【西方怪談8】 ✿ 夜に呑まれた子ども

文字数 1,094文字

カリコボウズを追って、森へ駆け出した少年、末吉。


けれどもいつのまにか、忠平や友達とはぐれてしまった。

ここはどこやろう…。暗くて、よう見えん。


さっきまでお月さんが出とったとに、雲に隠れてしまった…

グルルル…

獣の声だ。


末吉が逃げ出すと、獣も背後から迫ってきた。

助けて! 誰か…助けて。う、うわぁ!?

坂に気付かず、斜面をゴロゴロ転がり、茂みにつっこんだ。

あいたたた…

傾斜がなだらかであったのが幸いだった。


けれど傷ついた手足が痛み、茂みの中で末吉は身体を丸めた。

グルルル…グルル…

坂をくだってきた獣は、あたりをきょろきょろ。


茂みにいる末吉を見つけられず、あきらめてどこかへ移動した。

助かった。でも、これからどうしよう…
暗い森で、右も左も分からず途方に暮れていると。
ホイホイ
今の声は…
ホイ、ホイホイ
か、カリコボウズや…
末吉は声の聞こえた方へ、恐る恐る近づいた。

あれぇ? 聞こえなくなった。


確かに、こっちから声がしたとに…

ホイ
え? 今度はこっちから?
末吉は引き寄せられるように、声の聞こえた方へまた歩き出した。
末吉さーん!!
まっちゃーん、どこだ?
どうしよう、見つからん…
森の中をさまよい、金太との待ち合せ場所に向かう。
すまん、先生…。見つけられなかった

私たちも、足跡一つ…。


末吉さんの身になにかあったらと思うと…

先生はなにも悪くねぇって。


勝手について来たおまえたちが悪いんだぞ!

だって…

どうか怒らないでください。


金太さん、少しの間、子どもたちをお願いできますか?

ああ、かまわねぇよ

皆さん、ここから決して動かないでください。


私は上から探します

軽く地面を蹴り、樹の枝へ上がった。


枝を渡り、はるか頭上へ行く。

すげぇ、先生!


一気にあんな高いところまでのぼっちまった!

まるで天狗さんだ!

大したもんだぜ、本当に。


鞍馬天狗も、ビックリだろうぜ

地上から離れた忠平は、樹から樹へと跳び、末吉を探す。

月明かりで、見通しが利く。


…ん?

忠平は、地面を見つめたまま、ふいに立ち止まった。
樹の上人影が、地面に…)

近くの樹に「誰か」が潜んでいるのだ。

こちらを見ている。まさか山神カリコボウズ? これは…)

忠平は手裏剣を飛ばす。


相手は不意を突かれ、慌てて避けた。

神に(あら)
忠平はムササビのように宙を飛び、相手の頭上を取った。

参考資料


夜話 かりこぼう:米良風土記1中武雅周 著/鉱脈社2017年5月

今回のお話は、夜話「狭上峠のおとも」から発想しました。本当の昔話では、夜、神楽の練習に向かう青年の身を案じて、カリコボウズ送り迎えをしたという心温まるお話です。

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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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