終わりの始まり(前編)

文字数 2,621文字

・1P
研究施設。
階段を駆け上がり、廊下を疾走するイク。
2017/06/11 18:18
(ハァハァ…ったく、しつこいな)
2017/06/11 18:21
「いたぞ!!」
「待てぇ!」
2017/06/11 18:23
銃を構えた警備隊がゾロゾロとイクを追いかけてくる。
2017/06/11 18:24
(クソッ! 何としてでもこの薬を皆のところに届けなきゃ)
2017/06/11 18:25
イク、薬品の入ったバッグを大事そうに抱え直す。
2017/06/11 18:27
・2P
イク、袋小路に入ってしまう。
2017/06/11 18:28
(ヤバッ……行き止まりじゃねぇか!)
2017/06/11 18:30
「無駄な抵抗はよせ!」
「大人しく盗んだ物を返して、投降しろ!」
2017/06/11 18:31
「そんなわけいくか!」
「これは俺たちの希望なんだ」
2017/06/11 18:32
「君たちにも一度チャンスは与えたはずだが」
2017/06/11 18:34
・3P
警備隊の後ろからゆっくりと前に出てくる有馬。
有馬、イクに向かって手を差し出す。
2017/06/11 18:36
「10,019番、その薬を返したまえ」
「その薬、アムリタは全国民が1歳の時に予防接種として受けている。もちろん、君もだ」
「99%の国民はしっかりと薬の効果を出している。だが、君たちダイング(なり損ない)はどうだね?」
2017/06/11 18:37
「だから、もう一回この薬を使えば……俺たちもきっと……」
2017/06/11 18:41
「(溜息)薬を盗まれた上に、くだらない話を聞かされるとは……」
「これも警備を怠り、侵入を許したお前たちのせいだぞ。猛省しろ!」
2017/06/11 18:56
警備隊の全員がナイフを取り出し、腹に突き刺す。
2017/06/11 18:56
・4P
そのままナイフをスライドさせ、腹を切り開く。
2017/06/11 21:21
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!」
2017/06/11 18:58
「何してんだよ!!」
「やめろ!」
「やめさせろよ!」
2017/06/11 18:59
・5P
血を流し、倒れこむ警備隊の隊員たち。
イク、警備隊の一人のもとに駆け寄り、止血しようとする。
2017/06/11 19:02
「早く手当てを!!」
「何ボーっとしてんだよ。死んじまうだろ!」
2017/06/11 19:04
「君は何もわかっていないようだな」
「まぁ、持たぬ者には想像もつかんだろうが……」
2017/06/11 19:07
・6P
ピクリとも動かなくなった警備隊の隊員たち。
と、切り開かれた腹の傷が閉じていく。
完ぺきに傷口が閉じ、警備隊の隊員たちは目を覚ます。
元通りの隊列に戻る。
2017/06/11 19:28
「わかったかね。これが不死だ」
「そしてこの力は特別なものじゃない」
「アムリタを使えば誰もが不死になれる。国民は不死になることが義務とされている。なのに……君たちは、貴重なアムリタの効果を棒に振った!」
2017/06/11 19:31
「それは俺たちのせいじゃない!」
2017/06/11 19:42
・7P
警備隊が銃を構えて、ジリジリとイクの包囲網を狭める。
2017/06/11 21:13
「そうかもしれない。だが、それは生まれてくる優秀な子供たちが必要としてるものだ」
「君たちのような出来損ないに、もう一度チャンスをやれるほど安い薬じゃない。不死になれなかった自分の身体を恨むんだな」
2017/06/11 19:42
(クソッ……どうすれば……どこかに逃げ道があるはずだ)
2017/06/11 19:50
「大体、君はどうして武器を持っていないんだ?」
「丸腰でこの施設に侵入してくるとは……まったく……コソ泥ながら、哀れだよ」
2017/06/11 19:54

