捜索
文字数 2,424文字
街に着いたカプシーヌは、同行した第四師団員と別れたのち再び風の妖精を呼び出しラファエルを探し始めた。街の大通りはすでに往来が多く、あちこちから呼び込みの声が聞こえてきた。カプシーヌはあたりを見回しながら歩いていたが、横を向いていた隙に魔族の男とぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
「良いって良いって。お嬢ちゃんの方こそ大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、ならよかった。次からは気をつけなよ?」
そう言って魔族の男は颯爽と立ち去っていった。どうやら連れがいたようだ。
「ったくお前は何をやっとるか」
「すまんな爺さん、許してくれよ——」
そんな二人組を尻目にカプシーヌも再び歩き出そうとしたところ、足元に地図が落ちていることに気がついた。中心部を囲うようにいくつもの点が書いてある。先程ぶつかった魔族の落とし物だろうか。カプシーヌは後ろを振り返るが、もうその魔族の姿は見当たらなかった。
書いてある点は魔族の行き先なのだろうか?仮にそうだとすると、その場所に行けば再び会って地図を返せるかもしれない。そう考えたカプシーヌは魔族の言った方向にあるもっとも近い点まで行こうとした。その時、一匹の妖精が戻ってきて、カプシーヌを真逆の路地裏の方に連れて行った。
「え、ちょっと、どこにつれてくの?」
妖精に連れられた先は路地裏の物置のような場所であった。先導した妖精はその奥の物陰付近で妖精がくるくる飛び回った。カプシーヌが覗き込んでみると、そこには魔法陣が一つ設置してあった。馴染み深い風の加護で封じられており、ひとまずは問題がなさそうである。
「この風……もしかして、ラファエル様が?」
もし事前にこの魔法陣について何かを察知していたのであれば、それに対処するために街にやってきた、という説明はつく。まさか……とは思いながらも、カプシーヌはひとまず状況を第四師団の面々に伝えることにした。現在地を確認するために先ほど拾った地図を確認すると、カプシーヌはあることに気がついた。
「あれ、この場所に点が付いている……?」
周囲を見渡すが魔法陣以外に特筆すべきものはなく、あの魔族の姿も見当たらない。これは一体……?カプシーヌは首を傾げるが、そうこうしているうちに風の妖精が第四師団員を一人連れてきた。魔法陣と地図の点のことを伝えると、師団員は
「ラファエル様の加護もありますし、ここは大丈夫でしょう。それより地図の点が気になりますね。ちょっと最寄りの地点を見てきましょうか」
と言いながら颯爽とかけていった。カプシーヌが慌てて追いかけていくと、少し先の細い路地で師団員がかがみこんでいた。その視線の先をカプシーヌも覗き込んだ。
「魔法陣がここにも……」
「おそらく他の地点にも同様に魔法陣があると見てよいでしょう。まだこれから設置するところもあるかもしれませんが」
「でも、そうだとすると街が大変なことに……」
カプシーヌは手元の地図を確認する。そこには町の中心を囲うように点が配置されている。この全ての点に魔法陣があり、その全てからミアズマが生じるとした場合、街は間違いなく混乱に陥るだろう。
「その地図を落としたと言う魔族には何か見た目の特徴はあったりしませんか?」
「それがあんまり覚えていなくて……会えばわかるとは思うんですけど……」
「そうですか。でしたらひとまず我々で各点を押さえておきましょうか」
「そうですね。他の団員の方々にも状況を伝えておきますね」
そういいながらカプシーヌは妖精たちを呼び寄せ、各地に散らばった師団員たちの元へと急がせた。その間に師団員は魔法陣に簡易的な結界を施し、最悪の事態へと備えていた。
一方、ラファエルはひとまず設置された魔法陣を捜索していた。あてがない二人組を探すよりも確実に事態の収拾に繋げられると判断したためである。路地裏を中心に捜索したところ、同じような魔法陣がいくつか見つかった。
「ここにもひとつっと。えいっ」
見つけた魔法陣には一つ一つ防護を施していくが、あくまで対処療法でしかないのは事実。いつ起動するか分からない状況でラファエルは焦りを感じ始めた。しかも発見した位置を見るあたり、どうやら魔法陣は街の中心を大きく囲うように設置されているようである。もし一斉に起動されたら街中が混乱に陥るのは避けられないだろう。
「せめて場所さえわかればなぁ……うーん……」
そうはいってもわからないものは仕方がない。あてもなくあちこち走り回っていたところ、ふと見覚えのある妖精が追い抜いていった。
「あ、あれってもしかしてカプシーヌのかな?おーい」
妖精は突然声をかけられてびっくりしたようだが、ラファエルだと気づくと勢いよく近寄ってきた。
「どうしたの?もしかして僕を探してた?」
ニシシと笑いながらラファエルも近寄ったが、妖精はラファエルの周りを一周するとそのまま来た方向へと戻っていった。
「え、ちょっと、どうしたの?」
ラファエルは困惑し妖精の行方を目で追った。しかし少し進んだところで妖精はラファエルの方をむき静止した。ラファエルの様子を伺っているようにも見える。よくわからないがとりあえずついていってみよう、とラファエルは妖精の方へと向かっていった。それを確認した妖精はラファエルを先導する形で路地を進んでいった。
妖精が連れていった先にはラファエルが探していた魔法陣があった。しかしラファエルは一つ疑問を抱いた。
「あれ、さっき通った時にはここにはなかったはずだけど……」
見落としはなかったはず、とラファエルは考える。確かに漏れ出す魔力は弱いが、ラファエルが感じにくいと思うほどではない。そうなると、ラファエルの通り過ぎた後に魔法陣が設置された……?もしそうだとすると、すぐそばに仕掛けた張本人がいるはず。通ってきた路地は一本道で、その間誰ともすれ違わなかった。ならばもう通りまで出ていったのだろうか?すぐさまラファエルは近くの通りへと飛び出していった。
