第二章 不審死(1)

文字数 3,717文字

三月二五日 午前四時四一分
東京・江東区有明 タワーレジデンス有明八〇五号
 
 佐々木大介は浅い眠りの中で、長い夢を見ていた。
 うっすらと見えているのは、細くて小さな母の後ろ姿だ。母はいつも忙しそうに働いていた。それなのに、笑顔というものを絶やした事のない人だった。その母の笑顔をもう一度見たいと思って近付いてみるのだが、懸命にもがいてもなかなか距離が縮まらない。
「母さん!」
 振り絞るようにして呼びかけると、母が振り返った。懐かしい顔だった。最後に母を見送ってからもう何年になるだろうか。苦労しか知らないような人生を歩んだ人だった。裏切られても、踏みにじられても、一切の泣き言さえ漏らさなかった。
 母は笑っていた。昔と変わらぬ笑顔だった。しかし、その顔が少しずつ曇っていく。とうとう、今にも泣き出しそうな表情に変わっていった。
 次の瞬間、その表情が完全に入れ替わった。似たような輪郭であるが、まったくの別人になっている。目をこするようにしてその顔を見つめる。見覚えがあった。
〈千佳子、か?〉
 そう問うてみると、相手は少し戸惑い、また気まずいような顔をしながらも頷いた。
〈大介さん・・〉
 これもまた、何年も聞いていない声であった。久々に聞いたはずなのに、本人のものと間違いない声だった。ああそうだ、千佳子はこんな声だったな、と思った。しばらく思い出せなかったせいで、今度こそその声を絶対に忘れたくないと思った。
〈千佳子、今日までどこにいた?〉
 答えはなかった。その瞬間、今まで鬱積していた思いが、一気に胸から溢れ出て来るような錯覚に陥った。
〈なんであんな事をしたんだ?〉
 その問いかけに、相手は再び下を向いた。
〈なんでだよ!〉
 なじるように大声を張り上げた。その声で目が覚めた。
 一瞬、自分がどこにいるのか判らなかった。仕事机を照らすだけのデスクライトの柔らかい光さえ眩しいくらい、部屋の中は真っ暗だった。辺りを見回し、ようやく自分が自宅マンションにいる事を確認した。原稿を書いている途中、ノート型パソコンの上に突っ伏したまま眠っていたらしい。空のグラスが机の淵から落ちそうになっていた。
 最後に時計を見たのは午前二時過ぎだったから、その後二時間半ほど眠ってしまったようだった。しかし、妙に目は冴えていた。今しがた見たばかりの夢を思い出し、ため息をつく。あの懐かしい声を思い出そうとしてしばらく物思いに耽ったが、あれほど明瞭に聞こえたはずなのに、今となってはどうしても思い出せない。仕方なく諦めたものの、今更改めてベッドに入る気がしないので、再び原稿を書く事にした。
 佐々木大介が東京経済新聞に入社して、すでに一〇年が経っていた。神戸支局で県庁担当として新聞記者のキャリアを始め、その後東京本社の政治部で五年間勤務した後、シンガポール支局に二年間配属となった。さらにあと数年はシンガポールから出られないだろうと思っていたが、阿方多々志総理が衆議院の解散総選挙を行い、阿方内閣で外務大臣の職にあった高島昇が新総理に就任したことで、突然東京本社の政治部に戻されたのであった。
 編集副部長によると、この人事は、東京経済新聞社の『生き字引』とか、時に『骨董品』などと呼ばれている、元主筆で現在は会長の菊池吉之助からの強い引きによるものであったそうだが、彼自身はそんな時期に本社に呼び戻されたことを苦々しく思っていた。唯一の魅力は、戻った先のポジションが、政治部の遊軍記者ということだけであった。
 遊軍記者は、持ち場に拘束される事なく、基本的に自由に動いていられる。大事件が起きたときは便利屋扱いであるが、東京経済新聞では特に平時にはまったく自由だ。だから、自分の好きなテーマを取材して掘り下げることもできる。そのため帰国後の佐々木は、そんな遊軍記者のポジションの利点を大いに有効利用しながら、あるテーマについて書き続けている。
 カーテンを開けると、外はまだ暗かった。大都会の高層ビル群の光やネオンの他、東京湾に浮かぶ船舶の光が上空の雲に薄らと反射している。今日もまだ寒そうだなどと思いつつ、部屋の電気をつけてコーヒーメーカーのボタンを押し、コンピュータの前に座った。そして、書きかけの原稿に目を通した。
『日本の核管理を疑う国際原子力機関(IAEA)』
 へたくそであるが、遊軍記者の立場を大いに利用し、現在執筆中の原稿につけた仮題だ。いつ、どのように外に出すか決めてはいないが、帰国後、個人的にずっと興味を持って追いかけて来たテーマである。
 描き始めた発端は、半年ほど前の社内における記者同士の日常的なやり取りだった。社内の資料室で原子力安全協会の資料を眺めていた後輩の記者が、
「この報告書、妙なことを書いていますよ」
 と言って、佐々木に翻訳されたその部分を見せた事があった。そこには、日本の核管理能力には以前から不透明な部分があり、核兵器転用の可能性さえあったが、フクシマの事故によって、それを調査することも出来なくなってしまった、というIAEAレポートが載せられており、その文末は、「それでもIAEAは、一定レベルの懸念を有している」と締めくくられていた。その若い記者は、
「日本以上の技術力でちゃんと原子力を管理している国が他にあるかって言うんですよ。福島のあれは津波のせいで、完全に自然災害だし、そんな事で日本の技術にケチをつけられるのはたまらないっすよ。ったく、国際機関てのは暇になると日本を虐めるんですね」
 と興奮していた。しかし、佐々木の捉え方は違った。直感に過ぎなかったが、あるいは何か裏があるかもしれないと思ったのだった。その根拠となったのは、そんなIAEAレポート翻訳文の脚注に小さく記された次の文章であった。

