終わりの始まり(後編)

文字数 2,817文字

・17P
スラム街。
カルナを抱え、走るイク。
足場が悪く、よろける。
と、煩雑に詰まれたゴミの金属片がカルナの腕を切る。少し血が流れる。
2017/06/11 23:30
(ヤバッ!! 血が……)
2017/06/11 23:31
町の個診療所。
イク、カルナを抱えて駆け込んでくる。
2017/06/11 23:32
「ヤヨイ!!」
「助けてくれ!!」
2017/06/11 23:35
奥から白衣姿のヤヨイが眠たそうにやってくる。
2017/06/11 23:35
「何よもう~今日はお休みだって――」
「あら、イクじゃない」
2017/06/11 23:36
・18P
2017/06/12 04:20
「俺のせいでこの子がケガを!!」
「腕から血が……」
2017/06/11 23:45
「……腕にケガなんてないじゃない」
2017/06/11 23:46
「え!? 本当だ……」
「どうして……」
2017/06/11 23:46
カルナの腕のケガが無くなっている。
2017/06/11 23:46
「どうしてって……ケガがなくなってるならこの世界で考えられることはひとつ」
「彼女も向こう側の人間。不死の存在でしょ」
2017/06/11 23:47
・19P
カルナ、ベッドでスヤスヤと眠っている。
ヤヨイ、イクの手当てを始める。
2017/06/11 23:49
「急に女の子を連れ込んできたと思ったら……このケガ一体どうしたのよ」
2017/06/11 23:50
「あぁ、そうだ!」
「俺、これを取りに行って……」
2017/06/11 23:51
イク、バッグをテーブルに置く。
バッグを開き、中の薬ビンを見せる。
2017/06/11 23:52
・20P
2017/06/11 23:52
「なっ!? これ、アムリタじゃない!!」
「まさか、SK社に忍び込んだの!? 信じられない」
2017/06/11 23:54
「俺はこのスラム街の現状を変えたいんだ!」
2017/06/12 02:10
「それがどれだけ危険なことかわかってるの!!」
2017/06/12 02:11
「不死になれないってだけで、こんなボロ屋に押し込められるなんておかしいだろ!」
「俺たちだって同じ人間だ。なのに……ヤヨイだって、そう思うだろ?」
2017/06/11 23:56
スラム街の俯瞰図。
整備された都市のすごく小さな一角にスラム街がある。
2017/06/12 00:13
・21P
2017/06/12 02:22
「番号の呼び方を変えて名前っぽくしているけど、ここに居る人は誰も本当の名前を与えられていない。そんなのアリかよ……」
2017/06/12 02:14
イク、右腕に刻まれた10,019の数字を見る。
ヤヨイの太ももには4,841の数字が刻まれている。
2017/06/12 02:17
「確かに私たちみたいな不死になれ損なった者には人権すらない」
「それは不満よ! でも、どうしようもないし、変えられない。どうして私たちが不死になれなかったのか、その原因がわからない限りね」
2017/06/11 23:58
「だから、この薬を盗ってきたんだ!!」
「この薬を調べて、俺たちが不死になれるようにしてくれよ!!」
2017/06/12 02:22
「(溜息)あんた、自分がどんだけ無茶なこと言ってるかわかってるの?」
2017/06/12 02:26
「わかってる。でも、不死になれば、向こうの世界で暮らせる」
「おいしいものも食えるし、立派な家にも住める。ちゃんとした名前だって貰えるんだぞ!!」
2017/06/12 02:27
・22P
2017/06/12 02:29
「わかった。わかったから……」
「一応、調べてみるわよ。でも、期待はしないでよね!」
2017/06/12 02:44
「ありがとう、ヤヨイ!」
2017/06/12 02:45
「いつになったら、私のことママって呼んでくれるのかしらねぇ」
2017/06/12 02:45
「ヤヨイ先生!!」
2017/06/12 02:47
・23P
母親が駆け込んでくる。
2017/06/12 02:49
「あら、サクラちゃんのお母さん」
「どうかしたんですか? そんなに慌てて」
2017/06/12 02:49
「こちらにサクラが来ませんでしたか!?」
「ちょっと目を離した隙にいなくなって……あの子が行きそうなところは探したんですけど、全然見つからなくて……」
2017/06/12 02:51
「こちらには来てませんね」
2017/06/12 02:52
「そうですか……もし見かけたら、連絡を下さい」
2017/06/12 02:57
「俺がその子を探しに行くよ」
2017/06/12 02:58
「あんたはまず自分の手当てを……」
2017/06/12 02:58
・24P
2017/06/12 03:00
「最近、スラム街で誘拐事件が相次いでいるって聞くし、心配だろ」
2017/06/12 02:59
「そうね……でも、無理はしちゃだめよ」
2017/06/12 03:01
「ありがとうございます」
2017/06/12 03:02
「必ず見つけてきます」
「ヤヨイ、その子のことよろしく」
2017/06/12 03:02
イク、ベッドで眠るカルナをチラッと見て、
外に出ていく。
2017/06/12 03:03
・25P
イク、スラム街をあちこち探す。
2017/06/12 03:03
「どこだ……あらかたスラムの中は探しつくしたぞ」
「他に行くところって言えば……まさか……」
2017/06/12 03:04
イク、スラム街を抜け、都市部に忍び入っていく。
公園。
腕に13,960の数字が刻まれた女の子がいる。
2017/06/12 03:04
(いた! あの子がサクラちゃんだな)
2017/06/12 03:07
イク、サクラに近づく。
サクラ、木を見上げている。
2017/06/12 03:08
「サクラちゃん!」
「こんなところで一人でいたら危ないよ。俺と一緒にお母さんのところに帰ろうか?」
2017/06/12 03:09
「帽子が……ママに貰った大事な帽子が風に飛ばされちゃって……」
「それで……あそこに……」
2017/06/12 03:10
サクラが木を指差す。
その先に、木の枝に引っかかった帽子がある。
2017/06/12 03:10
「わかった。俺が取って来てやるから、ここで大人しくしてるんだぞ」
2017/06/12 03:12
・26P
診療所。
ヤヨイ、カルナの様子を見に来る。
2017/06/12 03:53
「あれ、いない!? ……一体どこに行ったのかしら……」
2017/06/12 03:56
ベッドにはカルナの姿がない。

