第10話 山線川線
文字数 6,487文字
大会二日目の朝がやってきました。
今日もいいお天気です。
では列車の旅、張り切ってスタート!
本日の第一列車は、熊本から肥薩線経由で鹿児島方面に向かうD&S列車『いさぶろう・しんぺい』です。
人吉までは特急、そこから先は普通列車として運行します。
下りの吉松行きがいさぶろう号、上りの熊本・人吉行きがしんぺい号となっています。
風変わりな列車名は、肥薩線の難所、人吉~吉松間を建設していた当時の逓信大臣・山縣伊三郎と、開通時の鉄道院総裁・後藤新平を由来としています。
観光用に特化したD&S列車は基本的に全車指定席で、事前に座席指定券を購入しておかないと乗車できません。
しかし、一部の列車には自由席も設置されており、特にこの『いさぶろう・しんぺい』の人吉~吉松間は普通列車でもあるので、乗車券のみで素敵な旅気分を楽しめるちょっぴりお得な列車です。
【遥香の車両解説・キハ40系】
D&S列車のほとんどは既存の車両を改造したものです。
その種車として最も多く利用されているのが、キハ40形やキハ47形などのキハ40系気動車です。
1977年から非電化路線の普通列車用として、合計888両と大量に製造されたキハ40系ですが、近年は老朽化により年々その数を減らしています。
急行型のキハ58系と共に、ローカル線の代表格として約四十年の永きに渡り日本全国で活躍しているキハ40系。
山や海の風景がとても良く似合う車両です。
このノスタルジックな大型鋼製車に思い入れのある方もきっと多いはず。
まだまだ頑張ってほしいですね。
☆列車カード獲得!
キハ47形『いさぶろう・しんぺい』
レア度★★★
50ポイント
他のD&S列車と同じく、いさぶろう号でも客室乗務員のお姉さんが沿線の観光案内や記念写真の撮影などをしてくれます。
私たちもどこかの駅で写真を撮ってもらいましょう。
既に『いさぶろう・しんぺい』の列車カードは入手しましたが、思い出は沢山あったほうが良いのです!
熊本駅を出発したいさぶろう1号は、八代駅までは鹿児島本線を、八代駅からは肥薩線に入り、日本三大急流のひとつである球磨川に沿って走ります。
やがて列車は一勝地駅に到着しました。
この駅ではD&S列車同士の交換が行われます。
JR九州の十一番目のD&S列車として熊本~人吉間で運行を開始した『かわせみ やませみ』は、球磨川流域の森林や川の清流をイメージした鮮やかな青と緑の塗装が特徴です。
内装は球磨地方産の杉や檜が使われ、木の温もりを感じながら自然豊かな肥薩線の旅を楽しめるそうです。
きっとこの列車も人気を博すことでしょうね。
私は列車を降り、向かい側のホームに停車している『かわせみ やませみ』を撮影しました。
☆列車カード獲得!
キハ47形『かわせみ やませみ』
レア度★★★
50ポイント
新旧D&S列車の行き違いを経て、いさぶろう号は肥薩線の『川線』区間をどんどん遡って行きます。
そして九州の小京都と呼ばれ、昔ながらの街並みが残る人吉市の中心駅、人吉駅に到着しました。
ここでは七分間の停車です。
昆布出汁で炊いたごはんの上に、酢締めにした球磨川産の鮎を豪快に乗せた、ここ人吉駅の名物駅弁ですね。
是非買って行きましょう!
みんなで夏の味覚に舌鼓です。
香魚の異名を持つだけあって、独特の甘い香りが何とも爽やかですね!
人吉駅を発車すると、いよいよ肥薩線のクライマックス、列車は『山線』と呼ばれる高低差430メートルの峠越えに挑みます。
ディーゼルエンジンの雄叫び頼もしく、いさぶろう1号は南九州の分水嶺を力強く登って行きます。
人吉駅を出てから約十五分、列車は大畑(おこば)駅に到着しました。
何と、ここからは三駅連続のメダル駅なのです!
