罪が重いのではと思ってしまう。

本当はね……ちょっと顔を見せるだけで帰ろうと思ったのよ。


それに魔優の為でもあったんだけど……ちょっと予想外な出来事があって

 魔優の為? 予想外? 私が言おうとするとママは更に続けます。

だけど。魔優もすっかり強くなったわね……ママもたじたじだったわっ
 何となくいつものママに戻って来た感じがしたけど、急に顔を近づけてきたママは小声で喋り始めます。
ねぇ。黒澤くんって大事な人なの?

うん。学校でも仲良くしてくれて、優しくて……凄く友達なのです。

だ、だから私。彼に嘘を付いてしまったのが……

あんなに必死にママだよって言っちゃったから……う、うぇ

 言いながら泣きそうになってしまうと、ママは頭を撫で撫でしてくれます。
嫌われたくないよ。ママ……
大丈夫。彼はそんな事で美優を嫌ったりしないわよ

 ママがよしよしして励ましてくれる。


 その時、私のスマホさんにラインが届いているのを確認しますと、蓮くんなのでした。

大丈夫ですか? 気になる事があればいつでも相談に乗りますし、今日の事は一切聞きませんから。安心してください
 画面を見た瞬間、また涙腺が崩壊しそうになります。
う、うぇ……蓮くん……

あら。とっても良い子じゃないの。ここまで美優を心配してくれる男の子なんて中々いないわよ


まぁ。良い子なのは知ってたけど

 本当にそう思う。そう思うからこそ……

 自分がやったミスを思い出すたびに、すぐヘコヘコになるんです。

もうっ。そんなに気にしちゃって。もしかして蓮くんのこと。好きになっちゃった?
 お決まりの台詞が出てくると、目がキラキラしちゃうママ。昔から男の子ならなんでも「好きになっちゃった?」って言うのでし。

ううん。そんなんじゃないよ。

蓮くんは……蓮くんは男の子のすっごいお友達です。すっごい大事な人なの

 私は正直に言いました。蓮くんには本当にそう思ってる。

ママ。私は誰も好きになったりしないよ。

どんなに優しくても、仲良くできても、一緒にいるのが楽しくても……


人を好きになるなんて出来ない……

 女の子なのに。男になってしまう身体を見れば……

 その時、私の姿を見せられた人の表情を思い浮かべるだけで、気が滅入ってしまう。

こんな身体。きっと誰にも理解されない。

誰かにこの身体を見せるくらいなら……私はこのままずっと……一人きりでいい

美優……

だから……お友達な蓮くんを大事にしたいの。

私には恋人なんていらない。だからせめてお友達だけは……大切にしたい

私に出来た初めてのお友達だから……

だから私は……うぅ、れ、蓮くんに……うぅ……

 私はいつの間にかママの膝の上に頭を乗せてました。

私はやっぱりダメな人間なのです。

何も出来ない。勉強も出来ない。人とのお付き合いもヘタクソだし、運動だって出来ない……


偽物でし

魔優は全部できる。私よりもずっと頭も良いし勉強も運動も、人とのお付き合いも……全て……

いつも。魔優に負けないよう、頑張ってるけど……迷惑をかけないようにしよう。って思ってるのに……

 美優はいつも頑張ってるわ。ママが知ってるもの

 ママはいつもそう言ってくれる。

 だけど私は本当にポンコツだから……期待に応えられない自分が凄く嫌い。

蓮くんが大事なのね
……うん。大事なお友達なの
 ママはうんうんと頷くと、こんな事を言うのです。
分かったわ、そんなに蓮くんが大事なのなら、私が一つ良い事教えてあげる
え?

その代わり。今から言うことは誰にも言っちゃダメ。

魔優にも。もちろん蓮くんにも……内緒にしておいて欲しい

 何だか大事なお話っぽいので、私はママの膝から起き上がると、目の前に座りなおしました。
いずれは美優や魔優にも、このお話はするつもりだったけど、先に美優に教えてあげる

 何だろう。

 ママはじっと私を見据えて、こう言いました。

蓮くんは私達家族と同じ。入れ替わり体質の人間だといったらどうする?
えっ……?
そういうの。今は全然面白くないです。
ちょっと! 本当なんだってば! ママを信じなさいっ!

――――――――――――――――


すぐに信じろといっても無理な話。


次回 真実2 

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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