「東日本大震災の半年後、茨城沖で発生したマグニチュード六クラスの余震が発生、直ちにIAEAの査察官五名が東海村の日本核燃料研究機構に派遣された。その際、査察官らは研究所施設への立ち入りを一時日本側に阻止されたという一部報道があったが、それは事実ではない。日本側は技術的な『調査』の受け入れを一時的に見送りはしたが、軍事転用の可能性を調べるための『査察』を拒否したわけではない。それから二週間後、茨城県知事の要請もあって、日本核燃料研究機構は、施設への本機関査察官の『調査』立ち入りを許可している」

 翻訳文にわざわざこのコメントをつけたのは、日本の原子力安全協会であるが、なにか、今ひとつ腑に落ちない文章であった。この事を調べるため、佐々木は日本核燃料研究機構の関係者や、前茨城県知事に取材をしたが、彼らは一様に「ノーコメント」を貫いたのだ。彼らが何かを隠しているのは明白だった。
 それ以来、佐々木は自分のテーマとしてこの報告書の背景を追い続けて来た。もしかしたら、電力会社や核燃料研究所をはじめとする政府機関は、IAEAに見られてはまずい技術上の、または安全上の重大な問題点を隠しているからかも知れない、と感じたのだ。
 あれだけ「安全、安心」を謳ってきた政府が、もし何かを隠していたとすれば、それだけで大変な問題になる。
 淹れたばかりの熱いコーヒーを喉に流し込みながら、インターネットを開けてみる。居眠りする前まで見ていた自社のニュース速報ページがそのままになっていた。主に原子力関連のニュースであったが、その中に、
〈政府、海上移動式(浮体式)原子炉の導入を検討〉
 という項目があるのが目に留まった。

【二四日 東京経済新聞】
 東日本大震災以降、最大の懸案事項となっていた全国の原子力発電所の廃炉と再稼働問題に関連し、政府は二四日、地震や津波などの災害に強く、テロ攻撃からの防御も容易であり、かつ全電源喪失時にも海水の緊急注水が容易な「海上移動式(浮体式)原子炉」の導入を検討していることを明らかにした。
 陸上の原発に比べても格段に安全性が高いと言われる「海上移動式(浮体式)原子炉」は、大型の船舶に原子炉を搭載する形で海上に遊弋、そこから海底ケーブルで陸上に電力を供給するというものであり、すでにフランスやロシアで建造が進められている。震災での津波の影響を受けて旧来の陸上型原発が甚大な被害をもたらしたという教訓から、政府もその導入を真剣に検討し始めた格好だ。
 一方、一隻の建造費が二〇〇〇億円とも言われるこの「海上移動式(浮体式)原子炉」については、政府・与党内にも一部慎重論があり、高島総理は時間をかけてそんな「身内」を説得していく構えだ。
 電力事業連合会の西園直樹会長(西日本電力社長)は三月二四日、同連合会の定例会見において、「政府の姿勢を歓迎したい」とし、「海上移動式原子炉導入を検討するとの高島内閣の意向を支持していく」との強い決意をにじませた。

