第2話(3)

エピソード文字数 2,997文字

「にゅむ! 光線(こーせん)さんが壁にあたって、新しー文字が浮かび上がってくるよーっ」
「それって、プリースト神からのメッセージだよね。なんて書いてるんだ?」


《甘く見ていました……。もう許して。なんでも願いを聞くから、口を閉じてください》


 なるほど。この方はお笑いの上級者で、俺の才能に恐れ戦いたのだろうな。
 プリースト神様が、降参をした。

「ぅぅ…………効いたミョン……。怖かったミョン……。最後の134点披露は、最近一番の恐怖だったミョン……」
「??? ブツブツ何を言ってんの?」
「なんでも、ないミョン……。優星クン、ねがいを、どうぞミョン……」
「従妹ファミリーを――いや、無関係者が巻き込まれる危険性もあるからな。この星にいる全ての力なき生き物に、シールドを張ってください」

 ピカッ
《展開完了しました。ユニ、早く帰りましょう。静かな場所で休みましょう》


「そうする、ミョン……。バイバイだミョーン……」
「えっ? 折角だし、お昼ご飯を食べってたらどう? おやつに、四万十川産川エビの煎餅もある――ぁ、帰っちゃった」

 こちらが言い終わる前に、ユニは帰還。ものの十数分で、ミョン子と神様による試練は終わってしまいました。

「……ああいう、他人想いなところは素敵なのだけどね……。あれはちょっと……」
「……自分で気付いてないのが、恐ろしいぜよ……。黒船並みだったがよね……」
「……にゅむむ……。にゅむー……。にゅむん……」

 三人が顔を寄せ合い、なにか言ってる。全員やけに顔色が悪いけど、急に体調が悪くなったのかな?

「どうかしたの? 景気づけに、面白昔話を読もうか?」
「いけないっ、明日から高知だったわっっ。旅の支度をしましょうっっっ!」
「ワシは師匠のPCで下調べをするぜよ! ああ忙しい忙しいぜよー!」
「あたしは安全祈願のお守りを作るよーっ。イソイソイソイソっ」

 シズナとフュルは部屋を飛び出し、この時間の護衛係であるレミアは異空間から裁縫セットを取り出した。

「まだ昼で、出発まで時間があるんだがなぁ。お守りはともかく、支度や下調べは慌てなくていいでしょ」
「にゅむっ、女の子には色々あるんだよーっ。あるんだよー!」
「そ、そうなの? じゃあ俺も、旅行バッグに――荷物を詰める前に、母さんに電話するか」

 プリースト神のバリアーがあるため、家にいても安心安全。何かと説明しないといけなくなるけど、追い出したままはいけないよね。

 プルルルル プルルルル プルルルル ガチャ
『お母さんは、3段のホットケーキを食べています。30分後にまたおかけください』
 ブツン ツー ツー ツー

 母さんは、そういう人間。だから怒鳴らず、長針が180度動くのを待つことにしました。

 ~待機中~ ~待機中~

「30分、経ったな。リダイヤルっと」

 時計を確認し、俺はスマホの画面をタップ。『そういえば数分前に来た敵は、語尾が「たぷ」だったな~』、なんて思いながらタップした、
 プルルルル プルルルル プルルルル プルルルル ガチャ

『この電話は、現在使われています。ピーという発信音のあとに、「お母さん、可愛いね」と言ってください。パー』

 これも、44歳の台詞とは思えない。そろそろ成長しろよ、マイマーザー。

『「お母さん、可愛いね」と言ってください。パー』
「ふぅ。お母さん、可愛いね」

 はーい儀式終了。さっさと会話をしよう。

「母さん、俺だよ。優星でございます」
『……優君のスマホを奪い声真似をして、うちの個人情報を抜き取ろうとしている可能性があるわね。優君しか知らない、お母さんの秘密を言いなさい!』

 なにのたまってるの、コイツ。そこまでして、平凡な家庭の情報を得ようとしないでしょうが。

『優君しか知らない秘密。一つ求む!』
「ん~、そうだね。母さんは昨年クイズ番組を視聴していた時、『南国市に、吾岡山(ごおかやま)ってあったでしょ? 昔あそこの遊具で遊んでたら、小さな子がチョコレートをくれたのよ~』って、唐突に無関係なことを語りだした」
『…………条件、クリア。お前は、我が家族・色紙優星と確信した』

 渋めの声音にして、独りで確認を行う。さてはこの人、ホットケーキを食べながらスパイモノを観てたな?

『優君、おひさ。何の用?』
「あのね。もう、家に戻ってきても――」
「お母さん戻らないわよ。彼女さんができて婚約するまでは戻らない」

 めっちゃ早口で拒否られた。

「そ、それがね、母さん。これまでのは嘘で――」
「優君、ふられた言い訳はしないの。次の恋を探せばいいのよ」
「はぁ? 俺は――」
「優君はとっても優しい子だから、ソコに気付いてくれる人はいつか見つかる。子孫が誕生するまで諦めんじゃねー!!
 ブツンッ

 孫が関わると壊れる母は壊れ、一方的に切られた。
 …………これは、仕方がない。帰宅は無理だな。

「はい、この件はこれにてお仕舞い。荷物を詰めますか」

 自分は、異空間にモノを収納できないからね。しっかりやっとかないと、旅先で慌てふためくことになるのです。

「え~と。まずは、着替えさんを――」
「にゅむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?

 部屋の隅で裁縫をしていたにゅむ星人が、盛大ににゅむった。これは滅多に出ない、難易度にゅむとらCですね。

「あーもう、ドキッとしたぁ。どうしたのさ」
「おっ、お守りがね……っ。ゆーせー君のお守りが、完成(かんせー)した瞬間真っ二つに裂けちゃったの!」

 レミアの右手に目をやると、紫色のお守りがズタズタになっていた。まるで、ハサミで切ったみたいに……。

「にゅむん。ぬいぬいが終わった途端にね、力を入れてないのにこーなったの……っ」
「ま、まあ、そ、そんなこともあるさ。室内で、カマイタチでも発生したんだ――」
「師匠っ! 師匠のパソコン先生に、『DEATH』って文字が出てきたぜよ!!
「従兄くんっ。玄関で支度をしてたら、従兄くんの靴の紐が千切れたわよ!」

 フュルとシズナが、血相を変えて飛んできた。
 これは…………ええ。ヤバい気が、しないこともないこともないこともない。

「ゆーせー君、ぜったい危ないよーっ! 旅行(りょこー)、中止(ちゅーし)にしたほーがいーかも」
「ワシも激しく同意ぜよ。今回はキャンセルしようや」
「いや、悪いがそれはできないんだよ。何度も言ってるけども、必ず行かないといけないんだ」

 どんなに不安要素があっても、この期間は故郷にいないといけない。目的のために。

「けど、従兄くん。只事ではないわよ?」
「そりゃそうだけど、英雄様がいて『金硬防壁』がある。命を落としはしないよ」

 一般的な戦士1000000000000人分以上の力を持つ者が3人と、核1000000000000発に耐えられるシールドがあるんだ。心配は要らないだろう。
 多分。

「と、いうわけで、旅は決行しますっ。ほらほら、気分を切り替えて準備しましょう!」

 俺は敢えて明るく柏手を打ち、三人を連れて自室にスタスタ。バッグに荷物を詰めている間に皆の調子も戻り、その後はワイワイと支度をしたのであった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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