第4話(6)

エピソード文字数 1,968文字

「かはっ……! シンっ、なにをしますの……っ!」
「この剣がなければ、封印はできない。詰まる所、ガレを解き放てるのですよ」

 後方に跳んだ先輩は、バックステップを用いて更に後退。彼は俺達から充分に距離を取り、その地点で薄笑いを浮かべた。

「アンタっ、封印を解く気なのか!? なんのためにこんなことするんだよ!」
「ふふ。人類の王、になるためですよ」

 花丘せんぱ――いや。花丘の笑みに、狂気が含まれた。

「僕は――シンではなく、花丘真治はですね。誰もが逆らえない存在に、なりたかったのですよ」

 ヤツはそのように語り、自身の胸に手を当ててる。

「小学5年の頃、からでしょうか。指図されたり怒られたりするのが、非常に不愉快になりました。そういう事が起きるたびに、『なぜこの僕が』と感じるようになりました。だから、ガレと契約を結んだのですよ」
「けいやく、ですって……? 何をしましたのっ!」
「封印を解く代わりに、この星を支配して僕に譲る。彼と、そう約束を交わしたのですよ」

 っ、なんてこった。例の覚醒をずらす作戦は、コイツに成功。この男に悪心が生まれ、ミラルを裏切ってたのか……!

「バカなマネは止めなさいっ、キミは利用されていますのよ! アイツは復活したら、ゲームを始めてキミを殺しますわ!」
「『そんなことはしないよ~。ボクと彼は友~』。ガレがそう、テレパシーを送ってくれましたよ」
「なっ! アイツは封印の力で、せいぜい監視しか出来ないはずですのに……!」
「千年近く経てば、少なからず綻びが生まれます。会話できないと、約束だって出来ないでしょう?」

 花丘は嘲笑を浮かべ、「この際なので、全てお教えしましょう」と続けた。

「明け方に覚醒した、アレは真っ赤な嘘です。僕は、昨日――水曜日の昼に記憶と魔力を取り戻し、ガレに声をかけられましたよ」
「き、きのう……。そんなに前から、目覚めてましたの……っ」
「僕は即刻奪おうとしたのですが、校内に化け物級の生き物がいると教わりましてね。必ず奪える機会を探っていたのですよ」

 一昨日の夕方に敵襲があって、その時麗平さんに身分を明かした。ガレはミラルを監視し続けていたのだから、バレるわな……!

「日時を偽ったのは長く話したいからではなく、傍に英雄が居ない状態で会えるようにする為。僕はとっくに、戦友と再会していたのですよ」
「……ああ、そういうことか……。あの違和感の正体は、それかよ」

 もし自分が千年ぶりに仲間と会えるようになったら、昼休みまで待てない。俺はその不自然な行動に、気付きかけていたんだ。

「シン……! キミは――」
「おっと、長居をすると化け物さん達が戻ってきますね。そうなると台無しになってしまうので、僕はこれにて失礼しますよ」

 コイツは、予め逃走の用意をしていたのだろう。英雄クラスじゃないのにすぐ魔法陣が現れ、ヤツの姿は消えた。

「くっそ、妙なイベントを増やしやがって……! 至急寒上さんを呼んで、アイツの位置を把握しないとっ」
「……色紙クン、それはできませんの。魔力で捕捉するのは無理なんですわ」

 シズナがいる体育倉庫へ行こうとしていたら、肩を掴まれた。
 英雄達以外は魔力で探れるのに、無理? どういうことだ……?

「ウチらの武器には一つ特殊能力があって、大剣ラミーのソレは『無感知(むかんち)』。剣の持ち主は、気配、殺気、武器が生む風圧すらも完全に消せるんですわ」
「ああもうっ、また逆ご都合主義かよ……っ。なんでそんなのが宿ってるんだ……!」
「大きな剣に、そういう異能があるとは思えない。そこを突いているんですわ」

 ぁぁ、得心した。確実に悪を滅するための工夫なのか。

「『無感知』は、どんな魔法でも破れませんの。今日中どころか、下手をすれば一生見つかりませんわ……」
「すると、七時までには取り返せない。……ラーだけで、封印はできないんだよね?」
「不可能、ですわね。力が半減して、儀式を執り行えませんわ」

 そう、だよな。あの野郎が一本奪って逃げたんだから、そうなるよな。

「と、いうことはだ。この星は……」
「そうですわ。ガレを倒さない限り、滅んでしまいます」
「っっっ」

 これまで何度もピンチになったが、今回は最大級。生まれて初めて、視界が回転する錯覚に襲われる。

「色紙、クン……。どう、しましょう……」
「どうするって。考える、しかないよ」

 考えて、考えて。打倒できる方法を見つけ出すしかないだろう。

「…………こりゃ、呑気に授業を受けてる場合じゃないな。シズナ達を連れてウチで会議を開こう!」

 十九時まで、およそ六時間。俺は頬っぺたを叩いて気合を入れ、行動を開始した。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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