 この記事に目を通した佐々木は、思わずため息をついた。
〈原発再稼働かと思えば、今度は船の上に原発を乗せるのか。安全安心だなんて、こいつら正気かよ〉
 佐々木には、福島であれだけの災害を出したにも関わらず、それでもなお原発再稼働に血眼になる人々の気が知れなかった。
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登場人物紹介

高島昇(内閣総理大臣)

通商産業省のエリート官僚出身の政治家。義父の中田力元総理からは『ガリ勉・高島』と呼ばれ、その政治地盤を継ぎ、与党・自由憲政党の一大派閥「桃園会」を率いる。今は亡き心の妻・佐々木通子を今日もなお思い続け、その間にできた息子・佐々木大介のことをずっと気にかけている。性格は冷静沈着、頭脳明晰であり、肚も据わっている。かつては対米通商交渉で米国側と戦い、ワシントンのシンクタンクなどの機関から引き抜きのオファーを受けたため、中田総理の命令で二年間の米国官費留学をした。

岡本哲之介(財務大臣兼TPPA担当大臣)

高島昇総理とは大学時代からの盟友であり、国民的人気が高い政治家。第二次高島内閣では財務大臣兼TPPA担当大臣を務め、巧みな交渉で米国通商代表を振り回す。神楽坂に長年愛妾・松島さゆりを囲っており、民主連合党党首の秋山繁三郎から国会でその関係を槍玉にあげられたことも。英国のチャーチル首相と革命家チェ・ゲバラを真似て、葉巻とウイスキーをこよなく愛する。東京経済新聞記者の佐々木大介を自分の秘書にしたいと考えている。中田理樹元総理からは『あきんど・秋山』と呼ばれていた。

立浪義彦(経済産業大臣・国家公安委員長)

東大法学部からキャリアとして警察庁に入り、二七歳の若さで警備局警備課長として大阪府警に赴任。三七歳の時に衆議院議員に立候補し、岡本哲之介の応援を得て政治家に転身した。一年後輩の白石一成警察庁長官とは、かつて成田闘争で共に戦った。政策グループ「桃園会」のメンバーで、東大柔道部出身。

秋山繁三郎(最大野党・民主連合党党首)

学生時代、酒場で出会った高島昇、岡本哲之介と共に義兄弟の契りを結び、政策グループ「桃園会」を結成。弁護士としての能力を生かしながら、中田力総理の親衛隊として政界に打って出るが、中田の失脚後、野党に寝返った。中田元総理からは『任侠・秋山』と渾名され、マスコミからは『政界の闘犬』と呼ばれている。国会では、与党を率いるかつての盟友・高島の政策や岡本の女性問題を厳しく追及している。

佐々木大介(東京経済新聞遊撃記者)

岡本哲之介に目をかけられていたが、社内でやっかみを買い、シンガポール支局に二年間飛ばされる。しかし、外務大臣であった実の父・高島昇が新総理に就任したことで、東京本社の政治部に戻された。大学時代からの親友である週刊誌記者・沼沢善明、そして神戸大学院生のアシスタント・堀田慶子とともに岡本大臣の死の真相を追う。昔、自分を裏切った元婚約者の新井千佳子に愛憎混じった想いを持ち、また子供の頃に自分と母を捨てた父・高島昇に対して強い反感を持っている。

堀田慶子(神戸大学大学院生)