☆駅メダル(レア)獲得!
大畑
100ポイント
おっと、この旅二つ目のレアメダル獲得です!
熊本や鹿児島の市街地から遠く離れたこの区間、運行する列車は一日たったの五往復のみ。
到達難易度は相当高いですからね。
いさぶろう・しんぺいは観光列車なので、山越え区間の各駅ではそれぞれ数分間、お客さんが駅周辺を散策できる停車時間を確保してあります。
私たちは列車を降り、昔ながらの木造瓦葺きの駅舎を訪れました。
この大畑駅の駅舎に名刺を貼ると出世する。
そんな伝説があるそうです。
屋内の壁が膨大な数の名刺で埋め尽くされていますね。
全国各地からここを訪れた旅人の足跡とも言えます。
大畑駅といえば、円を描くように線路が敷設されているループ線が有名です。
肥薩線の他に、急勾配を登るためのループ線がある路線といえば……。
○正解!
ボーナス獲得!
20ポイント
ところで、大畑駅の構内には彩り鮮やかな木馬のようなものがいくつか置かれていました。
きじ馬とは、木製の台座に紐と車輪を取り付けた、この地方に伝わる昔ながらのおもちゃです。
昔の子供たちは、このきじ馬をゴロゴロと引いたり、背中に乗って遊んだりしたのでしょうね。
今の子供たちも、なのかな?
駅舎の前では、地元のみなさんが手作りの梅干や漬物、お菓子などを販売していました。
私たちは気さくなおばちゃんから漬物を購入して、いさぶろうの車内に戻りました。
さて、スイッチバックの大畑駅を発車した列車は、一旦引き込み線に進入します。
そこから助走を付けてループ線の上り勾配を駆け上がって行くのです。
しばらく走ると、列車は駅でもないところで停車しました。
案内放送によると、先程停まった大畑駅が見えるとのことです。
なるほど、確かに大畑駅の構内が遥か下のほうに見えています。
ループ線ならではの光景ですね。
列車は更に急勾配を登り続け、やがて肥薩線の最高標高の駅(海抜537メートル)である矢岳(やたけ)駅に到着しました。
☆駅メダル(レア)獲得!
矢岳
100ポイント
矢岳駅もレアメダルです!
隣の大畑駅がレアなので、まあ当然といえばそうですね。
この駅には五分間停車します。
ここ矢岳駅では、以前肥薩線で活躍していた『デゴイチ』こと、蒸気機関車『D51170機』がSL展示館の中に静態保存されています。
やっぱり近くで見る蒸気機関車は凄い迫力ですね!
このD51170は運転台の見学もできるので、多くのお客さんが興味深々に計器類やボイラーの釜などを見て回っています。
ちなみに、昨日見たSL人吉の『58654機』も、実はこの場所で静態保存されていた車両なのです。
現役に復帰した元同僚をデゴイチ君は羨ましく思っているかも……。
蒸気機関車の大きな車輪がモンスターになったようです。
時間に制約がある中で、あずさのモンスター捜索力は頼りになりますね。
○正解!
アイテム獲得!
『銀の宝箱』
これのどこが鉄道クイズじゃ!
と、文句のひとつも言いたくなるような問題でしたが、我がチームの誇る才媛のぞみちゃんのクリーンヒットで車輪モンスターの封印成功!
私は何となくマッターホルンだと思ったよ、危ない危ない……。
そして、アイテム『銀の宝箱』が手に入りました!
事前に獲得していた『銀の鍵』を使って、この宝箱を開けることができそうです!
おおっ、遂にシークレットミッションが明らかになりました!