公園。
イク、木から飛び下り、帽子をサクラに渡す。
2017/06/12 03:57
「ほらよ」
2017/06/12 03:58
「お兄ちゃん、ありがとう!」
2017/06/12 03:59
「動くなっ!!」
2017/06/12 03:13
・27P
いつの間にか、警備隊に包囲されているイクとサクラ。
イク、サクラを自身の後ろに隠す。
2017/06/12 03:13
(チッ……見つかっちまったか)
2017/06/12 03:14
「まだこの辺りをうろついていたとはな……」
2017/06/12 03:15
「なっ!? あんた、その腕……」
2017/06/12 03:16
・28P
有馬の右腕がなくなっている。
2017/06/12 03:16
「貴様の仕業だろ!!」
「腕が……腕がどうして元通りにならない!! 私に何をした!?」
2017/06/12 03:17
「はぁ? 一体何のことだ……」
2017/06/12 03:37
「とぼけるな!!」
「貴様の後ろにいるヤツが、俺の腕を切り落としたんだ」
2017/06/12 03:37
「後ろ……」
2017/06/12 03:38
黒い影がイクの背後にいる。
イク、振り返る。
2017/06/12 03:39
・29P
体長3M、黒いフードを着用し、顔はドクロ姿の死神が立っている。
手には大きな鎌が握られ、口からは臭い息を吐く。
2017/06/12 03:39
ヴォォ
2017/06/12 09:21
・30P
2017/06/12 03:44
「な、なんだコイツ!?」
2017/06/12 03:41
「貴様の仲間だろう!」
「今回は容赦せん! 始末しろ!」
2017/06/12 03:41
警備隊、一斉に銃撃を開始する。
イク、サクラを抱えて逃げる。
死神に浴びせられる銃弾の嵐。
全く、効いていない。
死神、鎌を一振り。
2017/06/12 03:44
・31P 
死神の一振りで、警備隊の半数が切断され、再起不能になる。
2017/06/12 03:48
「お前は何なんだ!!」
「我々は不死のはず。なのに……なのに……どうして元に戻らない!?どうして生き返らないんだッ!?」
2017/06/12 03:49
死神、鎌を振りまわし、警備隊を次々に細切れにしていく。
2017/06/12 03:50
(ハァハァ……一体何が起きてるんだ)
2017/06/12 03:51
「お兄ちゃん、怖いよぉ」
2017/06/12 03:52
「大丈夫だ。俺がついてる」
「今のうちに逃げよう」
2017/06/12 03:52
・32P
イク、サクラと逃げようとする。
イク、フラフラと死神の方に近づいていくカルナの姿に気づく。
2017/06/12 03:59
(なっ!? どうしてあの子がここに……)
2017/06/12 04:02
「呼んでる……あなたは……私……」
2017/06/12 04:03
グルルル
2017/06/12 09:23
死神、カルナの存在に気付く。
死神、カルナ、お互いに距離を縮める。
2017/06/12 04:07
・33P 
死神とカルナが対面する。
死神、カルナに向かって手を伸ばす。
2017/06/12 04:08
「あぶねっ!!」
2017/06/12 04:09
イク、飛び掛かってカルナを助ける。
死神の手が空を掴む。
2017/06/12 04:09
「あんた、正気か!?」
「見ただろ! 理由はわかんねぇけど、アイツに殺されると不死の奴らですら死んだままだ」
2017/06/12 04:10
・34P
死神、逆上した様子で、鎌を振りかぶる。
2017/06/12 04:13
グォォォォ!!
2017/06/12 09:25
(ヤバッ!!)
「逃げるぞ!!」
2017/06/12 04:14
「タス……ケル……」
2017/06/12 04:15
・35P 
カルナ、近くに落ちていた先の尖った鉄パイプ(死神が振った鎌で切り落とされた公園の遊具の一部)を掴む。
カルナ、鉄パイプを突き立てる。
鉄パイプはイクを通って死神まで貫通する。
2017/06/12 04:15
「なっ……なんで……」
2017/06/12 04:17
イク、吐血する。
(第一話終わり)
2017/06/12 04:18
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登場人物紹介

イク 18歳
不死になれない少年。

カルナ
施設から抜け出してきた少女。(不老不死)

ヤヨイ 27歳
スラム街の町医者。イクの母親代わり。

有馬 140歳(見た目50代)
不老不死研究をするSK社の役員

死神
不老不死を殺せる謎の存在。

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