家族の奴隷だと感じた瞬間(私の場合)

文字数 1,529文字

 私は無職である。しばらくの間ーーと言っても5日程度の短い間だがーーネットから離れていて少し考えたことがあるのだが、それをぜひこの駄文を読んでくださっている方々と共有したい。
 私は無職である。友達と呼べるものもいない、孤独な引きこもりである。両親とも健在なのだが、基本的に簡単な家事は私が担当している。朝食作りと洗濯物の取り込み、たまの掃除くらいではあるが。だが、無職引きこもり友人なしとなると、家庭内カーストは最下位である。もちろん子供という立場もある。そんな私だが、ある日親が買ってきたものを私のテーブルの前に袋ごと置いていた、という些細なことで傷ついたのである。親としては「買ってきたよ〜」という報告だったに過ぎないのだろうが、まるで私に「買ったものを並べておけ」という命令したかのように思えたのだ。たったこれだけのことでだ。冷静に考えると実に滑稽だ。しかしながら、専業主婦で子供がいる方だったらもしかしたら同じ感情を抱いたことがあるのではないだろうか。自分が家族の奴隷のように感じる瞬間が。
 これは私の想像である。友達とも疎遠になり、核家族で子供の面倒をずっと見ている。子供は「お母さんあれやっといて」「お母さんならやってくれて当然」という甘えを持っており、夫は「お母さんに任せておけば大丈夫だろう」という放任とも無責任とも言える状況だ。私の場合、子供はいないが、もしかしたら私の抱いた感情は、子供がいるお母さんと同じものだったのではないかという仮定だ。
 何もしていない。家族でケンカもしていない。なのに家族カーストの最下位で、いじめられて当然の地位。実際はいじめではなく、「母親」という存在に甘えられているのだが、厄介事を全部頼まれる存在ーーそれを家族からのいじめだと思ったり、家族の奴隷だと感じてしまうーーそう思ったのだ。
 そして、そのことを母に打ち明けてみた。「専業主婦と同じ感情なのではないか」と言ったところで、私は一応専業主婦ではなく、世間一般ではそれ以下の無婚無職子なし友達なしである。だが、ありがたいことにその家庭内カーストの上になる親には相談できた。親に「私のこと馬鹿にしてるの?」と聞いたのだ。そしたらまあ当然ながら親である。「馬鹿にはしていない。そう思っているあなたのほうが他人を馬鹿にしている気持ちがあるのではないか」とのことだった。確かにそうかもしれない、と私は思った。
 つまり、何が言いたいのかというと、自分が馬鹿にされていると思ったときほど、どこかしら自分が他人を馬鹿にする感情があるということなのだ。人間とは実に愚かで、下には下がいると思いたくなったり、その弱者をコケにしたがるのである。
 だが、この感情を抱いたとき、私はインターネットを絶っていた。情報論争やネガティブ感情の渦中にはいなかったのだ。何をしていたかというと、勉強と読書、たまにテレビを見るくらいである。暇だったと言えば暇だった。しかし「働いていない」という引け目があった。それなのに、何故か自分を卑下する感情がわいたのである。それは多分、「家庭以外の何か」が何もなかったからだと思う。
 だからといって、専業主婦に「無理にでも働け」と言っているわけではない。ただ、もし自分が家族の奴隷として扱われているとか、「母親なのに舐められている」と思ったら、自分がまず他人を馬鹿にしていないかという点にも目を向けてみるべきである。もちろん子供や夫にも原因がまったくないとは言い切れないし、私は子供という立場でもあった。子供として、親を侮っていたところもあったからこそ、この感情を抱いたのだと思う。
 これは自己反省でもあり、気づきでもあるのだ。
 私は愚かで馬鹿である。
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