多島くんの時間と私の時間と3

文字数 738文字

 由希乃が泣き顔を隠しながら、本屋の更衣室に駆け込むと、同僚の女子大生が着替えをしていた。
どうしたの、由希乃ちゃん! あ、もしかしてお向かいの人とケンカした?
ううう……
 図星なので、こくこくとうなづくしかなかった。
どーしたのかな? おねーさんがきいたげるよ?
あ、あのね……
 由希乃は一部始終を同僚に話した。
あーまー、ぶっちゃけ悪いのは由希乃ちゃんだよね。

だけど彼氏と繋がりたい気持ちも分かる。

でもそれって、クラスメートとか由希乃ちゃんサイドの理屈とか方法で、だよね?

私サイド……?
つまり、彼氏はそういうのに慣れていないし、そもそもルールを知らないの。なのに、お前はルールを破って自分を悲しませたーって怒るのは筋違いでしょ?
ああ…………
まだ納得出来ないかな。

えっとね、さすがに十歳も離れてると、コミュニケーションの方法そのものが違ってきちゃうのよ。それに、時代に合わせて変わっていけるかどうかってのは個人差がとても大きい

うんうん
そもそも、彼氏ともっと仲良くなりたい、彼氏のことをもっと知りたいから、そういうことしたくなったわけでしょ? 

だったら目的を見失って、最悪別れることにでもなったら、本末転倒。

――そんな未来、イヤでしょ?

……ヤダ
もっと彼氏の立場に立って、過度な押しつけはしない。お互いの望みを摺り合わせる。それが、男女交際を長続きさせるコツなのよ
す、すごい……。でも、なんでそんなに詳しいんですか?
うふふ。お店にある『SNS疲れ解消法』って本に書いてあったから
なーんだ、受け売りかあ~
いいじゃない。知識は使うためにあるのよ
そっか……。ありがとうございます!
 同僚は手を振って更衣室から去っていった。
そっか……。多島さんには、こういうの、合わないのかあ……しらなかった……
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

橘 由希乃(女子高生) 
商店街の本屋でバイトしている。内気だがすぐテンパり、暴走しやすい性格。
そのため、人見知りなのか強引なのか分からないと評される。

本屋の向かいでバイトしている多島くんと付き合っている。

多島 勝也
本屋の向かいにある弁当屋でバイトしている若者。現在、資格試験の勉強中。
自分に自信がなく、つい素っ気ない態度を取って誤解されがち。

本屋でバイトしているJK、由希乃と付き合っており、彼女との年の差をとてもとても気にしている。

弁当屋の主人
勝也の叔父。妻と二人暮らし。気配を消すのが得意。子供がおらず、勝也を息子のように可愛がっている。イチオシのお惣菜は、チーズとちくわの磯辺揚げ。

子供っぽい性格で、しょっちゅう勝也にたしなめられている。

由希乃の同級生(女子高生)


由希乃の母

病院に勤務している。バツ1。

由希乃のバイト先の先輩

本好きな女子大生。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色