地獄まで三十日

文字数 974文字

高田が電話から帰ってくると周りが騒然としている中、一人顔を引き締めた男がいた。
「高田隊長、その電話の内容あれですよね」
中村が指を指したテレビにはWREAのニュースが流れていた。
「ああ、そうだ。もう動画は確認したか」
「いえ、まだです」
「だろうな。俺は本部に呼び出された。中村も一緒に来てくれ。その間に動画をみろ」
そう言うと早足に高田は食堂を出て行ったのであわてて車に乗り込んだ。

いつもは中村が運転だが今回は動画を見てもらうために横に乗るように言った。
俺の横で中村が動画を再生させてスマホを横に傾けた。
動画は一分半の動画だ。
画面は白銀色の背景に紅色の文字で『WREA』と書かれている。
声は変えられていた。テレビで見る警察特番の犯罪者のゆうな声だった。まぁ犯罪者だが。
内容はこうだ。
「俺はWREAのリーダーだ。まず初めに警察に言っておく発信源はアメリカぐらいになっているが、複数のパソコンを経由したので、こちらにたどり着くのは不可能に近いだろう。
さて、今回の目的は今日逮捕された十二人の仲間を釈放しろ。拒否すると日本がフランスの二の舞以上になるだろう。さあ、ゲームの始まりだ!」
そこで動画は終わった。
中村は猿が見ても分かるほど明らかに焦っていた。
「ちょ、ちょ、ちょフランスの二の舞以上になるってあの大惨事を日本でっ」
「そうだ。あのフランスの国会中に突入して実行犯十人は建物に仕掛けた爆弾と一緒に木っ端微塵になった死者二十一人重軽症三十七人の最悪の事件だ。」
俺は赤信号の停車中に深呼吸をした。空気を身体の隅々まで行き渡らせた。
ふぅーと深呼吸する俺を右の男が覗き込んできた。
俺は言った。ニヤリと笑いながら。どこにいるのか分からない脳内がゴミカスで詰まっているやつに向けて。
「その脳内がゴミカスでたまったお前らに鉛の弾丸をぶち込んでやろうじゃないか。親を殺され恐怖に苛まれた子羊のように待っておけ。お前らの断末魔を聞くまでは絶対に屈しない!」
車のハンドルを両手の拳で叩き付けた。
横の中村が口をあんぐり開けていた。
俺が横に向くと中村もまた決意の表情を浮かべながらニヤリと笑った。
「そうですね。必ずぶっ潰してやりましょう」
前が青信号になった。





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