第33話  体力テスト 女子の部

エピソード文字数 3,602文字

―――― 三章 ――――

 


 ※


 色々とあった週末を終え、学校が始まる。

 先週の今頃なんて、新たな高校生活を送る為に意気込んでいたのをふと思い出していた。



 それも遠い過去のように思えてしまう。

 その一週間後。まさかここまで充実した生活が送れるなんて思っても見なかっただろう。



 突如聖奈が現れたのが一番驚いた。

 家族で話しあった結果、過去の関係を超え、とても良い関係になるなんて、昔の俺だったら俄かに信じられない話である。



 同じクラスの人間にも恵まれている。

 染谷君。白竹さん。西部とかその友人である真鍋とか。


 あとは隣のクラスにいる魔樹とか、まぁあいつはよく分からんが。




 とにかく順調だ。大事に行こう。この関係は維持したい。

 そして……俺の正体を明かしても大丈夫な。そんな関係にまで発展して欲しいと願うのだった。



 ※


 公園の桜は散り、緑の葉を付け出した頃、学校では一学年全員がグラウンドに集まっていた。


 今日は一学年での体力テストの日である。



 この日は授業が無い。そのかわりずーっと体操服姿で延々と基礎体力やらを調べるらしい。


 俺から言わせてみれば、この手の授業なんてどうでもいい。

 たまには身体をフルに動かすのもいいだろう程度である。


 

 と言う訳で。この体力テスト。俺は全然やる気が無かった。 

 それよりも染谷くんと一緒に付いて回って話せる方がよっぽど楽しい。



こういうイベで本気出すっていうのもね……皆見てるし、僕は適当にやろっかな

 染谷くんもやる気が無いらしい。

 もし君がやる気なのなら、俺も同じように張り合うところだが。



 やる気が無い。


 それは俺達だけじゃなく、殆どの生徒に言えるだろう。

 こんな場所でやる気になれるのは、運動部の奴らくらいしかいない。


 自分の身体能力をアピールできる場面だからな。


そんな中、奇声を上げてやる気を見せるのは……西部だった。
やってやるぜ! 俺のハイスペックな運動神経を全校生徒に見せ付けるチャンスだ!

西部って運動神経いいの?


そんな風には見えないけど

おいおい。俺のステータスはチート並みだぜ? しらねーのか?


このイベントで女子のハートをゲットするから。まぁ見とけ。

そうなんだ。


なぁ、真鍋くん。西部ってそんな凄いの?

いや。ウソだよ。僕より走るの遅いから。

何言ってんだよ! それは中学生の頃だろ? 


あの頃と一緒にされちゃ困るぜ。百メートル10秒台だぞ俺は。

 そんな言い合いをしてる最中だった。


 必死に弁明する西部に、遠くから女子の声が聞こえる。

何言ってんのあんた。ダントツで遅いじゃん。

西部~。そんなに早いのなら。陸上部に入れるね。


何で入らなかったんですか~~?

黒澤。染谷くん。こいつの言ってる事真に受けちゃダメですよ。

九割ウソだから。

リアルと妄想がごっちゃになってるらしいよ。

うるせーな、お前ら。


まぁ見ておけ。この日の為に俺は……身体を鍛える猛特訓を重ねてきたんだ。


惚れんなよ。マジで。

 自信満々な西部だった。

 

 とりあえず彼に突っ込みを入れるのは、体力テストが始まってからだな。


 ※


 体力テストが始まり、初っ端から飛ばす西部であったが……


 お前がどれだけ気合を入れても、平均点よりも少し下の結果に、内心ほくそ笑んでいた。



おかしいなぁ……こんなはずじゃなかったんだが。

 独り言を連発する西部に、突っ込みすら可哀想に思えてきたぜ。

 どうやら。西部のスペックはみんなの意見のほうが正しかったらしい。



 しかも彼なりに女子生徒にアピールしているのか分からないが、誰一人お前の勇士を見ている奴なんていねーぞ。




 逆に男子生徒の視線は、うちのクラスの女子に向けられていた。

 当然白竹さんや聖奈であり、テストの順番が回ってきた男子生徒でさえ、釘付けになってる状態であった。


 

 他のクラスの連中からも「やべー可愛い」やら「あんな子いたの?」やら「乳でかすぎ」やら、それはもう言いたい放題だった。




 まぁ、男の子だからな。しょーがないよな。



 などと、男子生徒の気持ちをうんうんと理解しながら聖奈達を見ていると、今からグラウンドを五週ほど走るらしい。

うっひょ~こりゃ見ものだぜ。体操着であらせられる白竹さんの巨塔が……ぶるるんぶるるん
既に気をやってしまった西部は無視しよう。

美神さんも可愛いね。ポニテも似合うしさ。


彼女の場合、身体のバランスがいいんだよね。そう思わない?

