詩小説『待ちぼうけが染まるよ』 3分でほっこり 夫婦へ 

エピソード文字数 949文字

待ちぼうけが染まるよ―hatukaichi―

待ちぼうけ、待ちぼうけ。
染まるよ、染まるよ。

窓辺に寄り添わせるはふるぼけた椅子。腰掛ければ、夕焼けが染め抜く小さな地球を眺めて。私を切なくさせる待ちぼうけを今日の夕日が焦がすけど。

うんとお腹をすかせてきて欲しい。あなたが肩を落とすのなら、私は腕を掴んで頭をもたれる。落とす前にすくい上げるから。

けん玉公園の赤い帽子をくぐり抜け、蒼いすべり台から生れ落ちる。夕焼けの空には飛行機雲をかけて、夕日が沈むのを待たずして星を散りばめる。

右側の皿を寝かして、赤い球を乗せてみるの。何度も、何度も転げ落ち、ほつれた糸を手繰り寄せ、ようやく皿に乗った恋。

きっとあの公園で遊んだ子供の頃から、ずっとあなたに待ちぼうけしていた。100年後に待ち合わせをして、その100年後にあなたはやってきて。100年の待ちぼうけ。

待ちくたびれたとしかめ面の私の第一声を待たずして、待たせることなくくるんで欲しい。
もう、何本目の煙草だろうか。リップが吸殻を赤く染めるけど、煙といっしょに消えるけど、この口からため息が零れる前に。

子供の頃から思っている。街の灯りは空に浮かぶ星の数ほどあるのだけど、あの灯りの数だけ名前も知らない物語。それならば、あなたと私もその星のひとつ。名前もつけない物語を灯し続けているのだ。

病む時も、健やかな時も、歩くのをやめた時も、最後のひとときも、気軽な冗句が途切れませんように。
無駄に不安になるけども、無駄に心配してるけども、無駄に悪い夢を見るけども、無駄なものなどないのだと思えたなら、無駄の苦さも美味のスパイスとなり私に意味をくれるから。横顔から零れた笑顔を信じるのみだから。

膝を精一杯曲げて、勢い良く球を浮かせて、ようやく乗った恋だから。もう二度と皿から落ちませんように。
あなたの居ないこの家に差し込む夕焼けは私に元気をくれるから。

玄関に座り込み革靴を脱ぐ、いつもの愛おしい背中が。今日も話したいことは山ほどあるが、「遅かったね」の一言もあるが、なにより早く冷えた手をあなたの首筋にひっつけて驚かせるの。

待ちくたびれた待ちぼうけが終わるよ。今日の夕日が地球の裏側へと沈むよ。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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