プロット

文字数 1,905文字

(起)
 16世紀、インドのポルトガル植民地、ゴア。
 イエズス教会で孤児として暮らす、少年ダミアンは12歳。黒髪で東洋人的な顔をしている。
 明るい性格だが、他の子供はポルトガル人が多く、孤立しがち。
 いつも「ここではないどこかへ行きたい」と思っている。友達の前で「僕のお父さんはインドの王様だ」と嘘をついてしまう。

 ルイス・フロイスは頭が良くて、ちょっと苦手なお兄さん。
「またいじめられたのか、ダミアン」
「しょうがないよ。僕だけインド人だから」
 ふてくされてそっぽを向いた時、意外な答えが。
「君は、インド人じゃない。お父さんは日本人で、お母さんはポルトガル人だよ」

 びっくりするダミアン。ルイスが言うには、かつてゴアの町が海賊に襲われたとき、ダミアンの父は戦いの最前線に立ち、人々を守ったそうだ。
「君のお父さんは日本のサムライだ。誇り高い勇者だったよ」

 ルイスは、これからその日本へ布教に行くという。
「ほんと? 僕も連れてって」
「駄目だ。子供には危険すぎる」
 それでも反対を押し切って船に乗る。
 こんなにワクワクしたことはない。剣の代わりに聖書と十字架をたずさえて、僕も信仰の覇者(コンキスタドール)になってやる。
 さあ行くぞ。冒険の始まりだ!

(承)
 戦国期の日本、ヨコシウラ(横瀬浦・長崎県西海市)に到着。大歓迎を受ける。
 キリシタンの子供と仲良くなる。やっぱりお父さんの国。楽しい国だ。
 ダミアンが話すポルトガル語が、なぜかどんどん日本語になっていく。「おんぶ」「じょうろ」「コップ」……。

 敵である異教徒は多いが、まずはこの町を攻略だ。ちょっとずつ味方を作っていくぞ。
 と思っていたら、教会を守ってくれていたお殿様(大村純忠(ドン・バルトロメウ))が死んじゃった! 炎に包まれるヨコシウラ。敵が攻めてくる。大変だ、逃げなくちゃ。
 ルイスがダミアンをかばってくれる。
「先に船に乗れ、ダミアン!」

 ところがルイスは敵に捕まり、ダミアンは自分のせいでルイスが死んだと思って泣く。
「日本なんて来るんじゃなかった。悪魔の国だ」
 だけどお殿様もルイスも無事だった。ダミアンはようやく覚悟を決める。
「どんなに敵が恐ろしくても、僕は負けずに戦うぞ」

 タクシマ(度島)、フィランド(平戸)、フナイ(豊後府内)。順調にキリシタンが増えていく。
 やがて九州最強の大名、大友宗麟に出会う。本物のコンキスタドールだ。怖いけど、僕たちには優しいぞ?
「お父さんも、こういう人だったのかな」

 修道士アルメイダは医師でもあり、フナイに日本最初の病院を作っていた。
「貧しい人々を助けることも、デウス様の愛の教えなんだよ」
 すごいな。この人も立派なコンキスタドールだ。

 病院を手伝う日本人少女マリアと、ほのかな恋。
 九州を離れたくないけど、僕たちはこの国を悪魔の手から救うために来たんだ。やっぱり都へ行かなくちゃならない。

(転)
 瀬戸内海を東へ向かう旅。
 サカイ(堺)は商人の自治の国。九州では見たことがないような、豪華な屋敷がいっぱいだ。
 ディオゴ(日比屋了珪)は、商いのコンキスタドール。着物の上にマントをまとい、大勢の手下を使っている。大金持ちだから、教会に莫大な寄進をしてくれる。

 自分の将来について、思いを巡らせるダミアン。
「僕はルイスと同じ聖職者の道を行くと思ってた。でも、医師も商人もかっこいいな」

 オオザカ(大坂)は、悪魔が支配する暗黒世界。大魔王ケンニョ(顕如)が人々の自由を奪い、悪魔の使いモント(門徒・一向宗信者)が町の隅々にまで目を光らせている。
 ダミアン達が見つかれば、処刑は間違いない。
「イエス様と同じように、(はりつけ)にされるぞ」
 だけど都へ行くには、どうしてもここを通過しなければならない。

「変装して、夜の間に通り抜けよう」
 しかし最悪のタイミングで火災が起きる。
 僧兵たちの目が光る。大坂を出られなくなり、一行に最大の危機が襲い掛かる。
 
 助けてくれたのは、何と敵であるはずのモント、弥左衛門と息子の熊吉だった!
「遠い国から来てくれたあんたらが、悪い人であるはずがあれへん」

 命がけで守ってくれるモントの姿に、ダミアンもルイスも感銘を受ける。
 脱出が成功したとき、固い友情で結ばれるダミアンと熊吉。お互いの幸せを、それぞれのやり方で祈る。僕はオオザカのことを一生忘れない。
「違う神様を信じていても、僕たちずっと友達だよね」

(結)
 大雪の中、川をさかのぼる。
 夜が明けると、はるか彼方に霞たなびく京の都。ついにここへやってきた!
 どんな困難をも覚悟するダミアン。
 デウス様が僕に与えた使命は、まだよく分からない。それでも。
「僕はもう逃げない。今ここで生きるんだ」

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