さいはてまで、いくじなし。

文字数 318文字

あの子は稚い声であのひとに迫る。胸元のフリルを押しつけるようにして体を密着させてから、あまったるい表情をする。
あたしの低身長は武器だと思うの。
あの子の言っていたことばがふとリフレインした。確かにわたしはあのひとに恋焦がれているけれど、そんなふうに迫ることもできなければ、熱っぽいかおをしてあのひとのごつごした手をそっと握る度胸もない。
だから、悔しくない。だいじょうぶ。
どうしても固く握りしめてしまう両手をやっとパーにして、は、と息をつく。
ふとあのひとと目が合うと、わたしは目を瞑るようにして笑顔をつくった。
瞑る前のあのひと目は、猜疑心を熔かしたような目をしていた、ような気がする。

やっぱり、心臓が震えるように痛くなった。
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