人生の世界樹

　僕には自分と友達の人生のフローチャートが見える。
僕はそれを通称”トンネル”と　呼んでいる。
みんないろんな考えがあって、すぐにバラバラに人生が枝分かれしそうになるけど
これまでなんとか繋ぎ止めてきた。
でも、今日ばかりは無理かもしれない。
遠くに枝分かれして見えなくなったトンネルは、もう同じベクトルに修正できないんだ……。

正義「ふざけんなよ！　百合に男を挟ませるな！　これは絶対的な不文律だ！」
悪「そんなの最近できたルールじゃねえか！　１９９７年のサブカルを１０００回読め！　男は女と女の間に挟まってナンボなんだよ！」
献身「あなたの気持ちもわかるけど、同時に傷ついてる人もいっぱいいるのよ！」
打算「そんなん知ったことじゃねえなあ！　目の前にブルーオーシャンが広がってるんだ。俺は金の為ならなんでもするぜ」
悪「ざっけんな！　なんでもかんでも金に換算すんじゃねえ！　悪いものはタダで配ってキッズ達を洗脳するんだよ！」
打算「お前とは性癖で分かり合えるつもりだったが、話にならんな」
悪「ああ、このサークルは解散だな。幼馴染の腐れ縁だったが、もうこれまでだ」

　ああ……正義君は右のトンネルへ……
悪くんは左のトンネルへ……
打算君は左上のトンネルへ……
献身ちゃんは右上のトンネルへ……


　みんなバラバラになっていく……
僕だけが一人先の見えない暗い細道をまっすぐに歩いていく……

　嫌だ……嫌だ……離れるなんて嫌だ……

　この……五重になった世界線を……一つに束ねるんだ……

ウアアアアアアアアアアアアアアアアア！！！

「！？」
「なんだ！？」
「何！？」
「なんだこれは！？」

　これは僕のわがままだ！　僕らはずっとケンカばかりして！言い争いばかりして！
話がまとまることなんていつもなくて！　何もかもバラバラだ！　でも！
正義と悪が表裏一体であるように！　献身と打算が背中合わせの存在であるように！
お願いだ！　もう一度でいい！　もう一度だけでいいから！　５人でひとつになってぐちゃぐちゃになりたい！
５つに伸びた世界線がうねって！　ひとつに結び合わさって！
五重螺旋のドリルになるんだああああああああああ！！！！

…………

　一つの束になった世界線が螺旋状のドリルとなって暗闇を掘り進んでいく……
その先に見えるのは……光……
ああ……きれいだ……
なぜだろう……
涙が……止まらない……

to be continued……