第51話  染谷龍一視点  決意  3

エピソード文字数 3,155文字

  ※



 虎率いるヴァルハラメンバーが竜王を発見した。

 場所は地元。喫茶店からそう離れていない場所だと言う。


 ここからバイクで十分ほどか。だが夕方であるこの時間は車が多く、信号待ちが更にイライラさせる。夜中だったら平気で信号無視するんだが、そういう訳にもいかん。 


お~。何だその壁紙はよぉ。姫にくびったけじゃねーか!
 バイクの後ろに乗ってる王二朗は、バイクホルダーに付けたスマホの画面を見て「ほらみろ」と言わんばかりと人をおちょくったような言い方をしてくるのはいいのだが、
マジでこの人、めんこいなぁ~。よくこんな写メをゲットしたな。国宝級だぞ
俺には色々と入手ルートがあるんだよ

しっかし……この楓蓮さんはマジで可愛い。

アルティメット楓蓮さんすぎて、見た瞬間鼻血出ちまったからな。

 おっと。雑念が入っちまった。今はこんな話をしている場合ではない。

 牛丼屋を出てから虎からの連絡は無く若干不安になるが、上手くやっている事を祈るのみだ。


 後もう少しで目的地に到着すると思うと、ここからは一切の私情を封印しなければならない。



 ふうっと息を吐いて戦闘体勢へと心を落ち着かせ、喫茶店の前を通り過ぎ、虎が指定する場所までやってきた。

 商店街の外れにある寂れた肉屋付近じゃなかったっけ?

どこにいるんだ?
 周りを見渡しても誰もいない。とりあえず路肩にバイクを止めてエンジンを切ると、その瞬間虎の怒号が聞こえてきた。
あっちだ!


 声がする方向へを走ろうとしたその時、俺達の前にバイクが急停止した。

 ポリじゃねーか!


 見た瞬間に顔が引きつっちまったが、信号無視もしなければメットも被ってる。

 何も悪い事はしていない。そう思ったが……

【警察官 巡査 26歳】

ちょっと待ちなさい。君。君だよ!

う、うほっ?

【警察官 巡査 33歳】

なんて極悪な顔なんだ……

ちょっとお話を聞きたいんだが。

ぼ、僕は通りすがりのゴリ……もとい。人間です。

【警察官 巡査 33歳】

身分証明書持ってる? 確認させてもらえますか?

だぁぁ~~っくそ! こんな場面でポリンチーの職質だと!


そんな場合じゃねぇっ!

お、おいっ!

 王二朗は警察官の制止も聞かず、突然走り出したのだ。

あとで行くっ! だぁ~~~~ックソったれぇ!

【警察官 巡査 33歳】

ああっ! こらっ! 待ちなさい!

おいっ。応援を呼べっ!

【警察官 巡査 26歳】

了解です!

あんな極悪顔……100人くらい殺してそうだ……

 そして俺の前には誰も居なくなった。
あいつ。どれだけ極悪面なんだよ。

 ってかそんな場合じゃねぇ。さっさと行かねば。

 王二朗は俺に気を使ったのか、声のしない方向へと逃げていったからな。

 

 再び虎の咆哮が聞こえる。

 こりゃ尾行がバレて、やりあってる最中なのか?


 すぐに向かうとこじんまりとした公園の前でヴァルハラメンバーがスファルトに転がり悶えていた。

ううっ……あっ! 隊長っ!

 こりゃひでぇ。ウチの兵隊達がボッコボコだわ。

 流血してる奴や、顔面クシャって悶える奴など、既に壊滅状態であった。

あ? またきやがったのか?
兄者ぁ! 気をつけろ! こいつ。マジ強ぇ!



 丸三日かけて構築した竜王包囲網だが、まさか地元で見つかるとは。


 こんな事なら、遠征なんてやらなきゃ良かったぜ。


 さっさとブチのめして、こんなクエストクリアーせねば。

 

 ※



よお、にーちゃん。会いたかったぜ。

ふははっ。こんなに早く見つかるとは……こりゃ龍姉ぇに褒美を貰えるぜ。

ん? よく見ればこいつ……高校のチャラ男じゃねーか。
は? お前、山田一家と関係あんの?

