第1話 私は何でしょう

文字数 995文字

 私は良く人に見られる方かな。全く見ない人もいるが。私のことをお堅い者という人もいる。一方で軟性に富んだ者とも言われる。私には二種類の私がいて最近新しい方の私に人気が出ている。
 私は真面目君で努力家なのだ。眠ることも忘れてコツコツと仕事を続けている。一度、仕事場に立つとジッとしている。色々な人達が私達を見て行く。中にはある私だけを目指している人もいる。けれど、良いことだ。人々の喜怒哀楽がとても素敵だ。特に私と二人きりの時は素直に感情を露わにしてくれる。子供達の人生の支えになっている時が一番嬉しいな。
 いつも籠り切りの私のは中々わからないけど、子供の世界はとても複雑だ。カースト制度というのがあって皆が皆楽しそうな訳じゃない。そんな時は私に頼って欲しいな。
 会社員の人達にも何か出来たらなあって思う。社会人は汗水垂らして毎日疲れた様に見える。特にご時世がご時世だからかな。そんな時、休日のふとした時間に私と触れ合って下さい。何か得られるかも知れませんし、心動かされるかも知れません。でも、もしかしたら何も得るものがないかも知れません。でも、気にしないで下さい。人生は無駄なものが多くてその無駄の中に和みや潤いが出来ていくのですから。
 主婦や主夫の方々にも読んで欲しいな。彼女達の知識はすごいんですよ。私と一緒にいて多くのことを勉強します。彼らの勤勉さを私も真似なくては。
 最後にお年寄りの方々にも読んで欲しいな。齢を取ると中々旅にも出掛けられませんし、そんな時は私を笑いネタとして盛り上がって欲しいかな。もし、旅に出られる人がいたら私を連れて行って欲しい。私は勉強家で世界のことをいっぱい学びたいです。そして私と一緒にいる方々にこう感じて頂きたいのです。

「時よ、止まれ。お前は美しい」  

 そう言って満足して頂ければ冥利に尽きます。
 さてさて、もう私のことはお判りなさったかと思います。

 そうです。私は「本」です。呼び方は「本」さんでも「本」ちゃんでもお好きな様に。
 近頃は世相が暗い世の中ですよね。そんな時、青春時代に読んだ私を見つけて下さい。困った時は一番最初の地点に戻ってみてみると何か発見があるかも知れませんよ? 
 それでは、皆様、おせっかいな「本」からのメッセージは以上です。
 お目通し、ありがとうございます。
 
                             -了-
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