第2話 やっぱうどんで

文字数 796文字

 ゴメスは席につくなり、タブレットを操作して注文し始めた。マグロ、サーモン、いくら、えび。まずは王道の食べたいネタから。

「ラーメン行こうって言うから来たのに普通に寿司食うんだな」

 タブレットを受け取り、ゴメスと同じ数、同じ値段のネタを注文した。俺が合わせないと割り勘で損をすることになる。ゴメスに気をつかうという機能は備え付けられていない。

 回転寿司だろうがスーパーのパック寿司だろうが寿司というものは基本美味い。鮮度重視なので多少のあたりはずれはあるけれど、毎日食べるものではないので特別感がある。

 注文してから数分で運ばれてきた。とてつもないスピードでベルトコンベアに乗ってやってくる。

 醤油につけて、口に運ぶ。食べるネタの順番などどうでもいい。ここは楽園、回転寿司なのだから。

 美味い。美味すぎる。やっぱ寿司食ってるときが一番幸せだわ。

「あの、非常に言いにくいのですが」

 ゴメスはにやにやしながらそう言う。全然言いにくそうでもなんてない。ご飯を食べているときの嬉しそうな顔。気が利かなくてモテないし服もダサいゴメスの一番の武器だ。

「やっぱ、うどん食べてもよろしいでしょうか」

 俺はわざと腕を組んで考えるフリをした。ゴメスがうどんを食べるということはその分の額の寿司を食べればいい。それか俺もうどんを食うか。

「いいよ♡」

 とびきりのスマイルで。

「やった♡」

 なにをいちゃいちゃしているんだ俺たちは。

「寿司屋でうどんとか、赤ちゃんじゃん」

 うどんがダッシュで走ってきた。

 必殺、ゴメスの麺類バキューム。ゴメスは麺類全般食べるスピードがものすごく速い。そのかわり汁を撒き散らしてテーブルを汚すし自分の顔にもかかる。赤ちゃんみたい。

 うどんの汁が俺の醤油皿に飛んできた。油がぷかぷか浮かぶ。
 
 うそ。やっぱ赤ちゃんより全然可愛くないわ。きったねえこいつ。

 回転寿司に行く友達は選んだ方がいい。

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み