第118話 坂田さんへ  1

文字数 2,729文字

 聖奈が帰った後も、親父達の宴会は続く。

 まぁ今日一日は好きなようにやらせるとして、明日からちゃんとしてもらおうか。


 

 そして夕方。

 俺やミユマユは喫茶店のバイトがあるので、凛やももまろは親父達に任せた。


頼んだわよ。ミユマユ! 喫茶店をお願いねっ!
まぁいっか。ママが居ててもいなくても一緒だし。

じゃあ行ってきます。

親父。今の内にももまろと仲良くやってろよ。

よし! 任せておけ。

ももちゃ~ん。まろちゃ~ん。仲良くしようぜ。

ワァウ!

 親父が手を差し伸べると、警戒しまくるももまろ。

 慌てて華凛の所まで逃げてくると、その後ろから吠えまくってやがる。

ちょっともも。まろ! 大丈夫だよ。

怖くないからね。僕のお父さんなんだよ。


ふふっ。必死な麗華さんもこれまた面白いですな。

しょ~がねーな。そんなお前らにはおっぱい見せてやる。ど~ん!
こらこら。やめろよそういうの!
おい麗華。犬よりも平八が死んだぞ。
あはっ。平八オジサマってほんと、おっぱいに弱いのでし。

あなたたちも平ちゃんに頼みごとがあるなら、おっぱい見せればイチコロなんだから。

それがコイツの正しい使い方なのだわっ!

 散々な言われような平八さんだが、どこかしら幸せそうな表情を浮かべ気を失っていた。


 さて、そろそろ行かないと、じいじ一人だけじゃ開店準備も忙しいだろうしな。

おお、戻ってきたかいの。

ママはまだウチの親父と飲んでます。

なのでちょっと早めに来ました。

すまんのー。まぁ麻莉奈がおってもおらんでも一緒じゃがな。


 じいじにまでもアテにされていないママ。

 まぁ、一緒に仕事してたら皆そう言うだろう。


 本来なら日曜日は休みだが、隔週で店を開けるって言ってたからな。

 商売繁盛なら、じいじや白竹家も安泰だし、別に一日増えようが構わない。

よ~し。今日もいっぱい頑張るのですっ!

今日は、龍子さんも紫苑さんも休みね。

なんとかなるかな。

坂田さんも慣れてきたし、大丈夫っしょ。

魔優は状況に応じて、厨房ヘルプ頼んだぜ。

 開店準備を始めてると、いつもより早く坂田さんが出勤する。

 いつも開店してからやってくるのだが、今日は早いな。

おはよございま~~す!

もうお店の前に行列出来てましたよ。

(ちょ。まだ五時半だろ?)
おねーさま人気は凄いですねぇ。
ですです! 楓蓮さんファンはいっぱいですもんねっ
は、はい……ですよね……
坂田さん……

坂田さん……

誰が見ても、その気持ちは明らか。

 

 ※



 本日の喫茶店も盛況だった。

 いつもこのペースで来られるのもキツイ。特に紫苑さんや龍子さんが休みになると、接客組の負担が重くなる。

 

 だがこの楓蓮。逆境には強い。

 そう自分で思ってるので、接客マスターになるべく縦横無尽に動きまくった。


何とか一日終わりましたね。

坂田さん。フォロー助かりましたよ。


いえいえ。おねーさま無茶苦茶動きますよね。

何だか踊ってるみたいに、クルクル回りながらだし、すっごいです!

 最後の客も見送り閉店すると、掃除の時間となる。

 最近では手馴れてしまった為、九時二十分には掃除も終わり、十時まではお喋りタイムとなっていた。

 丸テーブルを囲んで座っているのはミキマユに坂田さんだな。


 掃除も終わり俺もその輪の中に入ると、坂田さんは思い出したように「あっ」と声を上げると、やや顔を赤らめながらこんな事を話し始めた。

あの~。魔樹くんや美優ちゃんにご質問なんですけど……

 そう改まって言われると、焦ってしまうよな。

 一瞬魔優と目を合わせるが、坂田さんが喋り出したので向き直る。

えっと、バ、バンドとかに興味はございませんか?
バンド?

うんうん! 私、一応軽音部だったりするんですが、部員がいなくって……

ほ、ほら、魔樹くんや美優ちゃんだったら歌も上手いし、ど。どうかな~って思って。

 おおっ! それはいい考えですね。

 ミキマユがボーカルとか、ベストチョイスすぎでしょ。


 間違いなく評価されるだろうし、有名になれるんじゃないか?

 

んまっ。面白そうですっ!
いいですねぇ。美優ちゃんも魔樹くんもすっごい声出るし、ピアノもできますしね。
でも、僕達バイトがあるからあまり時間が取れないかもですけど……

いえいえ、その辺は白竹さん家の都合に合わせますし、週に1度くらいの集まりでも私は満足ですしおすし。

それに紫苑先輩もギターやってるし、一緒にやってくれると思うんです。

 いい話だとは思うが、そうなると……今以上に坂田さんとは接点を持つことになる。


 それはミキマユも分かってるようで、笑顔ながらも迷っている、そんな風に思えた。

お母さんに聞いてみます。良かったら私もやってみたいです。

うんうん! そうしましょう。

わた……僕はそういうのにちょいと憧れがありまして……やってみたかったんです!

わぁ! 嬉しいです! 是非ともやりましょう!

やった……

魔樹くん……私。本当に嬉しい。

……別にバンドをやるのは構わないし、むしろ私もそういう活動はしてみたかった。

だけど、その前に……私はあなたに重要な事を話さないといけない。

魔優……

 あの顔見てりゃ分かる。

 そして再び目が合うと、その間、三秒ほどじっと見つめられる。


 その意味はすぐに分かった。

 魔優はきっと、坂田さんにカミングアウトするつもりなんだろうと。

楓蓮さん……
分かった。俺はお前に賛同する。
え?

ん? 楓蓮おねーさま?

 このタイミングでしかありえない。

 これ以上先延ばしにするという事は、坂田さんにとっても俺達にとっても良い結果にはならない。

このタイミングがベスト。今日は紫苑さんや龍子さんもいないし。

これ以上先延ばしにはできない。


本当は綾ちゃんにもいて欲しかったけど……

ここは私が上手くやる!

魔優……

美樹ちゃん。大丈夫です。坂田さんならきっと、

俺達の事を分かってくれる。

え? な、なに?

おれ?

 家族や俺達しか知らない名前で呼ぶと、魔優は少しだけ息を漏らしてから坂田さんに向き直る。

もう引き返せない……

ここで、ここで言わないと。

坂田さん。ちょっとお話があります。

私達のこと。聞いてほしい。

 魔優はそこまで言うと、一度テーブルに視線を落とした。

 

 そしてこちらを覗き込み、再び顔を上げる。が……

みゅ~ちゃん。ど、どしたの? そんな改まって……

え? みんな……なに?

お、おねーさま? 魔樹くん……

魔優……
楓蓮さん……

 そう言いながら魔優は再び下を向いてしまった。

 土壇場になって怖くなっちまったパターンなのか?

 

 こちらを向くが、目を合わせようとしない魔優。

 即座に俺は立ち上がり、震える腕を取った。

分かった。俺に任せてくれ。

楓蓮さん……

大丈夫ですよ。

坂田さんならきっと……俺達のことをきっと分かってくれる。

…………
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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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