勝負

文字数 429文字

ヂリリリと今日も開戦ベルのように目覚ましがなる。

財前秀秋(14)が重い足取りで居間に向かうと、既に盤前には父の財前一郎(45)、その横に審判役の伯母・財前富子(59)が座って待っていた。

「おはよう、秀秋」
「……おはよ」

素っ気なく返し、席につく。
出来れば毎朝勝負なんかしたくない。だが逃亡して体が張り裂けた人の姿を幼い頃に秀秋は見たことがあったので文句は言えなかった。

「では……始めて下さい」

伯母の一言で、パチリ、パチリと石を置いてはひっくり返す。

十分もすれば決着はついた。

「今日は……僕の勝ちだね」
「うむ」

秀秋がボソッと呟くと、一郎も静かに頷く。

「一郎、今日は気をつけてね」

伯母がそう声をかけると、一郎は「……子供でも殴っていくか」と真顔で返す。
端から見れば道理的に間違っているが、一族的にはこれで合っていた。

「じゃあ、僕も準備して行ってきます」
「……学校は爆破予告があったらしいから休校だぞ」
「うん……」

悪い嘘を聞き流しながら、秀秋は準備のために離席した。

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