「誰も傷つけるつもりはない。ただ、俺は……俺たちは、普通になりたいだけなんだよ!!!」
2017/06/11 20:00
警備隊の包囲網がいよいよイクを捕らえようとする。
2017/06/11 21:41
「たすけて……」
2017/06/11 20:04
・8P
全裸のカルナがフラつきながら、何処からかやってくる。
2017/06/11 20:04
「なっ!? どうしてココにカルナが!!」
「彼女を捕まえろ!! 彼女だけは逃がしてはならん!」
2017/06/11 20:13
警備隊の目がカルナに向く。
2017/06/11 20:14
(よし……警備隊の注意がそれている今のうちに!)
2017/06/11 20:14
イク、薬の入ったバッグをしっかりと抱きしめ、足にグッと力を入れる。
警備隊の間をすり抜け、走り出す。
2017/06/11 20:15
「助けて……」
2017/06/11 20:16
・9P
イクの足が止まる。
2017/06/11 20:16
(逃げるなら今だ……今しかない……)
(……戻れば、捕まる。でも……)
「ここで見捨てたら、俺が人じゃなくなっちまうだろうがッ!」
2017/06/11 20:17
イク、来た道を戻り、カルナのもとへ。
カルナを抱きかかえる。
2017/06/11 20:30
「大丈夫か!?」
2017/06/11 20:30
「あなたは……」
2017/06/11 20:31
「皆にはイクって呼ばれてる」
「ここから一緒に逃げるんだ!」
2017/06/11 20:40
「イク……」
2017/06/11 20:41
カルナ、フッと意識を失う。
イク、カルナの身体を抱きかかえる。
2017/06/11 20:41
「おい!大丈夫か!!」
「どうしたんだよ、突然……」
2017/06/11 20:42
・10P
再び、警備隊、有馬に包囲されるイクとカルナ。
2017/06/11 20:43
「貴様、彼女をどうするつもりだ?」
「まさか連れ逃げようなどとは考えてないだろうな?」
「そうであれば、容赦はせんぞ」
2017/06/11 20:53
(クソっ……どうすれば……)
2017/06/11 21:02
ドクン、ドクン。
イクは、自分に向けられた銃口をみて、自分の鼓動の高鳴りを感じる。
イクの眼の瞳孔が極限まで広がる。
セリフを挿入

警備隊の間にわずかにすり抜けられるルートのシュミレーション図が、イクの脳内に描かれる。

2017/06/11 20:49
(見える!ここに居る人間の呼吸や動きが手に取るように見える!)
(これなら逃げ切れる!)
2017/06/11 20:51
・11P 
イク、カルナをお姫様抱っこし、
警備員の隊列のわずかな隙間を驚異的な素早さで走り抜ける。
2017/06/11 21:02
「うおぉぉ!」
2017/06/11 21:15
「逃がすな! 殺しても構わん!」
「撃てッ!」
2017/06/11 21:05
「しかし、もし彼女に当たったら……」
2017/06/11 21:06
「気にするな! カルナはオリジナルだ」
「何があっても逃がすな!」
2017/06/11 21:06
「ハッ!」
2017/06/11 21:07
警備隊、一斉にイク達を目がけて銃撃を開始する。
ギリギリのところで躱すイク。
2017/06/11 21:07
・12P
イクの頬を銃弾がかすり、血が流れる。
イクの血がカルナの唇に垂れる。
と、カルナの髪の一束が白髪に変わる。
2017/06/11 21:09
「もう逃げ場はないぞ!」
「おとなしくしろ!」
2017/06/11 21:16
イク、窓際に追いやられる。
イク、窓の外をチラッと見る。
10階下に地面が見える。
イク、冷や汗を垂らしながらも、ニヤッと笑う。
2017/06/11 21:17
「撃てるもんなら撃ってみろよ!」
「俺は死なない。何があろうと。まだ、俺の心臓が”生きたい”って叫んでるからよぉ!」
2017/06/11 21:23
「ならば、殺すまで!」
「死んだあと、薬とその女を回収させてもらう」
2017/06/11 21:25
・13P
警備隊が発砲する。
イク、銃弾をかわす。
銃弾はイクの背後の窓を粉々に砕く。
2017/06/11 21:26
「貴様、正気か!?」
「この高さから飛び降りて助かるわけが……」
2017/06/11 21:27
「それはどうかな」
「まだ俺に死神からのラブコールは聞こえねぇ!」
2017/06/11 21:29
・14P
イク、窓の外にダイブ。
2017/06/11 21:32
「うおぉぉぉ!」
2017/06/11 21:33
イク、カルナを抱きかかえて、豪速で落下していく。
地面が近づく。
イク、外壁の出っ張りを蹴り、ジグザグに飛び降りる。
2017/06/11 21:33
・15P
無事、地面に着地する。
イクの眼が元通りになる。
2017/06/11 21:37
「ふぅ……生きてる……」
2017/06/11 21:47
イク、抱きかかえたカルナの露になった胸を見て、赤面する。
イク、カルナに自分の服をかける。
イク、ビルを見上げる。
2017/06/11 21:46
(どうして追ってこないんだ……)
2017/06/11 21:36
イク、小首を傾げながら、ビルから離れていく。
2017/06/11 21:36
・16P
ビルの割れた窓際。
2017/06/11 21:50
「な、何だ貴様は……一体、何なんだ……」
2017/06/11 21:52
有馬たちの前に、体長3Mほどの黒い影が立っている。
手には大きな鎌が握られている。
鎌が振り下ろされ、壁に血が飛び散る。
(第一話、次に続きます)
2017/06/11 22:01
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登場人物紹介

イク 18歳
不死になれない少年。

カルナ
施設から抜け出してきた少女。(不老不死)

ヤヨイ 27歳
スラム街の町医者。イクの母親代わり。

有馬 140歳(見た目50代)
不老不死研究をするSK社の役員

死神
不老不死を殺せる謎の存在。

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