寄道

文字数 739文字

街に到着したラファエルは、物陰で身につけていたマントを脱いだ。朝早くとはいえ活気のある街並みは通りの人出が多く、透明化した状態で歩くのは困難だったからである。ひょいと通りにでたラファエルは、周囲に異常はないかきょろきょろと探し始めた。と思いきや、

「うわぁ……!」

早速諸々に目移りし始めていた。もちろんラファエル率いる第六師団は諜報を担う関係上、ラファエル自身も色々な街へは行っており、本部に近いこの街もなんども訪れている。しかしこの時間はいつもなら書類に目を通したり報告を聞いたりしている時間なので、朝早くの街の活気を目にするのはこれが初めてだったのである。朝早くということで昼間とは異なる爽やかな空気感があり、中には昼間とは異なる出店を出している店もいる。ラファエルはニコニコしながら街の散策、もとい捜索をしていくのであった。






一方その頃、天軍本部ではカプシーヌが深いため息をついていた。
天軍本部内を駆け巡ってきた妖精たちから「ラファエルは見つからなかった」と報告を受けたのである。カプシーヌ自身も探してみたもののラファエルは見つからず、またその姿を見た者も見つからなかった。
これはだいぶ時間が掛かりそうだと悟ったカプシーヌは、妖精たちには引き続き範囲を拡大した上で創作してもらいつつ、自分はひとまずラファエルの予定を見直すことにした。

「えぇと、午後のこの会議はずらせないから、これを後回しにして……この話はまだ時間に余裕があるから明日に回して……うぅ……」

普段から色々振り回されていることもあり、もともと予定は余裕を持って組んではいた。いたのだが、流石に早朝から行方不明になるのはカプシーヌにとっても想定外。いつも以上に頭を悩ませながら、カプシーヌは調整をつづけるのであった。
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