第1話 初めまして

文字数 501文字

初めまして……お父さん
実の親子なのに初めましてか

変な挨拶かもしれないが仕方ないことだ。

まぁ、まだ1歳にもなっていなかったもんな
だって、私の記憶にこの人の姿は微塵もない。
あんなに小さかった鈴音がもう20歳だなんて……
にしては色々と小さいな
余計なお世話です

ごめん。

どう扱っていいか困ってつい……

だとしても最悪です。

母がどうしてもって言うから来ましたけど、帰りたくなりました

すいませんでした
ちょっ! 

反省するのはいいですけど人目を気にしてください

通行人が何事かと目を向けている。

えー? 俺たち親子に見えない?
見えません。

それに見えたとしても、大人が頭を下げていたら目に付きます

ごめんごめん。

じゃぁ、恋人同士に見えるのかな?

 
あまり調子に乗っているとパパって呼びますよ?
それは勘弁して。

間違ってはいないけど、昨今の情勢を考えるとね。

俺はどう思われてもいいけど、鈴音がそんな風に見られるのは嫌だし

だったら普通にしてください
今更、あなたに立派な父親を求めたりしません
 
そうだよな。

はは、それじゃ行こうか

 

目に見えて落ち込まれてしまったが、この男の所為で母が苦労してきたのだと思うと優しくなれる気がしなかった。



 

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