第1話

文字数 286文字

窓の外に満月が浮かぶ。
「綺麗だね」
彼は側に臥している妻に語りかける。答えはない。彼女は何年も眠ったままなのだ。
妻に初めて会ったのは結婚式の時だった。あざやかな花嫁衣装に身を包んだ彼女はまさに仙女だった。
名門家の令嬢で才色兼備と評判の彼女。それに引き換え、自分は‥。そう思うと彼は気恥ずかしくなってしまった。
それゆえ、彼は妻を避けるようになった。別に嫌いなわけではない。ただ彼女に不釣り合いに思えたのだ。
ある日彼は決心した。妻に相応しい配偶者になろうと。
その矢先に事件により彼女は寝たきりになってしまった。だが、彼は妻が目を覚ますまで待つつもりだ。その時まで日々精進しよう。

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