第4話 復活

文字数 1,061文字

高橋カツ子、享年123歳。



破天荒な人生だった。



けれど、本当に普通の人以上に人生を満喫したことだろう。





母さんは死ぬ前によく言っていた。


『ここまで生きたんだから、どうせならワンツースリーの年で死にたいわー!めざせ、123歳!』



有言実行、さすがだよ、母さん。



母さんの、元気な声が頭の中で響く。



『ほら、スイゼンジさんの歌であるじゃない、ワン、ツー、スリー!ってマーチ!あれ、母さん好きなのよぉ、だから、ワン、ツー、スリー!で死ぬのが人生最後の夢だわぁ!』



365歩のやつだろ。それが好きなら365才を目指せば良かったのに…。



「スイゼンジさんのは、ワン、ツーだろ。スリーはないよ、母さん…」




そう呟いたとき、3日前に死んだ母さんの遺影が光った。




眩しすぎる光に、眼を閉じた。


そして、眼をあけたその時。




「マサオ…!」



「えっ!母さん!どうして?死んだんじゃ…」



「マサオ、あんたにどうしても言いたいことがあって、冥王星のシステムを使って、こっちに戻ってきたんだよ。あんたが、合い言葉を呟いたら、私は死後の世界から1度だけ、一時的に戻ってこられるようにセットしてあったのさ…」



「えっ!合い言葉!?オレ、なんか言ったっけ?」



「マサオ、あんた、ワンツースリーのことを言ったんだね…母さんの言葉、ちゃんと覚えてたんだね…合言葉は『スリーはないよ』だったのさ。」


母さんは涙ぐみながら言った。



「えっ!じゃあ、それを言わせるために、わざと間違えてたのか!?」



「そうさ…」



母さん。

さすがに宇宙を行ったり来たりしてただけあるな。



「戻ってくるの早すぎて、あんまりありがたみがないな…。あっちはどうだい?」


オレは涙を拭いながら言った。


「まあまあよ。でも、あんたはまだ来ちゃダメよ!」


「いや、オレも80だし、そろそろだよ。…で、言いたいことって何?」


オレがそう言ったとき、どこからともなく、ロボットのような声が聞こえた。


『カウントダウンヲ、ハヂメマス』


「えっ!何!?」


「忘れてた!こっちには1分しかいられないのよ!」


「えっ、早く言ってよ!」


そう言っている間にも、カウントダウンはされてゆく。


「母さん、早く!」


「あ、なんだっけ、あ、山本さんに冷蔵庫のタッパー返しておいて!ネコのエサ頼むね!…あとは、えっと、あっ、マサオ、あんたの本当のおかあさ…」




『シュウリョウ、デス』




再び、目の眩むような光。



母さんは、消えた。





…おかあさん。



『本当のおかあさ』って、何ですか?



オレ、母さんの子どもじゃなかったの?



タッパーとネコのエサより、先に言ってくれよ…。




作成日:2021年9月14日
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