俺のねーちゃんだよ。

さて、お前をボコって龍姉ぇの前に差し出すとするか。

 入れ替わりリミットが迫っている。

 あとセーフティータイムは二十分ほどか。


 とはいえ、リミットから百分経過してる分、若干脳内にノイズが走ってて万全とは言えないが、この程度ならまだ余裕。しかし……



 すぐに分かるわ。こいつは強いって。

 久しぶりに燃えてきたぜ。

なぁチャラ男。お前もさ、喫茶店の女の子に夢中でこんなことやってんの?
龍姉の命令だ。喫茶店の連中に群がるくっそ汚いハエを叩き潰せってな

ふははっ! もしかしてハエって俺のこと? 

お前以外にいねーだろ? さっさと始めようぜ

ひでーなお前。こう見えても、お前よりはモテるぜ。

ってことは、お前はハエ以下だろ。ふははっ

 時間がねーからさっさと終わらせてやる。

 

 俺が踏み込むなり構える竜王。だがさっきと同じ爽やか笑顔。それプラスニヤケ成分が混じり出した。

まぁでも……俺からすりゃ。てめーも雑魚だわ。

山田一家も大したことねーな。

 その瞬間、飛んできた竜王のハイキックは宙を舞い、俺がすかさず懐に飛び込もうとすると、バックステップで距離を置いた。
腰を据えて前かがみの姿勢。こりゃ柔道?
おっと。今の蹴りでさ、てめーのチーム全員死んだんだけど。やるね

そっか。まぁあいつらはただのモブだからな。

倒しても何の自慢にもならねーし、経験値入んねーから。

ははっ。そー答えるとは思わなかったぜ。こー言うときってケンカ相手の文句は全否定するのが普通じゃね? そりゃいくらなんでもチームの奴らが報われないぞ。擁護してやれよ

 今度は竜王が踏み込んできての蹴りの応酬に、ガードしながら一旦下がろうとする――と見せかけての回し蹴りを放つと、竜王は瞬時に回避した。


 そのまま追撃に持っていこうとするが、距離を開けての蹴りの応酬に再び一旦下がる。


 なげー足だなおい。近寄れねぇ。


 だが……一発一発は大したことねーな。こりゃ受けきれる。

だけど。喫茶店の連中の為にここまでやるって事は、あの中にチャラ男の片思いの人でもいるんだろうな~
ふふっ。つーか。友人が狙われてるって聞いたら、守るっていうのが男なんじゃねーのか?

いいねお前。実に男らしい!

そーいうカッコイイ奴。叩き潰すの大好きなんだよ

 俺がじわじわ接近すると、つっ立ったままの姿勢から瞬時に蹴りが飛んでくる。


 今度は今までのよりも数段早く、ガードしたものの強烈な一撃だった。


 こいつは危険だ。モロに入ったら一気に逝かれる。

友人ね……っつーことは。あのピンクの髪の子か? あの子も相当可愛いよな? うん。可愛い。その辺に落ちてたら間違いなく持って帰るレベルだな
 こいつ……余計なことばっかり喋りやがって。

まぁでも。一番良いのは楓蓮ちゃんだな。てめーのチームも全員「姫」とか叫びやがるから爆笑だったぜ。まぁその気持ちも分からんでもない美しさだけどさ。


欲しいなぁ……あの子

こんの……クソ野郎が!

 一気に竜王へ襲い掛かると、後ろに引こうともせず、真っ向から蹴り込んでくるが、俺はガードしながら懐に入った。


 竜王のフックを額部分に食らうと同時に頬辺りを殴りつける。

 そこからつかみ合いに発展した瞬間、勝利を確信した。




 奥襟を掴む間に数発食らうが、俺の好きな内股の態勢になると、そこから一気に投げ飛ばす――はずだったが……

 その瞬間、ありえない腕力で俺の腕を取り払った竜王は、態勢を崩し倒れこんだ。

 すかさずマウントを取ろうとした。だがその時には既に後方に逃げられてしまう。


 くそっ! 腕を取って完全に入ったと思ったのに……

 あそこから逃げられただと? 翔兄ぃみたいな馬鹿力しやがって。

あっぶねーなおい。死んだと思ったぜ

柔道ボーイっぽいな。乱闘になったらまずい。

ふぅ……俺もお前が死んだと思ったんだが。
しかも……相当ケンカ慣れしてんのか、一々冷静だなこいつ

そ~いう奴には、精神的に揺さぶるのが一番。やっぱりチャラ男も楓蓮ちゃんラブっぽいな。

まぁあの子は……別格だし、周りも可愛い子ばかりだけど、その中でも一人ぶっ飛んだ可愛さだからな。


てめー如きには勿体無いねーよ。

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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