第5話
文字数 1,895文字
「おう、アザレアか。帰ったようだな。」
「パパ。ただいま。」
「服を買ってやったようだな。ありがとう。」
「いいのよ。これぐらい。」
「今日はコイツを風呂に入れようと思う。しかし、わたしは忙しく、お前は女だ。ということで、セレスタを呼ぼうと思う。」
セレスタ?誰だそいつ。
「なあ、セレスタって誰だ?」
「この家のバトラーよ。元々孤児だったの。」
「そいつ男ってことか。はーん。」
「セレスタは結構強いわよ。歯向かわないことね。」
「そいつの出方次第だ。誰についてくかは俺が決める。」
「まあ、いいわ。別に悪い人じゃないわよ。何というか、ちょっと機械みたい?というか。」
「機械?」
「会ってみればわかるわ。」
機械みたいな男?想像もつかないな。
でも俺と同じような孤児だったんだろ。
もしかしたら気が合うかもしれないよな。
「おお、来たなセレスタ。コイツの世話を頼む。汚く、薄汚れて悪臭も漂うから、まずは風呂から頼む。」
「風呂に入れるのですね。承知しました。」
「服は用意してあるからな。」
「はい。」
セレスタと呼ばれる青年は、髪型はおかっぱで、機敏に動く、20代後半ぐらいで、細身の男だった。
「私は今日から君の監視役兼、教育係になった。セレスタと申します。どうぞよろしく。」
「ほーん、セレスタね。よろしく。」
「お前、口の聞き方って奴を知らないのか?」
「口の聞き方ぁ?そんなの知らねーよ。俺はな、元々盗賊だぞ。わかるわけねーだろ。」
「なら身体で覚えるしかないな。すまない。」
そう語ると、拳を心の顔面に叩きつけた。
「ッツ!てめえ、やんのか?」
心は徐にナイフを取り出すと、セレスタに突き付ける。
「心、やめなさい!」
「お嬢様、大丈夫ですよ。」
セレスタは長い脚を使って、心の足を蹴り上げた。
「ぐっ!」
「おやおや可哀想に。本当は大して戦闘経験もなく、ろくなものも食べれてないから背も低く、筋肉もない。体幹もないからすぐ崩れる。」
「でも、動物的な本能だけは残っている。負け犬みたいな人生の癖に、夢だけ観てる。愚かだねえ。」
「ナイフは危ないから預かっておくよ。」
なんだよコイツ、クソ野郎じゃんか。
クソ、負けた。
「お嬢様。今この子供のことを心と呼んでいましたね。どうしてでしょう。」
「私が付けた名前よ。心を大切にしてほしいからってつけたの。」
「ほう。心か。この獣のような子供には合わないと思うがな。」
ジェファーソンが語る。
「でも名前が無いなんてあんまりよ。」
「そうだな。心という名前で私達も呼ぶとしよう。」
心は、セレスタの迎撃を受けて、蹲っていた。
クソッ。痛い。
監視?教育?どういうことだ。
「おい、立てるか?」
セレスタが手を差し伸べる。
「……」
心は無言でその手をとった。
「今からお前を風呂に入れてやる。服を脱げ。」
心はボロボロの布切れを脱いだ。
「お前…」
腕には無数の切り傷があり、背中には火傷が自然治癒したようなケロイド。
彼の残酷な半生が刻まれたような身体だった。
「腕は最近切ったからな。痛むから、水を当てたくない。」
「そのままだと不衛生だ。洗うべきだ。」
「…………」
「さあ、風呂場へ行くぞ。」
「俺の身体、汚いだろ。」
「ああ。今まで色んな裸を観てきたが、一番汚い身体だ。」
「へへっ。俺は虐められたり、盗まれたり、殴られたり、慣れてるからな。腹が減って眠れないとか、自傷した傷が痛むとか、よくある話だ。」
「背も低いし体つきもガリガリだな。ろくに食べてこなかったんだろ。」
「奴隷やったあとに孤児だったからな。なんとか盗んで、逃げて、裏切って、陥れて生きていたんだ。お前にはわかるかよ。」
「俺だって孤児だった。俺は母親が淫売でな。俺には無関心な母親で、与えられることはほとんどなかった。」
「7歳の頃に殺されそうになって、家から逃げ出して、路上で生活するようになった。」
「へえ。でも俺のほうが不幸だね。俺なんて端金で売られたんだぞ。元々食べるものなんて無くていつも泣いて、殴られてたような家だったけどな。」
「そうか。逃亡奴隷ということか?」
「よく知らないけど、俺は命懸けで逃げたから、そうなんじゃないのか。」
「お前、馬鹿なんだな。逃亡奴隷ってのは指名手配されている。今まで何の人間関係も無かったらしいから、問題は無かったが、これからは違う。私達はその気になればお前のその身体を明け渡すことだって出来るんだ。」
「…」
しまった。そんなこと知らなかった。
軽はずみに喋りすぎた。コイツは教育係?で友達では無いってことを忘れていた。
「まあいい。俺の言うことを聞け。さもなくば奴隷にしてやる。」
「くっ…」
