ももちゃんのひみつ

文字数 1,599文字

 ももちゃんは、しょうがっこうのいちねんせいです。
 がっこうにいるときのももちゃんは、ごくふつうのおんなのこです。
 おべんきょうも、ふつう。うんどうも、ふつう。
「ねえ、わたしのママって、アナウンサーなのよ。まいにち、テレビにでてるの。」
「へー、すごい。」
「ぼくのパパは、がいこうかんさ。いろんなくにへいくんだよ。ぼくも、ようちえんのころはアメリカにすんでたんだ。」
「わー、すごい。」
 やすみじかん、みんな、パパやママのしごとのはなしでおおもりあがり。
「ねえねえ、ももちゃんのおうちはなにをしているの?」
 ママがアナウンサーのともこちゃんが、ももちゃんにききました。
 すると、ももちゃんはちょっとわらって、こうこたえました。
「うちは、ふつう。」
 そのひのじゅぎょうがおわり、おうちへかえるじかんです。
 せんせいにさよならをして、ももちゃんがこうもんをでると、
「ぜんぶもつんだぞ。いいな!」
 そんなこえがきこえました。どっとおおきなわらいごえもしました。
「なにをしているのかしら。」
 ももちゃんがみちのむこうをみると、クラスのおとこのこたちがいました。
 あれ? おとこのこたちは、ランドセルをもっていません。
 しょうがくせいはみんな、おおきなランドセルをもっているのに。
「へんだわ。」
 ももちゃんは、ねこみたいにしずかにちかづきました。 
 おとこのこたちは、だれかをかこむようにしています。かこみのなかはみえません。
「にんぽう、いととおし!」
 ももちゃんは、そっとつぶやきました。
 そのしゅんかん、ももちゃんのめが、きらんとひかりました。
 いとのようなすきまをとおして、なかのものがはっきりみえるにんぽうです。
 にんぽう。もうわかりましたか?
 そうです。ももちゃんは、にんじゃなのです。
 でも、これはひみつです。
 ひみつがばれないように、ももちゃんはがっこうで、わざとふつうのおんなのこのふりをしているのです。
「あ、たかしくん。」
 たかしくんは、たくさんランドセルをもたされて、ふうふういいながらあるいていました。
「ちから、ないなあ。」
「しっかりしろよな。」
 おとこのこたちは、ますますはやしたてます。
「ひっどーい! いつもたかしくんをいじめて。よーし、みていなさい。」
 ももちゃんは、またそっとつぶやきました。
「にんぽう、ひょうたんからこま!」

 おとこのこたちが、がやがやとみちのかどをまがったときです。
「ぎゃあっ!」
 すごいひめいがあがりました。
 なかにはびっくりしすぎて、じめんにしりもちをついてしまったこもいます。
 なんと――
 あしがよんほん、てがはっぽん、めがみっつもあるかいぶつがたっていました。
「いじめっこは、おまえたちだな! もういじわるはしないとちかうんだ。さもないと、あたまからばりばりってたべちゃうぞ!」
「わあっ、ごめんなさい。ちかいます。もうたかしくんをいじめたりしません!」
 いじめっこたちは、てにてにランドセルをつかむと、おおあわてでにげていきました。
「ありがとう。かいぶつさん。」
 たかしくんも、さいしょはにげだそうとしましたが、かいぶつがじぶんをたすけてくれたとわかると、おれいをいいました。それから、ちょっとくびをひねってつぶやきました。
「でも、ふしぎだな。このかいぶつさんのこえは、ももちゃんのこえにすこしにているみたい。」
「きのせいさ。」
 かいぶつは、すましていいました。このとき、かいぶつのおでこにひとすじ、つっとあせがながれたのはないしょです。

 ももちゃんは、にんじゃのいえのこです。パパもママも、にんじゃです。
 にんじゃは、わるいひとをこらしめるのがしごとです。
 ただ、いいことをしても、ひとにしられてはいけません。それが、にんじゃのきびしいおきてなのです。
 ですから、これはあなたとわたしだけのひみつです。ほかのひとには、ぜったいおしえないでくださいね。
 
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