「あ、すみません!」
「良いって良いって。お嬢ちゃんの方こそ大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、ならよかった。次からは気をつけなよ?」
そう言って魔族の男は颯爽と立ち去っていった。どうやら連れがいたようだ。
「ったくお前は何をやっとるか」
「すまんな爺さん、許してくれよ——」
そんな二人組を尻目にカプシーヌも再び歩き出そうとしたところ、足元に地図が落ちていることに気がついた。中心部を囲うようにいくつもの点が書いてある。先程ぶつかった魔族の落とし物だろうか。カプシーヌは後ろを振り返るが、もうその魔族の姿は見当たらなかった。
書いてある点は魔族の行き先なのだろうか?仮にそうだとすると、その場所に行けば再び会って地図を返せるかもしれない。そう考えたカプシーヌは魔族の言った方向にあるもっとも近い点まで行こうとした。その時、一匹の妖精が戻ってきて、カプシーヌを真逆の路地裏の方に連れて行った。
「え、ちょっと、どこにつれてくの?」
妖精に連れられた先は路地裏の物置のような場所であった。先導した妖精はその奥の物陰付近で妖精がくるくる飛び回った。カプシーヌが覗き込んでみると、そこには魔法陣が一つ設置してあった。馴染み深い風の加護で封じられており、ひとまずは問題がなさそうである。
「この風……もしかして、ラファエル様が?」
もし事前にこの魔法陣について何かを察知していたのであれば、それに対処するために街にやってきた、という説明はつく。まさか……とは思いながらも、カプシーヌはひとまず状況を第四師団の面々に伝えることにした。現在地を確認するために先ほど拾った地図を確認すると、カプシーヌはあることに気がついた。
「あれ、この場所に点が付いている……?」
周囲を見渡すが魔法陣以外に特筆すべきものはなく、あの魔族の姿も見当たらない。これは一体……?カプシーヌは首を傾げるが、そうこうしているうちに風の妖精が第四師団員を一人連れてきた。魔法陣と地図の点のことを伝えると、師団員は
「ラファエル様の加護もありますし、ここは大丈夫でしょう。それより地図の点が気になりますね。ちょっと最寄りの地点を見てきましょうか」
と言いながら颯爽とかけていった。カプシーヌが慌てて追いかけていくと、少し先の細い路地で師団員がかがみこんでいた。その視線の先をカプシーヌも覗き込んだ。
「魔法陣がここにも……」
「おそらく他の地点にも同様に魔法陣があると見てよいでしょう。まだこれから設置するところもあるかもしれませんが」
「でも、そうだとすると街が大変なことに……」
カプシーヌは手元の地図を確認する。そこには町の中心を囲うように点が配置されている。この全ての点に魔法陣があり、その全てからミアズマが生じるとした場合、街は間違いなく混乱に陥るだろう。
「その地図を落としたと言う魔族には何か見た目の特徴はあったりしませんか?」
「それがあんまり覚えていなくて……会えばわかるとは思うんですけど……」
「そうですか。でしたらひとまず我々で各点を押さえておきましょうか」
「そうですね。他の団員の方々にも状況を伝えておきますね」
そういいながらカプシーヌは妖精たちを呼び寄せ、各地に散らばった師団員たちの元へと急がせた。その間に師団員は魔法陣に簡易的な結界を施し、最悪の事態へと備えていた。
一方、ラファエルはひとまず設置された魔法陣を捜索していた。あてがない二人組を探すよりも確実に事態の収拾に繋げられると判断したためである。路地裏を中心に捜索したところ、同じような魔法陣がいくつか見つかった。
「ここにもひとつっと。えいっ」
見つけた魔法陣には一つ一つ防護を施していくが、あくまで対処療法でしかないのは事実。いつ起動するか分からない状況でラファエルは焦りを感じ始めた。しかも発見した位置を見るあたり、どうやら魔法陣は街の中心を大きく囲うように設置されているようである。もし一斉に起動されたら街中が混乱に陥るのは避けられないだろう。
「せめて場所さえわかればなぁ……うーん……」
そうはいってもわからないものは仕方がない。あてもなくあちこち走り回っていたところ、ふと見覚えのある妖精が追い抜いていった。
「あ、あれってもしかしてカプシーヌのかな?おーい」
妖精は突然声をかけられてびっくりしたようだが、ラファエルだと気づくと勢いよく近寄ってきた。
「どうしたの?もしかして僕を探してた?」
ニシシと笑いながらラファエルも近寄ったが、妖精はラファエルの周りを一周するとそのまま来た方向へと戻っていった。
「え、ちょっと、どうしたの?」
ラファエルは困惑し妖精の行方を目で追った。しかし少し進んだところで妖精はラファエルの方をむき静止した。ラファエルの様子を伺っているようにも見える。よくわからないがとりあえずついていってみよう、とラファエルは妖精の方へと向かっていった。それを確認した妖精はラファエルを先導する形で路地を進んでいった。
妖精が連れていった先にはラファエルが探していた魔法陣があった。しかしラファエルは一つ疑問を抱いた。
「あれ、さっき通った時にはここにはなかったはずだけど……」
見落としはなかったはず、とラファエルは考える。確かに漏れ出す魔力は弱いが、ラファエルが感じにくいと思うほどではない。そうなると、ラファエルの通り過ぎた後に魔法陣が設置された……?もしそうだとすると、すぐそばに仕掛けた張本人がいるはず。通ってきた路地は一本道で、その間誰ともすれ違わなかった。ならばもう通りまで出ていったのだろうか?すぐさまラファエルは近くの通りへと飛び出していった。