岡本大臣が命を落とした現場のホテルで佐々木大介と知り合い、専属アシスタントとしてその調査を手伝う。大学院では政治学を研究しており、近頃流行の『草食系』『肉食系』などの言葉で相手を見たり、見られたりするのもイヤだという新聞記者志望の二六歳。危険な真実に向かって突き進んでいく佐々木を案じながら、徐々にその姿に惹かれていく。

沼沢善明(週刊日本芸能記者)

佐々木とは大学時代からの親友。東亜中央新聞の記者を経て、一年間アフガニスタンの戦場を取材。その後、週刊誌記者となり、様々なアングラ案件を取材。常に名誉毀損の訴訟案件を五つ以上も抱えている。隠れ愛妻家でもある。

木内妙子(東京経済新聞政治部記者)

二〇代の頃から『生涯独身』を宣言しているキャリアウーマン。その古風な顔立ちのせいで、歴代総理の中にもファンが多く、普通の取材では取れない情報で大型スクープを何本もモノにし、新聞協会賞まで穫った事も。一方で、その勝ち気で胆の据わった性格から、周囲からは『美人だけど嫁や彼女にはしたくない』とか『怖い姐さん』と言われているタイプ。自他共に認める「永田町のジジイ殺し」。佐々木大介のことをイジるのが好きだが、実の弟のように可愛がっており、間接的に佐々木の調査を手伝っている。

新田純(東亜中央新聞大阪本社記者)

沼沢善明のかつての後輩。米国通商代表と環太平洋経済連携協定(TPPA)の合意をすると期待されていた岡本哲之介に対して突撃取材をする中で、偶然に『自殺』を”スクープ”する。東亜中央新聞東京本社の水野部長に目をかけられるも、その誘いを拒否したことから何者かに狙われ、取材ノートをすべて佐々木大介と堀田慶子に手渡す。

鳥谷龍彦(岡本建設興行社長・岡本哲之介後援会会長)

二三年の長きにわたって岡本大哲之介後援会の会長を務めてきた関西経済会の実力者。若い頃、岡本に助けられたことを恩義に感じてその政治信条と人柄を信奉するようになり、岡本建設興業社を切り盛りしながら、「鉄の結束」を誇るとされる岡本後援会を設立し、それを率いている。生前の岡本とは、枚方市の自宅豪邸の離れで密談することを最大の楽しみとしていた。


松嶋さゆり(岡本哲之介の愛妾)

岡本哲之介がもっとも愛し、かつ唯一心を許した女性でもあり、半世紀にわたり、陰ながらかけがえのない相談役としても岡本を支えてきた女傑。神楽坂の自宅を訪れた佐々木大介に対し、岡本の死の真相に繋がるヒントを与える。

沼沢芙美子(沼沢善明の妻)

大学時代、沼沢や佐々木大介とともに平山雅彦教授のゼミに所属。沼沢との初めての子供を胎内に宿している。

平山雅彦(元内閣官房参与)

佐々木大介や沼沢善明の大学時代の恩師。「桃園会」のメンバーと思想的に近く、岡本哲之介の信頼を得て内閣官房参与となり、「S S計画」にも関与する。その歯に衣着せぬ発言でマスコミでも人気を博したが、みずからのゼミに在籍していた女子大学生への強姦未遂容疑で逮捕・起訴される。今は長野県須坂市の田舎で妻と二人で隠遁生活を送る。

佐々木通子(佐々木大介の母)

明治の頃から政治家がお忍びで通う、芝の料亭の娘。梨園の名家に嫁ぐ予定であったが、中田力総理の見習いとしてやってきた学生時代の高島昇と出会って恋に落ち、その子供を宿すも、母親の猛反対を受けて家出をして流産をする。その後、通産官僚となった高島が数年がかりで見つけ出すが、高島はすでに中田総理の一人娘と結婚をしており、二人は秘密の関係を維持し続ける。やがて大介をもうけるが、大介が学生時代の時に病でこの世を去る。その死の瞬間までひたすら高島を思い、大介に対しても「決してお父さんの邪魔をしてはいけない」と言い続けていた。

新井千佳子(佐々木大介の元婚約者)

在日朝鮮人で、佐々木の大学の二年後輩。その美貌から学生仲間の憧れの的であったが、最初から佐々木に好意を寄せていた。大学卒業後、偶然に佐々木とバーで再会し、約一年間の同棲を経て婚約。しかしそのわずか一ヶ月後、他の見知らぬ男と関係を持ってしまい、そのことを知った佐々木との関係は一瞬にして崩壊してしまう。

