第2話(12)

エピソード文字数 1,552文字

「従兄くん、突然だけどフュルさんが帰省したくなったの。買い物をしたらフュルさんの家に行き、全員で泊まりましょう」
「宿題さんは、フュルちゃん家でやればいーのっ。大丈夫(だいじょーぶ)だよーっ」
「うん、そりゃその通りなんだが……。なんで全員で泊まるの?」

 フュルだけ泊まって、俺達は城にいればいいじゃん。というか各自家に戻り、俺が誰かの家に泊まらせてもらうのが一番いいでしょう。

「そっ、それはあれながよあれ! この日は毎年、親友を自宅に泊める先生にするようにしちゅうが! 誕生日会と同じく、昔からやってる伝統ながよ!」
「……アンタは実家に帰る気は毛頭なかったし、『夏休みの記憶』にそんなのなかったじゃん。それ、嘘だよね?」

 疑問形にしたが、言明してもいい。これは出任せだ。

「ほ、ほんとは…………その、あれよ! それ!」
「『それ』って何? わからんぞ」
「あのね従兄くん、レミアさんは皆を実家に招待したいんですって。レミアさんのお母様の手料理は、とっても美味しいのよ」
「おーいシーズナー。俺達は、フュルの家に泊まる話をしていたんじゃないのかー?」

 今日は、ホントのホントにどうなってるんだ。コイツら色々おかしいぞ。

「そ、そうだったわね。フュルさんのお母様のお料理は、とっても美味しいのよ」(…………私、信じられないミスを犯した……。面白昔話、恐るべしだわ……)
「え? 後半、なんて言ったの?」
「ゆっ、ゆーせー君! あたっ、あたしも尊敬(そんけー)しちゃう腕前なんだよーっ」

 レミアが、袖をクイクイ引っ張ってくる。とてつもなく必死に引っ張ってくる。

「ゆーせー君ゆーせー君っ、お邪魔しよーよっ。ねっ、ねっ?」
「ま、まあ、フュルがいいならいいんだけども……。それさ、デモの件が解決してからでよくないですか?」

 問題があったら、親も子も心の底から寛げない。幸い夏休みはまだあるんで、後日に回すべきだろう。

「ううん、従兄くん。解決後ではよくないの」

 俺の言葉を受けたシズナが、首を左右に振る。

「フュルさんは、お母様の味で英気を養いたいのよ。お願いだから、どうか意を酌んであげて頂戴。本当にお願いします」
「……今のも含め、引っかかる点が多々あるが………………確かに、親の味はプラスになるからね。OK、そうするよ」
「にゅむん!」「よっしゃぜよ!」「やったわ!」

 え? 家族と会えるフュルはともかく、レミアとシズナまでもが欣喜雀躍してる。これのどこに、ここまで大喜びするポイントがあるんだ……?

「なあ。キミら――」
「そうと決まれば善は急げっ。ツララ先生に連絡して買い物して、ワシの家に突っ走るぜよ!」
「そっ、そだねーっ。ビュビュンっとレッツゴーだよー!」
「従兄くん、さあ行きましょうっ。すぐ行きましょう!」

 三人は有無を言わさず俺を引っ張り、『戦場空間』を歩いてスーパーへと移動する。
 ――しかーし。
 世界を戻すと魔法使い様騒動の影響で人が溢れており、普通に動くと『力を隠せない俺と一緒にいる人=シズナ』と連想されそうだったので、それを防ぐためにシズナだけ離れて力を開放。そうやって囮&かく乱をしているとお昼時になり、フュルがお詫びにお昼を御馳走したいと言い出したので合流後にランチ。それからやっと目的地のスーパー・『藍川(あいかわ)マート』にインし、買い物の最中に寒上さんとフュルの実家に連絡を入れ、道具やら食材やらを買ってスーパーマーケットを後にしたのだった。



 ………………。
 途中でランチを食べて、お城からスーパーに行く。コレは本来大して時間がかからない行動なのに、スーパーを発つ頃には3時過ぎになっていたのでした……。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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