 そんな事を言い始めたのは真鍋くんだ。

 彼はよく西部とつるんでる大人しい生徒だと思ったが、何でそれを俺に言ってくるのだろう。

そうなのかな? まぁ美人だとは思うけど
あ? お前。美神さん狙いなの? ムリムリ。ムリゲーだっつーの。
 なんとなくピクっとしたが、笑って誤魔化していると、
だけど。美神さんのポニテ良いね。僕もそう思ったんだ。めちゃ似合ってるよ
 え? 染谷くん?

うんっ! 僕もポニテは好きだね。


美神さんはなんていうのかな……

いつも総合的にポイント高いんだよ。何をさせても上手く纏まってるというか。

なんだろう……真鍋くんが今まで以上に活き活きしている気がする。

なんだ? 染谷も美神さんゲットに燃えてんのか?


まぁお前は、黒澤よりも可能性は高そうだな。

別にそんなつもりねーっつーの。


可愛いもんは可愛い。それを普通に言って、何で狙ってるとかいうわけ?

 さらっと反論する染谷くん。それでもニコ顔は変わらない。


 けど……明らかに怒ってるよね?

黒澤くんも。こーいう奴はシメてもいいと思うよ。


どんどん付け上がるからね。

西部に聞こえるように言い放つ染谷くん。

あら。西部は完全にビビってるぞ。


っつーか。ニコニコしながら突っかかってくるのも、ある意味怖いよな。

い、いや。別にいいよ。

 俺はどんなヤツにも平和主義者なのがモットー。


 俺自身に降りかかる文句はいくらでも耐えれる自信がある。

染谷はポニテ好きなの?
自分、ポニテマニアなんで。

 ポニテマニアって……

 まぁ待て。染谷くんも男の子だしな、しょうがないか。

 

 

 まぁ。わからんでもない。

 聖奈のポニテ姿はグッとくるものがある。



 俺のようなレベル1で出来るようなノーマルタイプではなく、ちょっと捩れた感じが更に良い。ちょろっと髪が跳ねてるのもポイントが高い。



 それに運動する時はポニテが一番やりやすいしな。経験者は語る


それに真鍋の言う通り身体のラインも綺麗だし、胸も結構あるよね。理想の体型だと思うよ

 おおっと。今日の染谷くんはやたら食いつくじゃないか。


 いつもなら女性の事はあまり言わないのだが、それほど聖奈の破壊力は凄まじいのかもしれない。


 それともポニテマニアだから、かもしれない。 

待てよ。スタイルなら白竹さんだって負けてねーぞ!

ロリっぽい体型にあのアンバランスなおっぱいがたまらねぇ……

 お前だけやたら卑猥なので困る。

 おっぱいとか普通に言うなよ。



 そんな時、真鍋が違う方向に指を差した。


あ、竜王(りゅうおう)さんもいる。やっぱ綺麗だね

おおっ! ほんとだ。


竜王さ~~ん!

だはっ! こっちに手を振ってやがる! 


ああもう。俺に惚れちまったのかよ。チョロすぎるぜ。

 確かに。


 さっき、坂田さんが言ってたように。リアと妄想がごっちゃになってるのかもしれない。

これまたナイスバディすぎんだろ。

やっぱ美少女トップ三は。白竹さん。美神さん。竜王さんで決まりだろ。異論は認めない

 さて。西部が説明している女の子とは、これまたぶっちりぎりの美少女だな。水色のロングは聖奈と同じくポニーテールにしており、どこかの二次元に生息してそうな整った顔だった。



 スタイルも申し分なく、彼女もきっとそこらじゅうからの男から求婚されてそうである。俺も高校初日に見かけて、可愛いとは思ってたが。



 というか水色ロングというのは白竹さんのピンクと同じく、とても目立つからな。嫌でも視界に入ってくる。

とはいえ。俺は白竹さん推しだ。すまない竜王さん
 誰に謝ってるのか謎な西部は放置しておこう。
なぁ弟さん。ねーちゃんのお風呂シーンとか覗くよな? 俺ならぜってー覗くわ
そんな写メがあったら。こ、高価買取するよ

 急に変態チックになってしまった真鍋にも驚いたが、


 振り返ると、俺の後ろに魔樹がいた。

 いつの間にいやがったんだ?


 ああそっか。一学年全体だからお前も一緒なのか。

僕にそんな話するのやめてくれる? 潰すよ。

 魔樹よ。いきなり「潰すよ」と言われりゃ誰でもビビるってお前。

 しかも冷酷極まりないマジキレ顔だし、一瞬で西部が涙目になってるじゃないか。マジで怖いから。



 だが……そんな不穏なムードも一瞬で掻き消えてしまう。



おい。西部。始まるぞ

ぬっ! うっひょ~~~! 待ってましたぁこの瞬間を!

この立ち直りの早さに、思わず魔樹に「殴っていいぞ」と言いそうになった。


というわけで。

女子生徒がトラック五週するのを、男子生徒が見守る事となった。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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