エスター(佐々木大介の学生時代の交際相手)

スウェーデン人留学生。平均的な身長の佐々木より五センチも背が高く、飛び抜けた日本語能力を有する。特に佐々木が東京経済新聞に就職してからというもの、しきりに結婚を求め、両親がスウェーデンから「将来の義理の息子」に会うために来日することになったが、その直前に母親が急病になったために急遽一時帰国。それ以来、佐々木とはまったくの音信不通となってしまう。  

遠藤(沼沢の先輩で極左活動家)

大学時代に沼沢が冷やかしで時々顔を出していた無線愛好会のOB。あらゆる無線の傍受を得意とし、この世に傍受出来ない無線はないと豪語する左翼過激派。若い頃は爆弾まで作っていた。S Sー8が強奪された現場近くにいて、その一部始終をビデオに収めており、それを昔の後輩である沼沢に売りつける。 

光村朝夫(宗教団体「光の社」の教祖)

巨大宗教団体「光の社」を設立し、麻野幹事長の父・孫四郎副総理と二人三脚で教団の勢力を拡大、今や政財官界を含む総数五〇〇万もの信者を抱えているが、その実態は悪魔崇拝の団体であり、その本尊は、かつて孤児であった光村の世話をしてくれた地方の寺の娘の頭蓋骨だとする噂がある。これまでに六〇〇〇人の信者の女性と関係を持ったとされ、その際に得る体液で金箔を髑髏本尊に貼りつけているとも。かつて東京地下鉄テロ事件で起こした宗教団体「ヘキサ神仙の会」を背後から操っていた疑いが持たれている。

梅本喜代志(宗教団体「光の社」のナンバー2)

教団内では教祖光村に次ぐ実力者であり、いくつもの会社を経営する五〇代半ばの男。都内に自社ビルを五つ所有しており、資産は一〇〇億円以上とも。日頃から大金をちらつかせて若い女たちを常に侍らせながら高級車を乗り回し、新宿歌舞伎町のSMクラブに通っている。警察内部に多くの情報源を持ち、その内部事情にも詳しい。

かつて「ヘキサ神仙の会」が岐阜県内の湖底に沈めて隠匿したカラシニコフ自動小銃50丁を密かに回収したと疑われている。

麻野紀夫(自由憲政党幹事長)

かつて副首相を務めた父・孫四郎が作った有力派閥「合一研究会」を率いる党内の実力者。高島の属する派閥「桃園会」とは永遠のライバルという関係にある。

津川公一(宗教団体「光の社」の元教会部長)

東京大学法学部時代に光の社に入信し、そのまま大蔵省に入省。キャリアとして一五年勤務した後に退職し、その後は光の社の教会部長として、また教団内最大の実力者として組織の急拡大を推進、特に官僚や警察、自衛隊、それに政界内での影響力ある信者獲得に大きな力を発揮していた。しかしここ数年、五歳年下の有能な梅本喜代志との権力闘争に破れ、前年末には教団から事実上の除名処分を受けて脱退。その頃に岡本哲之介と知り合い、教団内部の財務状況を含む違法行為を告発する資料を作成した。かつて男女の仲であった目白の料亭の女将を使って教団の動向を調査している。五七歳。

ジョージ・フランシス(アメリカ元国務副長官)

ウォール街と情報機関の意向を受け、日本に対しては常に圧力をかけてくるジャパンハンドラーの一人。ワシントンの意向をバックに、日本政府に対して事実上の命令書『フランシス・レポート』を送りつける。岡本哲之介のことを目障りだと感じている。

山賀宏(内閣官房長官)

桃園会のメンバーであり、高島内閣を支える影の調整役。

川村猛(防衛大臣)

防衛大学校出身で、陸上自衛隊の幹部として勤務した経験を有する防衛族の政治家。勝気な性格であり、軍事に関しては高島内閣では誰よりも詳しい。

牧野(総理首席秘書官)

三〇年以上も高島昇に仕え、高島の代わりに佐々木通子・大介親子を陰ながら支えてきた忠臣。

山口和也(日本核燃料研究機構安全管理課長)

