第二三話 バニースーツの物語
文字数 2,647文字
ひとまず資金繰りを凌ぐためにも、お店に足を運んでくれる個人さんへの販売を強化していきましょう。戦士さんが接客マニュアルを作ってくれましたし、それをしっかりこなしつつ、新しい方法も採り入れていかなくちゃなりませんね。
それじゃハレンチな店だろう。というか細々としたことを指摘するようだが、バニースーツも意外と高いんだよな。勇者が着てるウサミミバンドや網タイツまで含めて、一式で1万6500Gもしたんだぞ。だからバニースーツを進化させるっていうのなら、新しく発注するんじゃなくて、できることなら自分で裁縫することも考えてみてくれよ。
そうとも言えない。たぶんカジノみたいな場所でしか使われないから、需要があんまりないというのが大きいんだろう。それに発注するときも、勇者の身体をちゃんとデザイナーが計りにきたりとか、意外と特注品の要素が大きかったんだよな。革製防具は既製のサイズで大量に作ればいいけど、バニースーツは一着ごとのオーダーメイドだ。
たかがバニースーツ、されどバニースーツか。商売してる観点から見ると、なかなか面白いもんだなぁ。そういやバニースーツを扱う業者が、勇者のバストが大きすぎるせいで、ちょっと特殊な縫い合わせをしたとか言ってたよ。
私のジャッジガベルはたしかに大きく見えるけど、聖鉄製だけに案外軽いのよ。妙に威力が高いときがあるのは、武器の重さが影響してるわけじゃなくって、打撃するときに私の魔力を聖鉄に思い切り込めた場合ね。ウルツァイト鉱石だって、ロンズデーライト鉱石だって粉々に砕けるわ。その気になれば大地だって割れるかも。
たぶん僧侶さんの本気の一撃は、私の聖剣グランドグレイドよりも遥かに強力なんだと思います。ちゃんと比べたわけじゃないですけど、一緒に戦ってて、モンスターさんの大軍に囲まれたり、奇襲を受けたりしたときの僧侶さんの防戦ぶりが強すぎるって毎回驚かされますもん。最後あたりはいつも、グレイトドラゴンさんとか鉄巨人兵さんとか、本当なら圧倒的に強いはずのモンスターさんが我を忘れて泣きながら逃げていきますし……。
勇者も世界有数の戦闘技術の持ち主だが、たしかに僧侶はそれに輪をかけて群を抜いている感じがするよな。単体に対する打撃力はもちろん、乱戦での掃討力、臨機応変に対応できる各種の攻防魔法、ドラゴンゾンビ複数体を同時に使役できる無尽蔵な魔力、敵を一瞬で異次元宇宙に消し飛ばすという古代神聖魔法……。攻撃させれば敵が炎上、守らせれば敵が勝手に砕けるほど鉄壁。国家間戦争すら一人でこなせそうな……。訓練された2000の兵士を有する王国軍だって一人で滅ぼしかねん。
灯台もと暗し、本当の魔王はそばにいましたってかぁ?
それにしても、勇者と僧侶の、この2人の無双ぶりは何なんだよ。とくに僧侶は色々とアレ……。アタシだって魔法界では百年に一人の逸材とか勝手に異名付けられるほどそれなりのはずで、だから魔法協会を代表して勇者の遠征に最初に加わったわけだが……これじゃ、ただの荷物持ちじゃねーか。
フフ、そこまで言われると困っちゃうな。何ならもっと言ってくれていいのよ。たしかに私ってなかなかの美少女かもしれないわよね。なんなら勇者のバニースーツに対抗して、『ドリームアームズ』の広告塔として水着でも着てあげようかしら。戦闘技術なんて飾りみたいなものなのよ。
国際美少女コンテストあたりに出て優勝してあげてもいいのよ。世界一を決めるには容姿だけでなく、知識や魔力まで評価対象になるから、私なら軽く優勝するのは当然よね。
……あっ、そうよ! 優勝して、私が作ったブランドを広めれば……すごい、歴史に残る美少女として知れ渡るんじゃないかしら……。肖像画を残しておかなきゃ、まだまだ若い今のうちに……。