第5話 出会い の続き
文字数 783文字
翌日、なんとなく気になって、またあの藪の中の池のところに行ってみた。あの変なやつはいなかった。水の中の卵はそのままで、辺りはしんとしていて、時おりグラウンドから聞こえる声が、よけいにその静けさを深めているように思われた。
「ま、毎日こんなとこにいるわけないか」
そう独りごちながらグラウンドのほうへと足を向け直したとき、いつの間にか、何の気配もないまますぐそばに立っていた誰かと鉢合わせしそうになり、どきりとして飛び上がった。
「びっくりしたぁ? びっくりしたねぇ? ごめんねぇ」
そんなこっちの反応を見て、宥めるように、歌うようにそう言ったのは、昨日のあいつだった。みっともなく驚いたことが気まずくて、わざと何事もなかったかのように尋ねてみた。
「なんだ、いたのか。何してたんだ?」
「雲を見てた、ずっと見てた」
「クモ? カエルの次はクモ?」
「虫のぉクモはかわいいねぇ、でも見てたのはぁ、空の雲。同じクモって名前はなんで? 虫のクモは空の雲から来るのかな?」
「いや、違うと思うけど」
「じゃあどこから来るの?」
「さあ」
「知らないの? じゃ、ほんとに雲から来るかもねぇ。雲からクモが~」
言うなり開いたノート? スケッチブック? に何かを描き始めた。何だろう? 覗き込むと、銀色の縁の雲から降りてくる灰色のクモ。
まるで魔法のようだった。あっという間に、たくさんの色が次々と白い紙の上に重ねられていく。無造作なようでいて、いや、むしろそれだからこそか、惹きつけられる風景が紙の上に生まれた。
「すごいな、お前!」
そう声をかけたけれど、もう夢中になって猛スピードで何枚も描きなぐり続けるあいつには、どうやら届いてないみたいだった。何かに集中し出すと、他のことが意識に上らなくなるらしい。変わってる、と思った。
「ま、毎日こんなとこにいるわけないか」
そう独りごちながらグラウンドのほうへと足を向け直したとき、いつの間にか、何の気配もないまますぐそばに立っていた誰かと鉢合わせしそうになり、どきりとして飛び上がった。
「びっくりしたぁ? びっくりしたねぇ? ごめんねぇ」
そんなこっちの反応を見て、宥めるように、歌うようにそう言ったのは、昨日のあいつだった。みっともなく驚いたことが気まずくて、わざと何事もなかったかのように尋ねてみた。
「なんだ、いたのか。何してたんだ?」
「雲を見てた、ずっと見てた」
「クモ? カエルの次はクモ?」
「虫のぉクモはかわいいねぇ、でも見てたのはぁ、空の雲。同じクモって名前はなんで? 虫のクモは空の雲から来るのかな?」
「いや、違うと思うけど」
「じゃあどこから来るの?」
「さあ」
「知らないの? じゃ、ほんとに雲から来るかもねぇ。雲からクモが~」
言うなり開いたノート? スケッチブック? に何かを描き始めた。何だろう? 覗き込むと、銀色の縁の雲から降りてくる灰色のクモ。
まるで魔法のようだった。あっという間に、たくさんの色が次々と白い紙の上に重ねられていく。無造作なようでいて、いや、むしろそれだからこそか、惹きつけられる風景が紙の上に生まれた。
「すごいな、お前!」
そう声をかけたけれど、もう夢中になって猛スピードで何枚も描きなぐり続けるあいつには、どうやら届いてないみたいだった。何かに集中し出すと、他のことが意識に上らなくなるらしい。変わってる、と思った。