後日談〜チョコを渡すならどんなチョコ?!

文字数 2,223文字

これは、バレンタインの呪縛から解き放された後日談です。


【中川の場合】

「お!これ!手作り?!」

6人に可愛いラッピンクを手渡しながら、中川は笑った。

「手作りって程じゃないっしょ?!シリアルクランチだしぃ〜?」

「いや、昨日の今日でサクッと作ってくるあたり、すげーな、お前……。」

「それほどでもぉ〜。」

「ありがとうございます。中川さん。」

「どういたましてぇ〜。」

「にしても……なぁ…。」

「うん……。明らかに……ねぇ…。」

6人全員が手作りチョコをもらったのだが、明らかに奥田のものだけ、何か違う。
受け取った本人も動揺している。

「な、中川…さん?!何か俺だけ違うんだけど?!」

「サービスだよぉ〜!!」

「サービス?!」

「だって、和泉も小笠原も他の子からもらってるけどぉ〜??奥田はお母さんからしかもらってないじゃん??」

「サクッと急所をぶっ刺すの……やめて……。」

「だからぁ〜、ラッピングして余ったの、全部突っ込んだ!!」

そう、明らかに奥田のものだけ大きかった。
ニコニコと笑う中川。
複雑な表情の奥田。

「質より量っしょ!!」

「あ、うん……ありがとう……中川……。」

「いいって事よぉ〜!!」

そんな二人のやり取りを他の四人は遠い目で眺める。

「いい子なんだけどね……中川……。」

「ああ……。」

「良かれと思ってですからね…。」

「家庭的だし、いいっつやいいんだけどよぉ……。大雑把なんだよなぁ〜、アイツ……。」






【狭山の場合】

「あ、あの!良かったらこれ…!!」

めちゃくちゃテンパりながら、狭山は皆にチョコを配った。
そのチョコというのがまた狭山らしく「いつもお世話になっています」という熨斗のついたチョコだった。
おそらく会社などで配る用の目的で作られたものだろうけれど、それをチョイスしてきて配るあたり狭山らしいなと皆、笑顔になった。

「ありがとぉ〜!!狭山ぁ〜。めっちゃ嬉しい〜!!」

「そんな!大したものじゃないですし。」

「いや、こういう心遣いが嬉しいっていうか、ね。」

「ありがとうな、狭山。」

皆にお礼を言われ、アワアワしながらも嬉しそうな狭山。
そこにダンッと誰かが音を立てた。
顔を向けると、和泉が不機嫌そうに立っている。
やべっと狭山に構いすぎた他の4人は口を閉した。

「あ…和泉君……。ごめんなさい…つまらないもので……。」

しかし和泉の不機嫌な理由に気づかない狭山は、申し訳なさそうに謝る。
和泉はばつが悪そうに頭を掻いてそっぽを向いた。

「別につまんなくねぇけど……。ただ……。」

「ただ??」

「手作りしねぇの?狭山??」

いやいや、手作りは強要するもんじゃないだろう?!
昨日までのバレンタインボイコット計画は何だったんだよ?!お前?!と他の4人は心の中で突っ込む。

「すみません…時間もなかったですし、手作りできるほど上手でないので……。」

「なら……来年に期待してもいいか?狭山??」

「へっ?!私ですか?!」

「おう、狭山の。」

「…………来年…。」

「じゃあ来年予約な?狭山の手作りチョコ??」

そう言って、いたずらっ子のようにニッと笑う和泉。
悔しいが、和泉はイケメンだ。
真性のイケメンだ。
その無自覚キラースマイルに、さすがの狭山もポンっと赤くなった。

「が、頑張ります……。」

「おう、期待してる。」

そして小さな狭山の頭をぽんぽんと撫でる。
それを他の4人は音を立てないようにして、燃え尽きたように眺めていた。

「……イケメンって…。」

「あれって無自覚なのかなぁ〜??」

「さぁな。」

「あれができるのに長々告れない和泉って……。」

イケメンとは謎の多い生き物である。








【飯田の場合】

「ではこれからチョコ配りま〜す。一人3個までで〜す。」

そう言って、大箱のトリフの箱を開けた。
わらわら集まってきて、6人は昨日禁じられていたそれを味わう。

「うっま!!チョコ、うっま!!」

「美味しい〜!!やっぱチョコがないと始まらないよねぇ〜!!」

「ありがとうございます。飯田さん。」

「うぅ、禁じられていた分、旨すぎる…。」

皆が喜んでくれたのを見て、飯田も嬉しそうに笑う。
そして自分の分のチョコを口に放り込んだ。

「あ〜。食べればなくなるのは当たり前なんだけど…なくなるともっと食べたくなるよね……。」

名残惜しくて思わず呟く。
するとそれを聞いていた小笠原が顔を上げた。

「なら、もう一つ食うか??」

「え??」

見るとどうやら小笠原は先に3つ取って、弁当箱の蓋の上に置いていたらしく、最後の一個を残した状態だった。

「いや!いいって!!」

「構わないぞ?俺、そこまで甘いものに拘らないし。」

「でも……。」

「ほら、遠慮するな!らしくないな?!」

小笠原はそう言うと。何でもない事のようにチョコをつまみ上げ、飯田の顔の前に突き出した。

真っ赤になる飯田。
色々察して空気に同化する他4名。

「ほら!食えって!!溶けてくるだろうが!!」

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

真っ赤になった飯田の口にチョコレートが押し込まれる。
飯田はもぐもぐした後、思いっきり小笠原の頭を引っぱたいた。
そして慌てて教室を飛び出していく。

「痛っ?!何すんだ?!……って飯田?!」

ぽかんとそれを見送る小笠原。
中川と狭山が慌てたように飯田を追いかけた。

「……え??どういう事だ??」

「小笠原……お前、それ、素でやったのかよ……。」

「お前ってウンチクは詳しいけど、何かちょっと足らないよな……色々……。」

小笠原の肩を、和泉と奥田はぽんぽんと叩いたのだった。



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