こうして俺は、アザレアたちの家に、教育されることになった。
「パパ。ただいま。」
「服を買ってやったようだな。ありがとう。」
「いいのよ。これぐらい。」
「今日はコイツを風呂に入れようと思う。しかし、わたしは忙しく、お前は女だ。ということで、セレスタを呼ぼうと思う。」
セレスタ?誰だそいつ。
「なあ、セレスタって誰だ?」
「この家のバトラーよ。元々孤児だったの。」
「そいつ男ってことか。はーん。」
「セレスタは結構強いわよ。歯向かわないことね。」
「そいつの出方次第だ。誰についてくかは俺が決める。」
「まあ、いいわ。別に悪い人じゃないわよ。何というか、ちょっと機械みたい?というか。」
「機械?」
「会ってみればわかるわ。」
機械みたいな男?想像もつかないな。
でも俺と同じような孤児だったんだろ。
もしかしたら気が合うかもしれないよな。
「おお、来たなセレスタ。コイツの世話を頼む。汚く、薄汚れて悪臭も漂うから、まずは風呂から頼む。」
「風呂に入れるのですね。承知しました。」
「服は用意してあるからな。」
「はい。」
セレスタと呼ばれる青年は、髪型はおかっぱで、機敏に動く、20代後半ぐらいで、細身の男だった。
「私は今日から君の監視役兼、教育係になった。セレスタと申します。どうぞよろしく。」
「ほーん、セレスタね。よろしく。」
「お前、口の聞き方って奴を知らないのか?」
「口の聞き方ぁ?そんなの知らねーよ。俺はな、元々盗賊だぞ。わかるわけねーだろ。」
「なら身体で覚えるしかないな。すまない。」
そう語ると、拳を心の顔面に叩きつけた。
「ッツ!てめえ、やんのか?」
心は徐にナイフを取り出すと、セレスタに突き付ける。
「心、やめなさい!」
「お嬢様、大丈夫ですよ。」
セレスタは長い脚を使って、心の足を蹴り上げた。
「ぐっ!」
「おやおや可哀想に。本当は大して戦闘経験もなく、ろくなものも食べれてないから背も低く、筋肉もない。体幹もないからすぐ崩れる。」
「でも、動物的な本能だけは残っている。負け犬みたいな人生の癖に、夢だけ観てる。愚かだねえ。」
「ナイフは危ないから預かっておくよ。」
なんだよコイツ、クソ野郎じゃんか。
クソ、負けた。
「お嬢様。今この子供のことを心と呼んでいましたね。どうしてでしょう。」
「私が付けた名前よ。心を大切にしてほしいからってつけたの。」
「ほう。心か。この獣のような子供には合わないと思うがな。」
ジェファーソンが語る。
「でも名前が無いなんてあんまりよ。」
「そうだな。心という名前で私達も呼ぶとしよう。」
心は、セレスタの迎撃を受けて、蹲っていた。
クソッ。痛い。
監視?教育?どういうことだ。
「おい、立てるか?」
セレスタが手を差し伸べる。
「……」
心は無言でその手をとった。
「今からお前を風呂に入れてやる。服を脱げ。」
心はボロボロの布切れを脱いだ。
「お前…」
腕には無数の切り傷があり、背中には火傷が自然治癒したようなケロイド。
彼の残酷な半生が刻まれたような身体だった。
「腕は最近切ったからな。痛むから、水を当てたくない。」
「そのままだと不衛生だ。洗うべきだ。」
「…………」
「さあ、風呂場へ行くぞ。」
「俺の身体、汚いだろ。」
「ああ。今まで色んな裸を観てきたが、一番汚い身体だ。」
「へへっ。俺は虐められたり、盗まれたり、殴られたり、慣れてるからな。腹が減って眠れないとか、自傷した傷が痛むとか、よくある話だ。」
「背も低いし体つきもガリガリだな。ろくに食べてこなかったんだろ。」
「奴隷やったあとに孤児だったからな。なんとか盗んで、逃げて、裏切って、陥れて生きていたんだ。お前にはわかるかよ。」
「俺だって孤児だった。俺は母親が淫売でな。俺には無関心な母親で、与えられることはほとんどなかった。」
「7歳の頃に殺されそうになって、家から逃げ出して、路上で生活するようになった。」
「へえ。でも俺のほうが不幸だね。俺なんて端金で売られたんだぞ。元々食べるものなんて無くていつも泣いて、殴られてたような家だったけどな。」
「そうか。逃亡奴隷ということか?」
「よく知らないけど、俺は命懸けで逃げたから、そうなんじゃないのか。」
「お前、馬鹿なんだな。逃亡奴隷ってのは指名手配されている。今まで何の人間関係も無かったらしいから、問題は無かったが、これからは違う。私達はその気になればお前のその身体を明け渡すことだって出来るんだ。」
「…」
しまった。そんなこと知らなかった。
軽はずみに喋りすぎた。コイツは教育係?で友達では無いってことを忘れていた。
「まあいい。俺の言うことを聞け。さもなくば奴隷にしてやる。」
「くっ…」
こうして俺は、アザレアたちの家に、教育されることになった。