第1話

文字数 964文字

 

 


 

 


 You're rollin thunder 

 You're rollin thunder 

...



  作詞:谷村新司、作曲:堀内孝雄 1977年10月、アリスの11枚目のシングルとして発売された「冬の稲妻」の歌い出しである。
 冷たく静かな冬の景色を裂くかのような激しい稲妻、衝撃的な男女の別れを陰湿に怨念を込めてではなく、むしろ爽やかにあっけらかんと歌ったアリスの歌に心を打たれたのを思い出す。

 その冬の稲妻が、歌の題名ではなくホントの自然現象であることを、ここ❨山形県❩庄内に住んで初めて知った。
 毎年、東北地方日本海側の吹雪の深夜、突然、
  ゴロゴロゴロゴロド~~~~ン
と雷鳴が(とどろ)く。腹の底に響く余韻のある低音で、湿り気を帯び、空の低い所で鳴る。雪雲と吹雪と闇夜で稲妻こそ見えないが雷には変わらない。
 吹雪の夜の雷は不気味である。

 アリスの谷村新司が 2023年10月、急性腸炎で亡くなった。享年74歳だった。
 自分の青春の一部がポロリと欠け、思い出になってしまった。

 先日、地域の介護老人保健施設(老健)から依頼を受けて診察に行った。介護老人保健施設とは、要介護高齢者(要介護1以上)が自宅復帰を目指すための介護保険施設である。入所者は高齢者が圧倒的に多く、昼間は明るく開放的な機能訓練室・談話室・食堂・レクリエーション・ルームなどに集まり目的ごとに時間を過ごす。
 その日の午前中、施設のバックグラウンド・ミュージックにアリスの歌が流れていた。
 無意識に聞くその歌が耳に心地よい。アリス、施設入所者、そして自分も同世代なのだ、と実感させられた。
 嗚呼(ああ)、自分にはもう時間が残り少ないのだ。頑張ろ。

 さて写真は 2015年2月4日、時刻は日の出前の午前 6:07、西袋(にしぶくろ) - 藤島(ふじしま)間を行く羽越本線上り特急「いなほ」の始発列車である。

 冬期間は日が短く撮り鉄する時間がない。夜間の鉄道写真に挑戦していた。闇との闘いである。
 「冬の稲妻」のように冬の闇夜を切り裂いて疾走する特急列車を撮りたかった。
 それは今になっても撮れないでいる。
 アリスの谷村新司は逝ってしまった。
 合掌。
 んだ。
(2023年10月)
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