第4話編集者 大塚ゆかり

文字数 986文字

今日の飛鳥目当ての客は、30代後半の女性。
午後5時に喫茶店の扉が開き、飛鳥が「いらっしゃいませ」と声をかけると一直線、そのまま飛鳥の前に座る。

飛鳥は、いつものやさしい顔と声。
「いらっしゃいませ、大塚様」
「編集のお仕事、忙しそうですね」

大塚と呼ばれた女性は、大きく「うん」と頷く。
そして「あーーーーメチャ疲れた・・・」と、カウンターに突っ伏す。
それから約15秒は静止、顔をあげて飛鳥を見る。
「恥ずかしい・・・愛しの飛鳥の君なのに」

飛鳥は、横を向く。
「さて・・・その人はどこ?」

大塚は、元の指を撫でる。
「細いし、きれいだなあ」
「私の男みたいな指と替えて」
「でも、触っているだけでゾクゾクする」
「悪魔の指?女殺しの指でしょ」

飛鳥は大塚の手から、スッと指を抜く。
「いつものレモン水ではないですよ」
キョトンとなる大塚の前に、美しいグラスに入った透明の飲み物を置く。

大塚は、一口飲んで、「あらーーーっ」と不思議な顔、そして満面の笑み。
「ラズベリー?他にも?」
「リフレッシュする、お肌も若返るよ、これ」

飛鳥は、大塚の顔をじっと見る。
「おきれいですよ、大人の魅力で」
「お肌も・・・しっとり・・・もち肌?」

大塚の顔は、まず赤くなる。
「こんな・・・おばさんを・・・その気にさせないで」
「眠れなくなるって、やはり女殺し?」

飛鳥が、次に置いたのは、普通のバニラアイス。
その上に、美しい赤紫色のソースがかかっている。
「バニラアイスにチョコレートリキュールとベリー系のソースをブレンドしたものをかけました」

大塚は、飛鳥の説明を手で制した。
そして、ゆっくりと口に入れる。

「うふ・・・初恋の味?」
「甘酸っぱいベリー系のソース、でも・・・チョコレートのリキュールが大人感?」
「全く、女殺しだ・・・飛鳥の君は」
その顔も、すこぶるうれしそうに変わっている。

飛鳥は、プッと吹く。
「先ほどとは、全く」

大塚の顔が、また、赤くなる。
「・・・恥ずかしい・・・はしたない・・・」
「あんなことして、飛鳥君に女殺しって・・・マジにハチャメチャだよね」

飛鳥は、大塚をまたじっと見つめる。
「それも含めて、大塚様」
「お名前でお呼びしましょうか?」

大塚は、肩をビクッとさせる。

飛鳥は、間を置かない。
「ゆかりさん、いい顔になりました」
「素敵です」

ゆかりの肩がストンと落ちた。
「ねえ、また甘えに来てもいい?」

飛鳥は、ウィンクで応えている。
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