なるほど、このような形式で出題されるようですね。
いさぶろう1号は矢岳駅を出発して間もなく、肥薩線最長の矢岳第一トンネル(2096メートル)に入りました。
国境の長いトンネルを抜けると……、そこは雪国ではなく、日本三大車窓のひとつが待っていました。
案内放送が流れ、景色の良いところで列車は停車です。
眼下に広がる緑の絨毯のようなえびの盆地、その向こう側にはいくつもの山々が重なるように連なっているのが見えます。
いやあ、日本三大車窓の名に違わぬ見事な眺望ですね!
私はタブレットで雄大な霧島連山の風景を撮影。
本部との通信の後、ウインドウが現れました。
☆シークレットミッション・銀クリア!
100ポイント獲得!
列車は再び動き出し、今度は下り勾配を滑るように進んで行きます。
やがて車窓の左下に駅のホームが見えてきました。
一旦駅を通り過ぎ、山線二回目のスイッチバックを経て真幸(まさき)駅に到着です。
☆駅メダル(レア)獲得!
真幸
100ポイント
はい、もちろんレアメダルですね!
真幸駅には五分間の停車です。
ここ真幸駅の駅舎には、その駅名にちなみ、『真の幸せ』を願う絵馬が沢山掛けられています。
無地の絵馬が販売されているようなので、それを買って私たちも何かお願いごとをしましょうか!
私がいつツッコミ役になったというのだ?
むしろあずさのほうでしょ……、ってこの人あっという間に書いて絵馬台に掛けちゃったよ。
なるほど、市井の正しい高校生の絵馬だわね。
……おや、もう一枚あるぞ?
『タイガースが日本一になりますように 諏訪梓』
生きているうちに叶うといいけどね……。
あやめちゃんの絵馬は?
ふむ、実にあやめちゃんらしいね。
こういう世界征服なら平和だね。
で、のぞみちゃんは何だろう?
何という高貴なる願い……。
彼女が女神の化身か何かに見えてきました。
そして私の絵馬はもちろん!
あれっ!?
この四駅は全部スイッチバックじゃなかったっけ?
……いや、ちょっと待って。
確か和歌山線の北宇智駅は、駅舎移転でスイッチバックが解消された、というニュースをどこかで見たような……。
○正解!
アイテム獲得!
『金の鍵』
早速絵馬に願を掛けた効果が現れたのでしょうか、お望み通りの展開になっています!
そして金の宝箱の中からは、やはり巻物が出現しました。
『シークレットミッション・金 鹿児島本線と指宿枕崎線の0キロポストを両方とも撮影せよ』
さあ、シークレットミッション・金の内容も明らかになりました!
ミッションクリアは明日に持ち越しとなりますが、銀の時よりも高ポイントに期待できそうですね!
さて、めでたく山線の三駅連続クイズも無事全問制覇できたところで、真幸駅名物『幸せの鐘』を鳴らしましょう!
ホームにある鐘は、以前は発車の合図として使われていたそうです。
鐘の横に説明書きがありますね。
『ちょっと幸せの方は一回。もっと幸せを願う方は二回。いっぱい幸せの方は三回鳴らしてください』
私たちはそれぞれ思いの数だけ鐘を鳴らし、列車に戻りました。
ちなみに、私が鳴らしたのは二回です。
私は欲張りなので、もっともっと幸せが来てほしいのです!
真幸駅を発車した列車は、最後の力走で吉松駅を目指します。
二箇所のスイッチバックとループ線を駆使、大量の湧水に行く手を阻まれながらも長大トンネルを貫通、百年以上前の当時における最高の鉄道建設技術を注ぎ込んで開通させた山線区間です。
全くえらいところに線路を通したもんだと感心します。
八代海沿いを通る『海線』開通後は、熊本~鹿児島を結ぶメインルートの座を平坦な海線に奪われてしまい、すっかり寂れてしまったこの路線ですが、近年は観光路線として再び脚光を浴びています。
九州新幹線が全線開通してからは更にお客さんも増えているそうです。
これは嬉しいことですね。
現存する鉄道文化遺産として、是非多くの人に体感してもらいたい路線です。