第2話

文字数 1,391文字

メッセージを送ってきたのは、とあるサッカーサークルだった。
サッカーには全く興味がなかったが、暇なので1度見学に行くことにした。

サッカーサークルが練習しているグラウンドは家から遠く、電車を2回も乗り換えなければいけなかった。
しかし、そんなことも苦にならないほど楽しみだった。少し不安もあったけれど。


2回目の乗り換えを終え、電車に揺られていると、ふと思ってしまった。

私なんかがマネージャーとして歓迎されるのか。


1度考え出したらもう止まらない。
さっきまでの楽しみはもうなくなり、不安で胸がいっぱいになった。
もともと自分に自信がなく、人見知りな私は、1人で来てしまったことをこのうえなく後悔した。


帰りたい。


それでも電車は止まらないし、行くと言ってしまった以上もう後戻りはできなかった。


駅に着き、改札を出ると、ジャージを着た1人の男の人が立っていた。
彼は私を見るなり、満面の笑みで駆け寄ってきた。


「見学の子やんな?来てくれてほんまにありがとう!!グランドまで一緒に行こう!!」


彼の明るさと勢いに圧倒されながらも
「来てくれてありがとう」という彼の言葉が私の不安を少しだけ和らげた。
グラウンドまでの行き道で彼は色々なことを教えてくれた。

マネージャーが足りなくて焦っていること
自分は新歓隊長であること
優しくて面白い人しかいないこと
みんな私が来ることを楽しみにしていること


人見知りな私を気遣ってか、グラウンドに着くまで彼は一生喋り続けていた。


まさにマシンガントーク
さすが新歓隊長


私が彼のトーク力に尊敬の念を抱いているうちにグラウンドに着いた。
そこにはカラフルな練習着を着た沢山の部員とかわいいマネージャーが3人いた。


私が来たことに気づいたキャプテンらしき人がみんなを集合させ、私を中心に円になった。
私が簡単な自己紹介を終えると、部員たちは練習に戻った。
新歓隊長もマネージャーたちに私のお世話をお願いして練習に参加していった。


3人のマネージャーのうち2人は2年生で、1人は私と同じ1年生だった。
3人ともとても優しく、私のことを歓迎してくれた。
1年生の子とは同じ九州出身なこともあり、すぐに打ち解けた。



そんなとき1人の部員が声をかけてきた。
「ありがとう来てくれて。」


他の部員たちが練習に励むなか1人ベンチに座りに来た彼に私は少し驚いた。
しかしよく見ると彼は右足にサポーターをつけていた。


けがしてるのかな


私の視線に気づいた彼は少しおどけて言った。
「俺怪我してるからマネージャーやねん。よろしくな(笑)」



先輩(彼)は私の2個上で3年生だった。
このサークルは毎年2年生がキャプテンをするらしく、先輩は去年のキャプテンだったらしい。
こてこての関西弁と眩しいくらいの笑顔が人見知りな私の心をこじあけて、気づかないうちに私はこのサークルに入ることになっていた。


「最後のミーティングで入部確率聞くから最初は80って言って。そんで俺が本当は?って聞いたら100って言ってな。絶対盛り上がるで」


私は先輩の言った通りにした。
先輩の予想通り、私の100%ですという言葉を聞いてみんなは歓喜した。



帰り際、少し気まずそうな私に先輩が言った。

「これからよろしくな。絶対後悔させないから。それだけは約束するわ」

「期待してますね(笑)」


たった2時間の練習時間で、2個も上の先輩にこんな生意気なことを言えるくらい私たちは仲良くなっていた。

























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