第1話
文字数 515文字
平成二十年四月某日、午前零時過ぎ――。シンと空気が沈む郊外のベッドタウン。車通りも疎らになった幹線道路にガタイのいい男が立ち塞がる。
「止まれ!」
ミニバイクにまたがり、帰路を急いでいた平凡な会社員 小林浩(仮名)は胃から腸が飛び出しそうな感覚に見舞われた。
男は手に持っている赤い棒を小刻みに振り、小林を道路脇に誘導しようとする。徐々にスピードを落とせざるを得ないバイクに、男との距離はどんどん縮まっていく。その時、小林は仁王立ちになった男と道路脇の側壁には一メートル位の隙間があることを察知した。
逃げるには今しかない……。
男の間合いに入るか否かの瞬間、小林はエンジンを一気に噴かした。
ガシャン―バリバリ。
隙間を掻い潜って逃げようとした小林は見事、男に腰を捕まれ転倒してしまった。ヘルメットは被っていたものの、頭からの転倒でいささか血が昇る。
「何をしてくれるんや」
起き上がりざま小林は男に食ってかかった。
「止まれ言うたやろうが」
腰を掴んだ反動で尻もちをついていた男も起き上がり、イカツイ身体を揺らしながら歩み寄ってきた。周りに散らばっていた男の仲間も騒ぎを聞きつけて駆けつけてくる。
斯くして小林は絶体絶命の危機に陥った。
「止まれ!」
ミニバイクにまたがり、帰路を急いでいた平凡な会社員 小林浩(仮名)は胃から腸が飛び出しそうな感覚に見舞われた。
男は手に持っている赤い棒を小刻みに振り、小林を道路脇に誘導しようとする。徐々にスピードを落とせざるを得ないバイクに、男との距離はどんどん縮まっていく。その時、小林は仁王立ちになった男と道路脇の側壁には一メートル位の隙間があることを察知した。
逃げるには今しかない……。
男の間合いに入るか否かの瞬間、小林はエンジンを一気に噴かした。
ガシャン―バリバリ。
隙間を掻い潜って逃げようとした小林は見事、男に腰を捕まれ転倒してしまった。ヘルメットは被っていたものの、頭からの転倒でいささか血が昇る。
「何をしてくれるんや」
起き上がりざま小林は男に食ってかかった。
「止まれ言うたやろうが」
腰を掴んだ反動で尻もちをついていた男も起き上がり、イカツイ身体を揺らしながら歩み寄ってきた。周りに散らばっていた男の仲間も騒ぎを聞きつけて駆けつけてくる。
斯くして小林は絶体絶命の危機に陥った。