二〇年以上前に、ヘキサ神仙の会の「スリーパー」として日本核燃料研究機構に入所、その翌年にフランス原子力庁に研修派遣されるが、ヘキサ神仙の会のパリ支部に数回出入りしてところを、その行動を監視していたフランス情報機関に把握される。ヘキサ神仙の会の解散後は普通の職員として核燃料研究機構に勤務するが、三年半前に「光の社」関係者によって六本木の違法カジノに連れ込まれて借金まみれになる。その頃、同時日本核燃料研究機構安全対策部門を任されるようになる。

白石一成(警察庁長官)

元警察庁キャリアだった立浪経産大臣の一期後輩のキャリア組。剣道、柔道、空手、合気道を合わせて一七段の猛者であり、立浪とはかつて盛んだった成田闘争の混乱の中で絆を深めた。前年に妻・咲子に先立たれ、今は三人の娘に世話をされながらも一人暮らしをしている。立浪の意向を受け、奪われた「SS-8」の捜索に全力をあげる。

蒼井裕(警視庁外事四課長)

長年「ヘキサ神仙の会」とその背後に見え隠れする「光の社」、さらに外国情報機関の動きを追いかけてきた公安のキャリア幹部。

横井力也(警視庁警備部警護課第一係)

かつて岡本哲之介の警護を命じられ、その後に高島総理の担当となったSP。

伊達一也一等陸尉(陸上自衛隊特殊作戦群第三中隊)

防衛大学校を卒業後、陸自幹部候補生学校で次席の成績を収め、第一空挺団から西部方面普通科連隊を経て、特殊作戦群入りを果たした将来有望な三二歳の幹部自衛官。これまで、水温わずか七度の寒中水泳などでも一番に飛び込んで率先垂範してきた幹部だが、ベテラン隊員からも「無茶し過ぎだ」と半ば呆れられる事さえある。福井の貧しい農家出身で、父を早くに喪って以来、母によって女手一つで育てられた。アメリカ陸軍特殊部隊への派遣留学も経験している。

中島美香三等空佐(航空自衛隊第1輸送航空隊第401飛行隊飛行班長)

防衛大学校を卒業し、航空自衛隊に入ってC 130H輸送機のパイロットになった三五歳。過去にイラクに派遣され、クウェートからバグダッドまでの多くの輸送ミッションに就くも、その間に二度、地上の武装勢力からレーダー照射を受け、緊急回避を行った経験がある。操縦技量と緊急時の判断には定評があり、将来の飛行隊長候補とされている。夫は同じ小牧基地に所属する空自の会計課担当幹部で、二人の娘がいる。

木村大悟二等空尉((航空自衛隊第1輸送航空隊第401飛行隊所属)

災害時の人道支援で飛び回る任務に憧れ、最初から輸送機任務を希望した航空学生出身のパイロット。ひょうきんで快活な性格で、高校時代から付き合っていた女性と昨年の初夏に入籍した新婚ホヤホヤの二八歳であり、先輩の中島美香三佐にとっては可愛い弟のような存在。妻は現在妊娠中で、臨月を迎えている。中島美香3等空佐とともに「SSー8」の輸送任務に就く。

奥平毅三等陸佐(防衛省情報本部)

特殊作戦群から小平学校を経て、防衛省情報本部に配属された幹部自衛官。防衛大学校では伊達一也一等陸尉の3期先輩で、同じボート部に所属していた。SS-8輸送任務の警備要員として、中島三等空佐が操縦するC 130輸送機に乗り込む。

鬼島俊(日本人傭兵)

フランス外人部隊第2落下傘連隊(オート=コルス県カルヴィ)出身で、長年、東南アジアや中東で戦争をしてきた傭兵。SS-8奪取作戦に計画段階から関わっており、男女群島の戦闘で特殊作戦群と銃火を交える。

ジョセフ・キム(米国民間軍事会社社員)

カリフォルニア州ロサンゼルス出身の韓国系米国人(四世)。米中央情報局の非合法作戦を中心に、世界中の紛争地帯で活動してきた米海軍特殊部隊出身の民間軍事会社社員。

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